笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。8月26日(土)の放送は、株式会社レグミン 代表取締役の成勢卓裕(なるせ・たかひろ)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)成勢卓裕さん、笹川友里
神奈川県出身の成勢さんは、慶應義塾大学理工学部卒業、機械工学科専攻。大学を卒業後、日本アイ・ビー・エム株式会社にて主に中堅製造業のコンサルティング事業に従事し、会計やサプライチェーンなどの企業の基幹システム開発・設計を担当。そして、2018年5月に株式会社レグミンを創業しました。
◆農業の領域で起業したきっかけ
成勢さんは、同社を創業するまで農業との接点はまったくなかったそうですが、農業の領域で起業しようと考えた最初のきっかけは、前職のときに海外出張でオランダに行ったこと。「オランダは九州ぐらいの面積しかないのですが、(当時の)食料自給率が約400%もあることを知り、日本のおいしい農産物をグローバルに届けるために、もっとできることがあるのではないかと思った」と語ります。
その当時も農業の人手不足が叫ばれており、「あまり深いことを考えずに“人が足りていないのであれば、機械(が自動)でできることを機械にやらせたらいいのではないか”という思いを持ったのが最初のきっかけです」と振り返ります。
ここで笹川が「成勢さんが思う“日本の農業の強み”は何ですか?」と質問を投げかけると、成勢さんは“多様性”と“品質”と回答。「例えば、“いちご”だけでもいろんな品種があったり、その品種それぞれに特徴があり、海外のスーパーと比べても、日本のスーパーに並んでいる野菜の品質(見た目のきれいさ、味のおいしさ)が高くて、すごいと感じます」と声を大にします。
◆実は相性が良い「農業×AI」
“人とロボットが協業して農業を作る”をコンセプトに掲げるレグミン。例えば、同社がオフィスを構える埼玉県深谷市といえば、深谷ねぎが有名ですが、ねぎは栽培期間が約半年と長いことから、作物の病気を予防するために農薬を散布する回数が多い作物です。そこで、農作業でかかる負荷の軽減や課題解決、業務を効率化するべく、農薬を自動で散布するロボットを開発しました。
また現在、人を雇うのと変わらないコストで導入できるようなロボット開発を目指しており、これが実現すれば、人手不足、農業に携わる人の高齢化、若い人材の確保が難しい現状においても、「今まで通り継続して農作業ができます」と力を込めます。
ただし、農家の熟練した作業技術を機械に置き換えるには結構難しいポイントもあると言い、「農作業をされている方って、例えば“皮をむきながら品質をチェックして、ダメなものがあれば取り除く”といった、一度に複数の作業をおこなっていることがあるため、機械化するために“どういう作業をどの順番でやるか”を研究して、それを細分化したときに“どの作業が機械に置き換えられるか”という仕分けが重要なのかなと思っています」と分析。
さらには、機械を導入しても「(人が作業するよりも)スピードが速くなかったり、作業スペースを多くとってしまっては意味がない。(機械化するために)その2点を解決しなければならないので、そこが難しい」と言及。
また“農業とAI(人工知能)”について伺うと、成勢さんは「AIが台頭してきた頃から“農業とAIが(相性が)良いのではないか”と言われてきて、例えば、害虫の発生を早めに検知したり、作物を仕分ける段階で活用できたり、研究課題に少しずつ成果が出てきている状況」と解説します。
最後に、成勢さんの考える“少し先の未来の農業の形”について尋ねると、「機械にまかせられることはどんどん機械にまかせて、農業に携わる方は『どうやったら(農作物が)おいしくなるのか?』『どういったブランディングをしていけば良いか?』『こんな加工品で売ってみてはどうか?』といったマーケティングにリソースを使ってほしい、というのが我々の思いの1つで、こだわっているところ」と力を込めます。
そして、「“機械化と多様性”は二律背反する部分がある。というのも、決まった品種で決まった作り方でやったほうが機械化しやすいが、野菜や食は(品種や味など)多様性がすごく大事な領域なので、我々が描くビジョンとして“できるだけ作業を機械にまかせて、多様性も維持していくこと”を目指して挑戦していきたい」と成勢さん。
そのためにも、レグミンの立ち上げから5年が経過した今、「まずは深谷でしっかり実績を残して、そこで培ったノウハウをどんどん日本全国、グローバルに広げていくことが次のステップだと思っています」と語っていました。
次回9月2日(土)の放送は、河野太郎(こうの・たろう)デジタル大臣をゲストに迎えてお届けします。“デジタル”という観点における日本の現状など、貴重な話が聴けるかも!?
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8月26日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2023年9月3日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里