作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。
10月26日(日)の放送は「村上RADIO~アナログ・レコードで、ジャズのちょっとこのあたりを…~」をオンエア。今回は、村上DJの自宅レコード棚から味わい深いアナログ・レコードを紹介する貴重な特集。普段、あまり注目されることのないジャズの隠れた名曲を、村上DJのセレクトと絶妙な解説でお届けしました。
この記事では、中盤2曲について語ったパートを紹介します。
「村上RADIO」
◆Freddie McCoy「A Whiter Shade Of Pale」
フレディ・マッコイは1960年代半ばに、いわゆる「ソウル・ジャズ」で売り出したヴァイブラフォン奏者でした。1970年頃まではコンスタントにレコードを出していたんですけど、それ以降はぱったりと消息を絶っています。どうしたんでしょうね? 僕は意外にというか、この人がけっこう好きで、プレスティッジ・レコードから出ているレコードは全部オリジナル盤で揃えています。そんなこと、あまり自慢にもならないんですけどね……。その中から今日はプロコル・ハルムがヒットさせた「青い影(A Whiter Shade Of Pale)」を聴いてください。
このトラックの演奏メンバーには、名前を聞いたこともないトランペットが2人入っているんですが、この人たちがかなり下手というか、素人っぽいというか、どこでこんな人たちを見つけてきたんだろうと首をひねっちゃうんだけど、でも逆にその稚拙(ちせつ)さが、いかにもこの当時の即席のソウル・ジャズという雰囲気を出していて、不思議に好感が持てます。ピアノはジョーン・ブラッキーンという本格的な女性ジャズ・ピアニストなんですが。
◆Chet Baker「Funk In Deep Freeze」
久しぶりにチェト・ベイカーを聴いてください。「Funk In Deep Freeze」ばっちり冷凍されたファンク。いったいどういうファンクなんでしょうね。よくわかりません。テナーサックス奏者ハンク・モブレーが1957年に作曲して吹き込んだクールでファンキーなジャズ・チューンですが、これをチェト・ベイカーが1974年に取り上げて演奏しています。このレコードが出たときには、「え、チェト・ベイカーがこの曲やるの?」と、選曲の意外性に驚かされたものです。プロデュースはクリード・テイラー、さすがに目配りのきいたアルバム作りをしています。チェト・ベイカーも麻薬びたりのいっときの低迷期から持ち直して、しっかりしたジャズを聴かせてくれます。
メンバーはチェト・ベイカーのトランペットに加えて、ヒューバート・ロウズのフルート、ボブ・ジェームズのエレクトリック・ピアノ、ロン・カーターのベース、スティーヴ・ガッドのドラムズ。初めて聴いたとき、このエッジのきいたドラム、ジャック・ディジョネットかなあと思ったら、実はスティーヴ・ガッドでした。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~アナログ・レコードで、ジャズのちょっとこのあたりを…~
放送日時:10月26日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/