TOKYO FMグループの「ミュージックバード」で放送のラジオ番組「デジタル建設ジャーナル」。建設業界のデジタル化を進めるクラフトバンク株式会社が、全国各地で活躍し、地域を支える建設業の方をゲストにお迎えするインタビュー番組です。一般になかなか伝わりにくい建設業界の物語を全国のリスナーに広めています。
パーソナリティの中辻景子と田久保彰太が所属するクラフトバンク株式会社では、工事会社向け経営管理システム「クラフトバンクオフィス」を開発し、工事会社の生産性向上に取り組んでいます。また、工事会社の売上拡大を支援する工事マッチングサイトや、職人のための交流の場「職人酒場」の運営もおこなっています。
今回の放送では、広島県広島市の福井建設株式会社・代表取締役社長の福井正人さんがゲストに登場。デジタル化への取り組みや、建設業の魅力について語ってくれました。
(左から)パーソナリティの田久保彰太、福井建設株式会社の福井正人さん、中辻景子
◆中国地方で躯体工事を請け負う福井建設にインタビュー
中辻:まずは福井建設株式会社さんについて、創業以来どんなことをやっている会社なのか教えていただけますか?
福井:昭和3年に祖父がとび・土工の会社として創業いたしました。現在はいわゆる躯体(くたい)工事(建築物の主要構造部である骨組みを作る工事)をやっています。
社員のなかにはとびの子もいれば型枠を組む子もいますし、鉄筋の子、コンクリートを打つ子もいます。職人を直接社員として抱えていますので、躯体一式を受けられる会社です。
田久保:社員は何人ぐらいいらっしゃるんですか?
福井:70人ぐらいいます。
田久保:そのうち職人さんは何人ほどですか?
福井:事務系の管理部に7名ほどいますが、それ以外は現場担当の人間ですね。
田久保:5人とか10人ぐらいいらっしゃる会社は耳にしますけども、そんなに大規模なんですね!
中辻:自社で躯体一式を受けるのはやっぱり珍しいことなんですか?
福井:珍しいと思います。例えば、とび・土工の会社が躯体一式を受けた場合は、型枠や鉄筋の会社に発注するんですね。当然うちも協力会社の方はたくさんいらっしゃいますが、社内で一通りできる人材はそろっています。
◆経営方針を大きく変えたオイルショック
田久保:創業されて100年近く経たれていると思うのですが、どのタイミングで大きくなられたのでしょうか?
福井:僕の父の代ですね。自社で企業内訓練校を始めて、若い子を入れ始めていた時期があったんですけど、ちょうどオイルショックがあったんですよ。
それで仕事がなくなって、せっかく入った子を辞めさせないといけないことになって。そんなことをするぐらいなら……ということで海外工事を始めたんです。
田久保:へええ!
福井:会社の人間が外国人を管理するために直接海外に出向きました。当時は中近東が多くて、その後はアフリカと東南アジアに。その頃の社員はほとんど全員海外経験者でしたね。
そのタイミングで社員が続々と増えていって、僕が継いだときには250人ぐらいいました。社員が150人、直接雇用の職人が100人、職人のうち30人ぐらいが外国人でしたね。
田久保:そうなんですね。いわゆる技能実習生の制度が始まる前ですか?
福井:技能実習生がまだ1年しかいられない頃からやっていました。
田久保:そこから今も70名もいらっしゃるなんてすごいことですね。
◆時代を先取りしてIT化を推進
田久保:福井建設さんのDXやデジタル化への取り組みはどういったものでしょうか?
福井:うちは専門工事業のなかでも、比較的人数も職種も多いんです。僕が会社を継いだのは1995年なんですけど、たしか1年か2年目の頃だったと思います。
当時は広島に本社がありながら広島支店もありまして、広島、山口、岡山、山陰の全社に社内LANをつなぎました。
田久保:ええ~!
福井:当時の専門工事業から見ると、そういうことを他でやっている会社は知っている限り1社か2社ぐらいしかなかったです。パソコンの導入は早かったですね。
田久保:なぜ導入されようと思ったんですか?
福井:職種も多岐にわたって工事量も相当あったので、日々の現場の管理やお金の流れを正確に把握したかったからです。
田久保:拠点をLANでつないで、毎日の収支を見えるようにする取り組みは、どこから着想を得たのですか?
