作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。8月31日(日)の放送は「村上RADIO~ローラ・ニーロ・ソングブック~」をオンエア。
今回は、天才女性シンガー・ソングライターと謳われたローラ・ニーロを特集。自身が自作曲を歌ったバージョンはなぜかあまりヒットしなかったローラ・ニーロですが、多くのアーティストが彼女の楽曲をカバーしたことで、大ヒット。ローラ・ニーロの音楽が大好きで、かねてから彼女の特集をおこないたいと思っていたという村上DJが、魅力的で印象的な名曲の数々を、心を込めて選曲しました。
この記事では前半2曲について語ったパートを紹介します。
Laura Nyro「And When I Die」
Blood, Sweat And Tears「And When I Die」
次は「And When I Die」を聴いてください。
これはブラッド・スウェット・アンド・ティアーズの歌で大ヒットしました。1969年に全米ヒットチャートの2位につけています。すごいですね。当時、彼女の書く曲には人々の心に広く強く率直に訴えかけるものがあったんでしょうね。
ローラはブラッド・スウェット・アンド・ティアーズのメンバーと仲が良くて、そのバンドのリード・シンガーをやらないかと誘われていました。アル・クーパーがクビになったので、その後釜に座らないかと。本人もけっこうその気になっていたのですが、当時彼女のマネジャーをやっていたデヴィッド・ゲフィンが「冗談じゃない。ローラはこれからソロ歌手として売り出すんだから」と強く主張し、その話は流れてしまいました。でもブラッド・スウェット・アンド・ティアーズは、代わりにデヴィッド・クレイトン・トーマスをリード歌手に迎えて大ブレークしましたから、結果的にはお互いそれでよかったみたいですけどね。
そのデヴィッド・クレイトン・トーマスが野太い声でがっつりと歌い上げます、「And When I Die」。「僕が死んじゃっても、子どもが1人生まれたら、それで世の中はこともなく進んでいくんだよ」という歌詞です。これ、どう考えても20歳前の女の子が書くような歌詞じゃないですよね。彼女のつくる歌には常に物語があります。曲はどっしりと始まりますが,途中でぱっと明るくなるところがあります。そういうちょっと意外な展開がローラの個性というか、持ち味です。
聴いてください。「And When I Die」。まずローラの歌で、それからブラッド・スウェット・アンド・ティアーズに切り替わります。
Three Dog Night「Eli's Coming」
次は「Eli's Coming(イーライズ・カミン)」です。先ほどおかけした2曲は彼女が1967年にヴァーヴ・レコードから出したデビュー・アルバムに収められていたものですが、この曲はコロンビア・レコードに移籍して最初に出したアルバム『Eli and the Thirteenth Confession』(日本でのタイトル:イーライと13番目の懺悔)に入っています。これはほんとに素晴らしいアルバムで、何度聴いても聴き飽きません。中でも「イーライズ・カミン」はスリー・ドッグ・ナイトがカバーしてヒットし、1969年に全米チャートの10位にランクされました。
イーライはイライジャの略で、ユダヤ系の名前です。きっとハンサムなちょい悪男子だったんでしょうね。女の子たちがすぐに騙されてしまう。3分くらいの短い曲の中にそういうストーリーが盛り込まれています。「ウェディング・ベル・ブルーズ」のビルもそうだったけど、名前の使い方になんか妙にリアリティがありますよね。
ローラ・ニーロが登場するまで、彼女が書いたような音楽を書いて歌う人はどこにもいませんでした。歌詞からメロディから和音まで、すべてが新鮮だったんです。全然ありきたりじゃなかった。この「イーライズ・カミン」にしてもとってもユニークな、なんだか不思議な曲です。でもつい口ずさんでしまいたくなる、共感性みたいなものがあります。
聴いてください。Three Dog Nightが歌います。「イーライズ・カミン」。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~ローラ・ニーロ・ソングブック~
放送日時:8月31日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/