声優界随一のサイクリスト・野島裕史がパーソナリティをつとめ、自転車をテーマにお届けするTOKYO FMのラジオ番組「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」。6月16日(日)の放送は、5月に開催された日本最大の自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン 2024(TOJ)」について、大会組織委員会委員長の栗村修さんとともに振り返ります。今回は前半の4ステージ(大阪・堺ステージ、JPF京都ステージ、三重・いなべステージ、岐阜・美濃ステージ)について話を伺いました。
(左から)パーソナリティの野島裕史、栗村修さん
◆今年は例年以上の盛り上がりを見せたTOJ
「おはようございます、野島裕史です。本日は5月26日(日)、ただいま(午前)10時半を回るかというところでございます。この番組ではすっかりお馴染みの国際自転車ロードレース『ツアー・オブ・ジャパン』、最終・東京ステージ(の会場)にやってまいりました。いや〜暑い! 東京ステージは毎年天気に恵まれている印象があるのですが、この熱気で、さらに熱いレース展開が期待できるんじゃないでしょうか。僕自身もパレード走行の時間が差し迫ってきました。栗村さんからは“1分以上逃げを見せろ!”っていう無茶な要望がありましたが、これは絶対にムリ! 楽しんでパレード走行をしてきたいと思います!」
野島:改めまして野島裕史です。冒頭にお聞きいただいたのは、5月26日(日)におこなわれた日本最大の国際自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン2024」の東京ステージで、僕がパレード走行に参加する前のコメントです。もう何回も出させていただいていますが、やはり緊張しますね。一流選手の前を走るというのは。
ただ、緊張と同時に楽しみや高揚感も一緒に感じていました。そして、今年の「ツアー・オブ・ジャパン」の会場は、ここ最近では一番の盛り上がりを見せていたように感じました。その辺りも含めて、今回はたくさんお話を伺っていきたいと思います。では、この方にご登場いただきましょう。自己紹介をお願いします!
栗村:TOJが日本を元気にする! 元気ですか! 栗村修でございます。
野島:ありがとうございます。決まりましたね(笑)。
栗村:今考えたので、ちょっとキレが悪かったんですけどね(苦笑)。でも、野島さんが今お話された「今までで一番盛り上がった、元気な感じ」。これは他の方にも言われたんですよ。まだ大会が終わったばかりですが、僕もそんな気がしていたんです。まさに“元気ですか!”という大会だったんですよね。
野島:そうですよね。人々の熱気とかもそうですし、お店や選手も含めて盛り上がりが印象に残った大会でした。ここで改めてご紹介させていただきます。一般財団法人「日本自転車普及協会」の理事であり、UCI公認・日本最大の国際自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」の組織委員会委員長をつとめていらっしゃいます栗村修さんです。「ツアー・オブ・ジャパン2024」、本当にお疲れ様でした!
栗村:お疲れ様でした。野島さん、そしてみなさん本当にありがとうございました!
野島:こちらこそ毎年ありがとうございます!……なんですが、実はこの収録は東京ステージの終了からわずか2日後です。
栗村:気持ち的に、終わったのはさっきです。
野島:まだまだお忙しいなか、お越しいただいてありがとうございます。
栗村:心の整理をしにしゃべりにきました(笑)。
◆野島が参加したパレード走行裏話、実は走行前に…
野島:今年の東京ステージでは、栗村さんが会場をゆったりと歩き回ったり、ファンの方々と交流を持たれている印象を受けましたが。
栗村:そのことも言われたんですよね、結構笑顔だったと。自覚はなくてそれなりに疲れていたのですが、そう映りましたか。
野島:映りましたね。ステージも例年以上に盛り上がっているなと。
栗村:(盛り上がった理由として)ひとつあるのは、本当の意味でのアフターコロナ、その最初の大会だったのかなと。昨年はコロナが5類になった直後だったのでビクビク感があったんですよね。そういう意味でも、いろいろなものがポジティブに重なっていたのかもしれないですね。
野島:そうですね。ちなみに、パレード走行の私の走りはご覧になっていただけましたか?
