TOKYO FMの音声サービスAuDee(オーディ)で配信中の、放送作家兼ラジオパーソナリティの植竹公和が、自身のレーダーにかかった文化人を招いて送るスペシャルトーク番組「歌う放送作家 植竹公和のアカシック・ラジオ」。7月14日(金)のお客様は、爆笑問題の太田光さん。今年3月に発表した小説「笑って人類!」(幻冬舎)について語ってくれました。
(左から)太田光さん、パーソナリティの植竹公和
◆主人公のモデルは太田自身?
植竹:(主人公の)富士見総理って、ちょっと太田君と被るんだけど、違いますか?
太田:全ての登場人物が多分、自分とどこかしら被っていると思うんです。映画でやろうとしたときには、この富士見総理(の配役)というのは決めていなくて。僕がやろうとしていたのは、第一秘書の桜という役です。実はこの富士見総理と秘書たちのドタバタは「社長シリーズ」なんです。
植竹:森繁久彌さんのね。
太田:桜という人物は「無責任シリーズ」の植木等さんがモデル。だから「社長シリーズ」と「無責任シリーズ」が合体して、なおかつそこに「ローマの休日」を混ぜるという。だからアン大統領はアン王女です。
植竹:そんなので直木賞が獲れるか!
太田:はははは(笑)!
◆ドナルド型SF政治小説
植竹:田中康夫さんが「ミッキーマウスよりドナルドダックにシンパシーを感じている」と言っていたわけ。ミッキーはいい子だけど、ドナルドは始終ああだこうだって言っている。やっぱりそういう面倒くさいキャラクターもいないと、世の中が平均的にならないんじゃないかと。誰かがそういうことを言っていなきゃ。
だから、この小説は壮大なドナルド型SF政治小説。ちょっと理想的なことも言わないと、そういう人がいてくれないとね。特に文体で思ったんだけど、僕が好きな「ザ・ニューヨーカー」という雑誌があって。
太田:憧れの雑誌ですよね。
植竹:そこからいろいろな作家が出ているじゃないですか。その翻訳ものの小説みたいな感じがして。
太田:そんなシャレた感じに思ってもらいましたか(笑)。恐縮です。
植竹:ちょっと小粋なことを言おうとしているところがあるのよ。
太田:アメリカ側を描く際には、わりとそういう風に意識して。ようするにちょっとジョークを挟むみたいな、あえてそういう描き方をして。日本側を描く際はベタな感じです。
植竹:太田くんはSF小説を前から読んでいた?
太田:大好きですね。僕らの世代はそれこそ「ウルトラマン」で育っているので、最初に夢中になったのは円谷プロなんです。手塚治虫先生とか石ノ森章太郎先生。そこから入って「スター・ウォーズ」でしょ。宮崎駿さんが描いた「未来少年コナン」とか。
あとは「宇宙戦艦ヤマト」であるとか、ほとんどSFで育っているから。小説なんかもカート・ヴォネガットであるとか、フィリップ・K・ディック、ロバート・A・ハインラインとか、あのへんは学生時代に大好きでしたね。
◆24時間体制で執筆
植竹:非常に多忙なテレビやラジオの仕事があって、なおかつ小説も書いて。
太田:けっこう暇なんですよ(笑)。
植竹:いやいや(笑)。ちゃんとパソコンに向かって書くんですか?
太田:手書きじゃないですよ(笑)。
植竹:アイデアとかそういうものはiPhoneとかにメモしたり?
太田:僕は携帯を持っていないので、ノートパソコンをいつも持ち歩いているんです。ちょっとした仕事の合間に楽屋とかでパソコンを常に開いておいて、「あ、思いついた」と思ったらそこにメモるということはずっとやっています。これを書いているときは常に原稿のデータを開いておいて「今日は3行かけた」とか、そういうレベルで。
植竹:本番前にそんなことをやっているわけ?
太田:本番前もあとも、移動中の車のなかとか家にいるときとか。
植竹:本番前によくそんなことができるね。下準備とかはないわけ?
太田:「本番に集中しろ」って話ですよね(笑)。でも全然、それは思いついたときなので一応(ノートパソコンを)開いておくんです。
植竹:24時間体制だ。書きだしたら早いほう?
太田:どうですかね。結局、これだけ時間がかかっちゃいましたから遅いほうだと思います。
植竹:1日何枚ぐらい書いたんですか?
太田:調子がいいときは10枚20枚とか進むんですけど、「今日は1文字も書けなかったな」という日もいっぱいあったし、まちまちですね。
◆エンディングは変更した部分も
太田:そもそも読んで面白かったんですか? それをまず言ってもらわないと(笑)。
植竹:だから「ザ・ニューヨーカー」の人が書いたような本というのは褒め言葉ですから。
太田:面白かったと受け取ってもいい?
植竹:もちろんです。これからもいろいろな文章を書くと思いますが、そういうのって日ごろからネタをためていたりするの?
太田:一応「TV Bros.」(東京ニュース通信社)でずっと、せいぜいペラ3枚ぐらいなんですけど連載を続けています。そこではずっと小説風のショートショートを月2本ぐらい書いていて、わりとそこが元ネタになることが多いんです。
植竹:「笑って人類!」はエンターテインメントですけど、こういうもののエンディングって(はじめから)決めてあるもの?
太田:ざっくりとは決めていました。特にこれは映画のシナリオで一旦書き上げてあったので、エンディングは決まっていましたけど、小説にしていく過程で膨らんでしまったので、「こっちにいこう」というような変更はありました。
◆「いつがいい」かはわからない
植竹:あなたは早起きですよね。
太田:4時か5時起きです。
植竹:そこから書いたりしているの?
太田:一応僕のルーティンがあって、朝起きてまずトレーニングをやるんです。階段上り下りと、腕立や腹筋を一通りやって、パソコンを開いてニュースを拾い読みして、そこから書くという。朝の出かけるまでのあいだに書くことは多いですね。
植竹:朝のほうが集中できる?
太田:本当に集中できるときが夜中だったりもするし、ネタ作りも普段からあるので「いつがいい」って、いまだによくわからないんですよね。
植竹:五木寛之さんは、いっとき「夜中から朝6時まで書く」という。それで6時に寝て夕方に起きる生活をずっと続けて、さすがに90近くになってそれはやめたそうなんですけども。
太田:そんな大作家とくらべられても(笑)。作家1本の人は、そういうルーティンができるんでしょうね。僕らの生活はテレビもあるし、朝早く現場に行くときもあれば夕方からのときもあるし、ラジオもある。
そうすると「この時間」というのは決められないですよね。途中に別の連載も入ってくるもんですから「これを書き終わるまではこっちに移れないな」みたいなのもあって。だからそういう意味ではバラバラです。
植竹:書いているときって楽しいの?
太田:やっぱり、乗ってくると楽しいです。これを書いているときは、まるで自分が物語の読者として楽しんでいるような感じで書いている瞬間がいっぱいありましたから。
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次回の配信(7月28日(金)予定)も、引き続き太田光さんをゲストに迎えてお届けします。爆笑問題のデビューのきっかけとなった「ラ・ママ新人コント大会」の貴重な裏話が聴けるかも!?
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太田さんの小説「笑って人類!」(幻冬舎)は好評発売中。
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「植竹公和のアカシック・ラジオ」音声版
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<番組概要>
番組名:歌う放送作家 植竹公和のアカシック・ラジオ
AuDee、Spotifyで配信中
配信日時:隔週金曜10:00〜
パーソナリティ:植竹公和