モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。8月6日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「小中学生の学力が大幅低下、子どもの良い成績にこだわらない保護者も増加、その背景は?」。情報社会学が専門の学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんに解説していただきました。
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◆2021年以降、子どもの学力が低下
子どもの学力の変化をみる、2024年度の「経年変化分析調査」の結果が7月31日に公表されました。前回の2021年度より全ての教科で成績が下がっています。
吉田:塚越さん、この調査結果について詳しく教えてください。
塚越:こちらは文部科学省が行った調査です。2013年度、2016年度、2021年度に続いて4回目の調査で、いろいろ比較ができるということです。今回の調査結果は去年おこなわれたもので、国立・公立・私立の小中学校計1,350校から、およそ3万人の小学6年生とおよそ7万人の中学3年生が対象になっています。教科としては、小6が国語と算数、中3は国語、数学、英語です。
この調査では、一部(前回と)同じ(問題を)出題することによって、回答パターンの分析などから3回分が比較できるものになっています。
その結果は、“500”を基準としたスコア表示で中3の数学が“503.0”スコアだったんですけど、それ以外全て500を下回っていることがまず分かりました。ここで重要なのは、中3の数学も含めて全てのスコアが2021年度に比べて下がっていて、特に小6の算数は20.9ポイント減。中3の英語は22.9ポイント減ということです。2021年度の調査では下がった教科はなかったので、簡単にいうと2021年以降、子どもの成績が下がっていることが明らかになりました。
吉田:今回の学力低下にはどのような背景があるのでしょう?
塚越:いろいろな要因が考えられますが、文科省は“新型コロナウイルス感染症”の影響に着目しています。調査対象の小6と中3の生徒はコロナ禍で学んでいた世代です。コロナ禍では基礎的な内容を学ぶ学年で対面授業が減ったり、臨時休校した場合に授業時数を減らした学校もあるので、(それらが)学習面に影響した可能性が指摘されています。また、特に点数が下がった英語については、「感染対策でしゃべらない方針があったので学習面に影響が出たのではないか」と推測されています。
もうひとつは、“家計と学力の関係”も指摘されています。今回の調査では「家にある本の冊数」といったことなども聞いていて、これは学習環境や親の関心を示す要素として捉えるということです。現代では本だけを対象にするにはやや古い感じもするんですけど、家にある本の数と学力スコアの関連を分析すると、中3の英語を除いた4教科では本の数が少ない家の児童・生徒ほどスコアの低下幅が大きかったということです。これはあくまでも相関関係から導き出されたものですが、文化省の担当者はこれを重く受け止めているということです。
さらに加えると、保護者にも調査をしていて、子どもがゲームやスマホを利用する時間が多いほど勉強時間が減って、スコアが低下する傾向が、こちらもあくまで相関関係ですが分かったということです。
課題をまとめると、大きく分けて"勉強時間の減少”と“各家庭の経済状況”、そして“スマホなどのデジタル環境の影響”が挙げられます。専門家からは「デジタル環境の影響がかなり大きいのではないか」という声もあります。
◆子どもの成績にこだわらない親も増加
ユージ:今回の調査では、“子どもの良い成績にこだわらない”保護者が増加していることも分かったんですよね。これはどんな背景があるんですか?
塚越:保護者への調査では「子どもが学校生活を楽しんでいれば、良い成績にはこだわらない」という質問もありました。すると「当てはまる」と「どちらかといえば当てはまる」の合計が小6でおよそ6割。中3でも5割を超えていまして、最初におこなった調査と比べて5~6ポイント増えていました。これを文科省の担当者は「不登校の子どもが増えたことで成績よりも日々を楽しくすごすことに重点を置いているのではないか?」「コロナ禍で経済的に苦しい世帯が増え、子どもの成績にまで気にかける余裕がないのでは?」という可能性を挙げています。
これは読み解くのが難しいところですが、価値観が多様化して学歴以外のコースを尊重するポジティブな側面も読めます。けれども、「やっぱり余裕がないから成績にまで手がかけられない」というネガティブな側面もあるのかなと思いますし、実際に「良い成績にこだわらない」と回答した保護者の子どものほうが学校外の勉強時間が短いとも言われています。専門家によると、親子の会話が多い家庭ではスマホの使いすぎを防げて、勉強の習慣もつきやすいと指摘しています。
が、経済的な余裕がないと、そもそも家庭でのコミュニケーションができないですよね。だからスマホが問題だと言われているんですけれども、「(過度なスマホの使用は)経済的に親がずっと働かなければならないという家庭環境が関係している」となると、経済の問題がかなり大きいのではないかと言えますね。
ユージ::小中学生の学力が大幅に低下したこと、そして、“子どもの良い成績にこだわらない”保護者が増加したこと、塚越さんはどうご覧になりましたか?
塚越:今お話ししたように結構複雑ですよね……。やっぱり経済的な状況が大きいのかなと思うんですよ。なので、家庭への社会的な手当てというのは重要かなと思います。良い点で言えば、いろいろな選択肢があるのでポジティブに自由に選んでいけるということもあるんですけど、社会全体としては子どもの学力への経済支援は大事なのではないかと思います。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世