福井:うちの社内の管理系の人間から提案がありました。
田久保:まさに僕たちがやっていることがそういうことでして。使っているものはクラウドとかスマホですけども、複数の拠点の進捗とか数字を見えるようにしているんですね。まさか30年前にやられているなんて思いませんでした(笑)。
中辻:時代を先取りしていますよね。
福井:そうですね。うちの社員はパソコンを持つのが当たり前になっているので、IT化とかいろんなことに抵抗はないと思います。
◆現場の声を大手ゼネコンに届ける
田久保:僕たちクラフトバンクと福井建設株式会社さんが初めてお会いしたのは、CCA(一般社団法人 地域建設業新未来研究会)でした。CCAに入られているのは、地域をまたいで先進的な取り組みをしているいろんな会社さんと意見交換するのが目的でしょうか?
福井:明確に2つ理由があります。自分たちはCCAのなかでも異色なんですよ。我々以外にも何社かいるんですけど、うちほど専門工事業を表に出してやっているところはないんですよね。
小さい会社もあれば、すごく大きいゼネコンさんもいらっしゃいますから、どういった形でやっておられるのか、勉強のために行っているのがまず1つです。
もう1つは、うちがやっている建設系職業訓練校「広島建設アカデミー」の説明に行っています。
田久保:そうなんですね!
福井:「職人は育てるべきですし、それは地域でやるべきだと思います」という説明をしたんですけども、それ以降みなさんと気が合ったというか。
僕は今、建専連(建設産業専門団体中国地区連合会)とかとびの団体の役員をさせてもらっているんですけども、そこでもいろんな話をしながら、「専門工事業者は今こんなことを考えているんですよ」と伝えています。
「職人レベルではこんなことを考えていて、こうしてほしいんです」というのを、各地域の特色あるトップクラスのゼネコンさんに少しでも理解してほしい、という思いからCCAに入っているのもあります。
田久保:橋渡しをされているんですね。
◆街と人の笑顔を作る仕事が建設業
中辻:福井さんが思う建設業の魅力はどんなところでしょうか?
福井:我々の商売って、どの国にも間違いなくあるんですよね。街をつくり、住むところをつくり、そこに人々が生活する。それだけはなく、たとえば街のシンボルを作れば待ち合わせ場所になったりしますし、そこには人々の笑顔が生まれるじゃないですか。
街のかたちや人の笑顔をつくれる商売ですし、それに携わった人間にとって誇りになるわけです。我々の仕事というのは、たぶんつくった人間の名前は残らないんですよ。だけど、つくった人間にとっては小さな誇りとなり、自分の胸にどんどん刻まれていくんです。
田久保:なるほど。
福井:街のシンボルとか、後世に残るものに携われるというのは非常に嬉しいことです。実際に関わることができた我が社の社員たちにとっても大きな自信になっていますし、「あれは自分たちが作った」と言えるのは、我々の業界のいいところだと思いますね。
中辻:当たり前にある建物にはそれを作ってくれた人がいるって改めて感じますね。
◆若い人材が入りやすい業界を目指す
中辻:建設業全体でもいいんですけど、福井さんが今後取り組んでいきたいことは何でしょうか?
福井:建専連の会長が国会で言われたのかな? 「入ってほしい業界から入りたい業界にしましょう」と。僕はまさしくそうだなと思っていて、若い子が入りたい業界にしていかないといけないんですよね。今後、我々の業界がなくなる危機感はあるんですよ。原点に返るじゃないですけども、僕は日本の国力の一番の礎は製造業だと思っているんです。日本で育った方が作るもの、という表現が正しいですかね。
今、若い子は製造業にいかないし、我々の業界にもなかなか来てくれないんですけど、国の強さは実はそこだと思うんです。個人でいくら儲けるかっていう話ではなく、国力を考えると製造業を疎かにしてはいけないんじゃないかと思うんです。
田久保:そうですね。
福井:親からしてみたら、子には苦しい思いをしてほしくないですよね。でもね、しんどい思いをして身に着けた技術というのはなくならないんですよ。同時に、若い子たちにとって入りたい業界にするために何をすべきか、みんなが模索しながら業界を変えていかないといけないんじゃないかなと思います。
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音声版「デジタル建設ジャーナル」
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<番組概要>
番組名:デジタル建設ジャーナル
放送日時:毎週日曜日 15:00-15:55
パーソナリティ:中辻景子・八木橋育子・田久保彰太