栗村:対向車線側でチラチラと。ちょうど折り返しのコースだったので見えました。例年になく大集団を引き離した走りが。
野島:今年は事前に“(後続と)1分は引き離すように!”とおっしゃっていましたが。
栗村:自転車ロードレースの1分差というのはすごく意味があって、1分差が開くとチームカーが選手・グループの後ろにつくんですよ。だから1分というのがひとつの目安なんです。
野島:(後続と1分差をつけるのは)「そんな無茶な!」と思ったのですが、今年はパレードの方式が変わったんですね。
栗村:変わったというか、野島さんが速かったんですよ。
野島:違いますよ! 走る前にパレード走行のゲストのみなさんは1分先にスタートしてくださいと言われました。
栗村:実はですね、野島さんは健脚なので大丈夫だと思うんですけど、毎年(パレード走行するゲストのうちの)何名かがプロトン(集団)に飲み込まれちゃうんですよ。昨年はプロトンに飲み込まれて、もみくちゃになった方もいらっしゃったみたいで。
野島:実は僕も日比谷スタートだった頃に一度飲み込まれたことがあるんですよ。初めての経験だったんですけど、(他の選手の)肩とかも当たるし「こんなに接近するんだ!」と思いましたね。もう怖くて怖くて。「ここで僕が落車して、選手のみなさんに迷惑をかけたらどうしよう……」なんて思いました。
栗村:ですよね。野島さんもいわゆる密集したプロトンに入ったことはない? 初プロトンだったんですかね。
野島:もちろん。でも、あれは異次元の出来事でしたね、びっくりしました。
栗村:我々はプロトンに飲み込まれても「むしろ楽しいんじゃないかな?」ってたかを括っていたのですが、審判団も怖かったみたいで。それで1分差でスタートということになりました。
野島:(1分差があると)走っていて安心感がありました。もし何かあっても(プロトンに)飲み込まれることはないんだなと、ありがたいご配慮をいただいたと感じました。あとは、折り返したときに選手たちを走りながらじっくりと見ることができたのも楽しかったですね。
◆京都ステージで起きた“おじさん事件”とは?
野島:改めまして、5月19日から26日の8日間、8ステージでおこなわれた『ツアー・オブ・ジャパン2024』。ここからは前半ステージ、堺、京都、いなべ、美濃の4ステージで栗村さんが最も印象に残っているシーンや出来事を発表していただきたいと思います。まずひとつ目をお願いします!
栗村:「雨のなかで若者が輝く堺ステージ」です。
野島:確かに雨のなかでのスタートでしたね。詳しく教えていただけますか。
栗村:今年の「ツアー・オブ・ジャパン」は“TOJニュージェネレーション”という新しいキャッチフレーズで中期計画が始まった1年目なんですけど、第1ステージの前に顔見せ的におこなわれたクリテリウムレース「堺国際クリテリウム」で、地元の「シマノレーシング」の若者2人が飛び出してワンツーフィニッシュを飾りました。
この2人は大会に縁があって、優勝した山田拓海選手は第5ステージ・信州飯田ステージがある飯田市出身。そして、2位の寺田吉騎選手はシマノレーシングの地元・堺で活動しており、彼は大会前の記者発表で今大会注目の選手、4名のうちの1人と紹介されていたんですね。
我々はもちろん知っているんですけど、まだまだネームバリューがない選手だったのですが、記者発表に呼ばれたことで力に変え、自転車の街・堺で輝いてくれました。この堺ステージは、イギリスの若手マックス・ウォーカー選手がぶっちぎりで優勝。雨のなかで若い力が躍動した、そんなレースでした。
野島:今大会の盛り上がり、若手選手の活躍が予感できるファーストステージでした! まさにニュージェネレーションで始まったということですね。ありがとうございます。それでは2つ目、お願いします!
栗村:「京都ステージの表彰台で起きた、おじさん事件!」です。
野島:これはなんでしょう? 詳しく教えてください!
栗村:第2ステージは京都、けいはんな地区でおこなわれ、フィニッシュ地点も非常に美しい景観でした。優勝したのはJCL TEAM UKYOのマッテオ・マルチェッリというイタリア人選手でした。
この日のステージレースには4枚の特別賞ジャージがあって、一番名誉があるのは(総合時間トップの)緑色なんですが、23歳以下で緑色に値する総合時間トップの選手は白いジャージが着られるんですね。
で、今回その白いジャージを獲得したのは先ほど話した寺田吉騎選手だったんですけど、突如「新人賞のプレゼンターをお願いします」と言われて。僕は今まで一度も経験したことがないんですけど(プレゼンターを)やることになったんです。
野島:ちょっと意外なんですが、プレゼンターは初だったんですか?
栗村:初ですね。委員長という役職は本来そういうことをやるのですが、僕は現場を駆けずり回るタイプの委員長なので。それで、寺田選手と何かやるということになって、普通はジャージを選手に着させるのが僕の役割なんですが、とりあえず僕が1回着てみたんです。
野島:おじさんが新人賞ジャージを着ちゃったんですか(笑)。
栗村:これが本当にスベりました(苦笑)。寺田選手のせいにするつもりはないんですけど、裏では盛り上がっていたんですよ。「栗村さん、それ面白いですね!」って。僕は(寺田選手が)何かツッコんでくれると思っていたんです。「違う違う! 俺、俺!」とか。でも、(ツッコまれることもなく)僕が普通にジャージを着る感じになっちゃって、お客さんにもボケだということが伝わらず……自転車レースでいうと大落車でした(泣)。
野島:それは大変でしたね。でも、どうやって回収したんですか?
