本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
10月11日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「上がり続ける“住宅価格”と深く関わる“金融政策と為替動向”」というテーマでお話を伺いました。
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(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆東京23区の新築マンション平均販売価格は1億円超え
浜崎:宗さま、今回は上がり続ける“住宅価格”と深く関わる“金融政策と為替動向”についてお話しいただけるということですが。
やしろ:よく「人生100年時代」などと言われますが、具体的にどのようなことにお金がかかるのか教えてください。
宗正:代表的な「人生の3大資金」には、お子さんの「教育資金」、「住宅資金」、そして老後の生活のための「老後資金」があります。もちろん人によって差はありますが、リスナーのみなさん全ての方に共通して関係するのは「住宅資金」ですよね。
家を購入しない人でも、賃貸に住んでいれば家賃という形の「住宅資金」が必要です。新築住宅の販売価格が全国的に上昇していますが、特に今年前半の東京23区の新築マンションの販売価格は平均で1億円を超えました。過去最高です。
やしろ:このニュースを見てびっくりしました。「買えないじゃん」って思いました。
宗正:住宅購入価格の目安は、年収の5倍までなんて昔からよく言われてきました。無理なく住宅ローンを返済できる水準だそうです。でも今は間違いなく、平均で年収の5倍を軽く超えているでしょうね。
やしろ:年収との乖離がどんどん進んでいそうな都内の新築マンション価格ですが、どのような人が買っているんですか?
宗正:高額所得者なのはもちろん、パワーカップルと呼ばれる夫婦共働きの世帯、値上がり益を狙う個人投資家。あとは地方の資産家の別宅や、お子さんの進学時の下宿先としての購入ですね。そして今の円安を受けた海外投資家からの需要もあります。
やしろ:コロナ禍で世界経済がどうなるか分からなかった頃も、日本は安定しているということで、マンションを含め東京の不動産が注目されて、海外のお金が入ってきたという話も聞きました。その流れはまだ続いているのでしょうか?
宗正:まだ続いていますし、入ってくるお金の量はあの頃以上です。コロナ禍の真っ只中、オリンピックの開催時が東京の不動産価格のピークだなんて話を聞きませんでした?
やしろ:はい、聞きました。
宗正:全然ピークじゃなくて、その後もずっと上がり続けています。先ほどお話した新規購入者の購入動機は、いずれも都心ならではの傾向が強いのですが、総じて彼らの動きを後押ししているのは、住宅ローン金利の水準が低いこと。つまりローンを組んで購入しても、その物件を貸し出して得られる家賃収入の利回りのほうが高いんです。
やしろ:海外からのお金がどんどん入って来るので、都内のマンションの平均価格が1億円を超えているのかと思ったら、意外と国内需要も高いんですね。
◆住宅価格がピークを迎えても、しばらくは横ばい状態か
やしろ:住宅ローンの金利は、今後は徐々に上がっていく気配がありますが、そうなると、今の住宅価格の上昇も少しは落ち着いてくるのでしょうか?
宗正:方向性としてはそうですが、急に住宅価格が下がり始めることはなさそうです。仮に住宅価格がピークを打ったとしても、しばらくは横ばいが続くんじゃないかなと思います。
住宅ローンには短期金利に連動する変動金利型と、長期金利に連動する固定金利型、この2つのタイプがあります。特に注目は変動金利型の住宅ローンです。今、この変動金利型の住宅ローンは、低い金利の金融機関で0.5%程度のものまであります。金利水準がほぼ「0」ですからね、借りなきゃ損とも言えるレベルです。
住宅ローンの金利水準を左右するのが、日銀の金融政策です。今の物価高を上回る賃上げが世の中で実現できたとき、初めて日銀は金利を引き上げることができます。ここを日銀は一番意識しているはずです。
やしろ:そういう順番なんですね。上がり始めた物価に、ちゃんとついていけるように賃上げができたら、ようやく金利が本格的に上がり始めるということですね。
◆日銀は金利を上げるのか?
