モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。6月26日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「岸田内閣で3回目の『骨太の方針』盛り込まれた政策は?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
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◆岸田内閣3回目の「骨太の方針」閣議決定
政府は6月21日(金)、今年の経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」を閣議決定しました。「骨太の方針」の策定は、岸田内閣では3回目です。
吉田:塚越さん、まずは「骨太の方針」とは何なのか改めて教えてください。
塚越:政権の重要課題や翌年度の予算編成の方向性を示す方針で、正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」といいます。各省庁の利害を超えて官邸主導で改革を進めるもので、総理が議長を務める「経済財政諮問会議」で、毎年6月頃に策定します。
吉田:そもそも、どういったことがきっかけで作るようになったのですか?
塚越:もともと、予算案づくりは各省庁や、業界の利益を代表するいわゆる「族議員」と呼ばれる国会議員の力が強かったんです。また利害調整は財務省(旧大蔵省)がおこなっていたので、歴代の総理大臣は思い通りの政策ができていなかったという背景があります。
そのため、総理官邸主導の予算編成を目指して森喜朗政権の2001年、中央省庁再編の目玉として「経済財政諮問会議」が発足し、この「骨太の方針」をつくって予算案の全体像を決めるやり方に変えました。「官邸主導」という言葉はよく聞かれますが、2001年にもこうした動きがあったわけですね。
そしてもう1つ、「骨太の方針」という名称は、なぜ「骨太」という表現か気になりますよね? もともと2001年の森喜朗政権のときに財務大臣だった宮澤喜一氏が、「骨太」という言葉を使ったことから「骨太の方針」と呼ばれるようになりました。また、この森喜朗政権は2001年4月までで、その次の小泉政権になってから経済財政諮問会議が活発に動き、初めて骨太の方針が策定されました。郵政民営化など、いわゆる「官から民へ」というのが取り上げられたと思います。
民主党政権に変わった際は中断されましたが、政権交代で復活。今年で21回目の策定になります。ただ昨今は、各省が次年度に盛り込みたい予算の「お墨付き」を得る場になってしまっているとも聞かれます。要するに、最近はそんなに官邸主導というわけでもないのかなということですね。
◆デフレからの脱却目指し賃上げを支援
ユージ:政府が6月21日(金)に閣議決定した「骨太の方針」には、どういった政策が盛り込まれましたか?
塚越:さまざまな内容があるので代表的なところを紹介します。まず日本経済は「デフレから完全に脱却する千載一遇のチャンスを迎えている」とした上で、賃上げが33年ぶりの高い水準となっているので、これを定着させて新たな成長型のステージに移行させていくとしています。
実際に賃上げを持続的におこなう具体的な例としては、業務を効率化して生産性を高めようとする企業へ支援を進めることです。また、男女間の賃金格差の解消に向けた環境整備や価格転化対策などに取り組むということもいっています。さらに労働市場改革も推進して、成長分野への人材移動を促すため、仕事の質や成果を重視する「ジョブ型」の人事方針をこの夏に公表して、企業に導入を促すとともに、リスキリング=学び直しへのさらなる支援をおこなうということです。大学と産業界が連携して、最先端の知識などを身に付けるプログラムを創設し、来年度中におよそ3,000人の参加を目指すことも盛り込んでいます。
他には、一般ドライバーによる「ライドシェア」は、安全を前提に「全国で広く利用可能にする」としていますが、全面解禁の時期は未定で要するに「先送り」になっています。他にもいろいろとありますが、なんというか目新しさはありませんよね。これまで言われてきたことを盛り込んでいる感じですね。
◆半導体企業への投資も
ユージ:政策のなかで、塚越さんが気になったのはどういったものですか?
塚越:私が気になるのは「半導体」への投資です。今回の方針には支援のために「必要な法制上の措置を検討する」、つまり法律をつくって援助したいと書いています。半導体は日本が80年代までトップを走っていた領域ですが、今は正直に言えば「風前の灯」状態でなかなか厳しいです。
政府の支援で設立した半導体企業の「Rapidus(ラピダス)」を中心に支援するため、今後どこまでお金をつぎ込むのか。アメリカをはじめ、各国も対GDP費では日本と同じくらい予算をかけているので、悪いことではないかなと思います。
ただ、ラピダスが半導体を量産するには5兆円必要といわれており、経産省は現段階で最大9,200億円の支援を決定していますが、(民間金融機関の融資実績がないラピダスは資金調達が課題となっており)財源確保をどうするのかが課題です。
法律を作っていろいろとやるにしても、勝算はどれだけあるのか、お金をかけてもいいけれども、同時に検証するのも大事です。それなりに大きい決定になるのかなと思います。
◆今年は「目玉政策」がない?
ユージ:今回の「骨太の方針」について、塚越さんはどうご覧になりましたか?
塚越:2022年には「防衛力強化」、2023年は「少子化対策」といった目玉政策がありましたが、今年のものにはいわゆる目玉政策がないと思います。いろいろなものを詰め込みすぎて、骨太というよりは“小骨”が多いのでは? という報道も一部あります。
岸田内閣3回目となった「骨太の方針」ですが、結局、岸田首相は「何をしたいのか」がよく分からないところがあります。(これまでも打ち出してきた)新しい資本主義についてもいろいろ書いてありますが、あまりパッとしなくて、岸田首相がどうしたいのかが見えないのが正直なところです。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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6月26日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年7月4日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世