栗村:いや、回収のしようがなくて転びっぱなし……もう事件でしたね。ただ、京都ステージの公式X(旧Twitter)には各賞の写真が全部ポストされていて、それぞれ自治体の首長さんとかが選手にジャージを渡しているんですけど、新人賞だけは僕がジャージを着ている写真が採用されていたので、それを見てちょっと救われました(笑)。
野島:記者の方だけはそのボケがわかっていたんですかね(笑)。
栗村:分かっていたのか、本当に僕が(新人賞を取ったと思ったのか)……。
◆今年のTOJは若い力が躍動!歴史上初の出来事も!
野島:続いて3つ目をお願いします。
栗村:“普段は総合争いが始まらない、いなべステージで大きな戦いが生まれる!”です。「ツアー・オブ・ジャパン」は8日間の総合争いで、第5ステージの信州飯田ステージから(熾烈な競争が)勃発することが多いんですけど、今年は僕がイメージしていた若い力だったり、前に前に積極的にいく貪欲に走るレースがこの第3ステージで早くも見られたんです。
優勝したのはJCL TEAM UKYOのジョバンニ・カルボーニ選手で、いわゆる逃げ切り、集団が追いきれなくて逃げ切ったというよりも、強い選手が引きちぎった形で先頭集団を作り、そして逃げ切るというレースになりました。なので、今まで一度も見たことがないようないなべステージでした。
レース全体も“イナベルグ”という急坂区間があるんですけど、ファンのみなさんにも浸透してきましたし、そしてシェロンという集団が斜めになる形状が日本レースではあまりできないんですけど、それがここでできたりとかして本当に見応えのあるレースでした。
野島:いなべステージの新たな一面が見られたと。
栗村:そうですね。自転車レースというのは、コースをキツくするとレースもキツくなると思いがちなんですけど、レースを作るのは選手自身なんです。
だから、一見イージーなコースでも選手が激しく走れば見応えのあるレースになるし、キツいコースでも選手が守りのレースをするとまったりしたレースになるんですよね。今回は本当に全車激しいレースになりました。
野島:これも自転車ロードレースならではの展開だったということですね。それでは最後、4つ目をお願いします。
栗村:“第4ステージ、美濃ステージで繰り広げられた、親子のドラマ!”です。美濃ステージもいなべステージと一緒で逃げ切りはないんですよ。そんななか、歴史上初めて前半から飛び出して長く逃げた選手の逃げ切り勝利が起きたんです。
野島:なるほど!
栗村:優勝したのはオーストラリアのジョシュア・ラドマン選手で、実は今回は彼のお父さんも帯同して来日していたんですね。で、このジョシュア選手、19歳なんですけど、今回UCIレース初出場初勝利だったんです。
京都ステージでは彼のチームメイトのひとりが残念ながらリタイアしてしまったんですけど、そのチームメイトがフィニッシュ地点で彼を待っていて、さらにはお父さんもいて(優勝した瞬間に)お父さんが号泣。
その模様がXでバズって、海外の方からは「僕は彼ら親子のことは知らないけど、同じ父親として最高の動画だ!」みたいなコメントがあったんです。TOJのニュージェネレーションの活躍がそうした形で世界に発信されたり、何よりオーストラリアの親子が泣いてくれたっていうのが僕のなかで本当に嬉しかったですね。
野島:今回はまさにニュージェネレーション感満載といった感じですね。
栗村:特にこの美濃ステージは、江戸時代の情緒を残した街をスタートして、若者が活躍するっていう、この新旧な感じも……なんかもう楽しくなってきちゃった!
野島:盛り上がってきたところですが、後半の4ステージは次週に持ち越したいと思います。栗村さん、毎度のことになりますが来週もよろしくお願いします!
栗村:いいとも!
6月23日(日)の「サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン」は、5月に開催された日本最大の自転車ロードレース「ツアー・オブ・ジャパン」特集をお届け。 大会組織委員会委員長の栗村修さんとともに「後半4ステージ」を振り返ります。どうぞお楽しみに。
<番組概要>
番組名:サイクリスト・ステーション ツアー・オブ・ジャパン
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国24局ネット
放送日時:TOKYO FMは毎週日曜 朝5:00~5:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトおよびアプリ「AuDee(オーディー)」でご確認ください)
パーソナリティ:野島裕史