やしろ:賃上げが本格的な金利の引き上げに必要ということは、来年の春までは金融政策も今の状態が続くということですか?
宗正:毎年の春闘で新たな賃金が決まりますから、その動きが見えるまで「日銀は金利を引き上げられないのか?」と考えてしまうのは自然なことです。
この番組では金融政策の話をすることが多いのですが、政府ができることにはもう1つ、財政政策があります。今のマイナス金利政策を続けながら、財政政策で賃上げと同じ状況を作り出すこともできないことはない。最近の岸田総理の発言に、3年連続で過去最高だった税収を国民に還元したいなんて発言がありましたよね。
やしろ:ありました。じゃあ、どう還元するんだ? と聞いたときに思いました。
宗正:マイナス金利政策を続けて経済活動の底上げを図りつつ、何らかの仕組みで集め過ぎた税金を国民に還元する。例えば減税などもその一つですが、実質的に賃金を上げたのと同じ状況を作り出すこともできます。お金に色はありませんからね。リスナーの皆さんが金融政策を見るとき、特に今後は財政政策の方にも注目していただきたいと思います。
◆進む円安 年内に再度1ドル150円を超える可能性も
やしろ: 10月に入ってさらに進んだ円安ですが、1ドル150円に入ったところで、直後すぐに1ドル147円台くらいまで戻りました。先月、宗さまが番組で予想していた通りの動きでしたが、あの動きはいわゆる為替介入によるものだったのでしょうか?
宗正:円安を止めるための為替介入は、ドルを売って円を買う動きです。実際にそれをしたかどうかについて、政府はノーコメントなんですよ。今回の動き、個人的には1ドル150円から円高方向に戻る勢いが過去の為替介入時と比べて弱かった気がしますね。
やしろ:去年の秋には確か、政府は為替介入をしたと言っていましたよね。
宗正:去年は為替介入を認める発言もありましたし、後になればドル売りの為替介入の原資となる外貨準備の減少からも分かります。今回は今のところ、政府日銀からの明確な発言はありません。1ドル150円は1つの節目、1年ぶりの円安水準ですから、為替市場の参加者から利益を確定させるドル売りが出た可能性もありますね。
一般的に、政府が為替介入に踏み切るとき、例えば1ドル150円という水準を目安にするのではなくて、短い期間で上下のブレが大きいときに介入するケースが普通です。短期で為替水準が動いてしまうと、為替予約などの準備ができないので経済活動に与える影響が大きいですからね。諸外国の納得できる理由とタイミングで介入しなければ、単なる為替操作と受け止められてしまいます。
やしろ:ある程度の水準で円安が止まればいいなって、僕は思っていますけど、年内に1ドル152円~153円位まで行く可能性もありますか?
宗正:可能性はもちろんあります。マーケット用語で「150円を試す」と言いますが、一度150円に達した後なので、年内に再び150円を試して、その水準を突き抜ける可能性はあります。仮に為替介入があったとしても、介入はあくまでも一時しのぎ、時間稼ぎですからね。為替市場の動きの大前提は、日米の金利差であり今後の日米の金融政策の方向性です。
やしろ:今日はいろいろなお話を聞いてきましたが、日銀の金融政策やドル円の為替水準など、これは私たちの生活に本当に深く関わっているということですよね。
宗正:この辺りの話は知らないと大損しますよ、日常的に(笑)
やしろ:そういうことですよね。全部が生活に直結している話ですよね。
宗正:今日は住宅ローンのお話もしましたが、住宅って高い買い物じゃないですか。ちょっとした金利差で、最終的な返済金額ってすごく大きな差になるんですよ。
変動金利にするのか固定金利型にするのかでも大きく変わってきますし、住宅の購入タイミング次第で借入額もどんどん膨らみます。為替の動きもそうですよね、日々のお買い物にも直結しますし、資産運用の対象も海外資産がますます増える世の中ですから、必要不可欠な知識と言えるでしょうね。
やしろ:ありがとうございます。
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保