脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 8月23日(土)、30日(土)の放送ゲストは、俳優の市村正親(いちむら・まさちか)さんです。23日(土)の放送では、“エノケン”の愛称で親しまれた昭和の“喜劇王”・榎本健一さんの波乱の人生を又吉直樹さんが新作戯曲として書き下ろし、市村正親さんが主演をつとめる新作舞台、音楽劇「エノケン」、舞台で演じることなどについて伺いました。
市村正親さん
1949年生まれ、埼玉県出身の市村さん。1973年に、劇団四季の「イエス・キリスト=スーパースター」(後に「ジーザス・クライスト=スーパースター」)でデビュー。劇団の看板スターとして活躍。以後、退団後もミュージカルや舞台、映画、ドラマなど、さまざまな作品に意欲的に挑戦。日本を代表する舞台俳優として活躍しています。
茂木:市村さんは、舞台に立ったときにその人物になりきるそうですね。
市村:そうですね。なりきらないと、やっぱりやれないです。
茂木:今回はエノケンさんになりきる、と。
市村:そうですね。自分が尊敬する方々に言われたことは、「エノケンの真似をしても意味がないよ」と。エノケンの声を真似てやったら、喉が潰れちゃいますよ。身長も僕のほうが高いし、顔も違うし。
ただ、“演劇人”としては同じ心でやろうと思うんです。「いいものを作ってお客さんを喜ばせたい」という。これが原点ですからね。それには、エノケンのモノマネをするのではなく、人間ドラマを作らなくてはいけない。というのも、又吉さんのテーマでもあるし、僕らのテーマなんです。
茂木:そこには喜劇があり、悲劇があり、もういろいろな……。
市村:人間ドラマですね。(エノケンさんの)裏話が多いんですよ。楽屋のバックステージとか。あとは、彼の家庭だとか、稽古場だとか、仲間たちが集まっている酒場だとか。そしてバックには戦争が流れていますからね。“そういう社会との関わり合いのなかで生きた演劇人たち”、ということかな。
茂木:市村さんは、まず西村晃(にしむら・こう)さんの付き人としてバックステージ、舞台裏を丹念にご覧になっていましたようね。そういう意味においては、今回エノケンさんを演じるうえで、舞台の裏の人間模様とか、やはりご自身の経験も重なるのではないでしょうか?
市村:僕自身が53年も舞台生活をしていますから、舞台裏ではいろいろなことがあるということはわかっています。高校を卒業して20歳の頃に、西村晃さんの付き人で初めて行ったのは、いずみたくさんが音楽で、藤田敏雄さんが演出で、野坂昭如さんが本を書いたというミュージカル「聖スブやん」でした。その世界というのは、まさしくエノケンの世界にも似ているしね。
茂木:なるほど。野坂さんね。じゃあ、やはり自分の演劇人生が重なりますね。
市村:重なります。西村さんみたいな人も出てくるし、当然、菊田一夫が出てくるし、古川緑波さんも出てくるし。そういう意味で言うと、僕が演劇に携わった頃に見ていたようなプロの現場というのが何となく見えて、僕自身も53年板の上で頑張ってきた人間だから、「何やってんだ!」みたいなことは言えるしね。もう散々、浅利(慶太)さんと蜷川(幸雄)さんには怒鳴られてきて、今度は僕がそれを言う番だから(笑)。
茂木:(笑)。市村さんのような大俳優に、蜷川さんとかは平気で駄目出ししたわけでしょう?
市村:駄目出しというのは、もらった者の勝ちなんですよ。駄目出しをもらえない人は、大した役者じゃないんです。
茂木:そうなんですか?
市村:そうです。駄目出しというのは、「もっと良くしよう」と演出家が頑張ってくれるわけですよ。それもタダでくれるんですよ。
茂木:「こいつは伸びる」とか「もっと良くなる」と思うから。
市村:そう。「伸びないな」「言ってもわからないな」と思う奴には、あんまり駄目出しをしないんです。
茂木:怖いですね(笑)。今回、松雪泰子さんなどベテランの方も出ていますけど、若手俳優の本田響矢(ほんだ・きょうや)さんとか、市村さんにいろいろ教わりたいと思っているんじゃないですかね。
市村:教わる・教わらないじゃなく、結局、稽古をしながらお互いに学んでいくつもりですね。「君ね、これはこうこうこうだよ」なんて言う役者というのは、大したことないんですよ。
茂木:深いですね。そうなんですか。
市村:そうです。それは演出家の仕事であって、役者が相手役とやるのは、「ちょっとやりにくいとこある?」とか、「僕はこういうふうに思うけど、君はどう思う?」みたいな、そういうやり取りなんです。お互いが良いものを作れるような会話はいいけど、「君ね、芝居とはね、演技とはこうだ」なんて、そんなことを言うのはそんなの駄目ですよ。
茂木:この音楽劇「エノケン」に対する期待がMAXです! あらためまして、音楽劇「エノケン」は10月7日より東京・シアタークリエをはじめ、その後、大阪、佐賀、愛知、埼玉の川越と、全国公演も予定されています。詳しい情報は音楽劇「エノケン」の公式Webサイトをご覧ください。
市村さん、最後に、「エノケン」をこれから観る方、楽しみにされている方に、メッセージをお願いしてよろしいでしょうか?
市村:市村正親が演じるエノケンは喜劇王の代表とされていますけども、人間、役者エノケンを市村がどう演じるかを、ぜひお楽しみに観に来てください。
次回8月30日の放送も、引き続き市村さんをお迎えしてお届けします。
市村正親さん、茂木健一郎
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<番組概要>
番組名:Dream HEART
放送エリア:TOKYO FMをはじめとするJFN全国38局ネット
放送日時:毎週土曜22:00~22:30
パーソナリティ:茂木健一郎