川瀬良子がパーソナリティをつとめ、日本の農業を応援するTOKYO FMのラジオ番組「あぐりずむ」。毎週火曜は、農業はもちろん、時代の先を捉えるさまざまな研究をおこなっている東京農業大学から、最先端の農学研究を紹介します。5月9日(火)と5月16日(火)の放送では、東京農業大学 地域環境科学部 地域創成科学科の町田怜子(まちだ・れいこ)教授に、現在開催中の地域創成科学科展「五感で学ぶ!ちいきのひみつ」、さらには町田教授の研究領域である「農福連携」について伺いました。
(左から)川瀬良子、町田怜子教授
◆私たちの“地域”を考えるきっかけに
東京農大・世田谷キャンパスそばにある「食と農」の博物館では、8月31日(木)まで地域創成科学科展「五感で学ぶ!ちいきのひみつ」が開催されています。この企画展について、町田教授は「○○区、○○県など、そこの地域が成り立っ地形から、川が流れ、森ができ、(そこに住みやすい)生き物が生まれて、そこに、人が暮らし始めて、お祭り等の文化が生まれて……重なり合ういろいろな要素を発見してほしいと思い展示を準備しました」と説明します。
なぜ“地域”に着目したのかというと、「環境問題や今の農業を取り巻く問題、これから人口が減少していく社会になっていくなかで、私たちがどういう社会を作っていくかを考える最初の一歩が、私たちの暮らしている範囲、つまり地域になってくれたらいいなという願いを込めて作りました」と話します。
また、展示されているものについて伺うと、「(見たい地域の)最初に基盤となっている地形を見ていきます。すると、平坦なように見えて実は緩やかな坂があるなど、いろいろな地形があることが分かります。また、私たちと一緒に住んでいる生き物も数多く展示していますので、どんな生き物が身近に住んでいるのかも分かります」と町田教授。
これに川瀬は「確かに、生き物も一緒に暮らしていますもんね」と大きくうなずき、「花壇や土があるところには“生き物がいるんだ”と、そういったところにも改めて目を向けるきっかけになりますよね。この展示を見ると、家に帰る途中とか、すごく目線が変わりそうですね」と感想を述べます。
その言葉に、町田教授は「うれしいです」と笑顔をのぞかせ、「ぜひそういったいろいろな地域なりの視点を見つけていただいて、地域を探検する気持ちで出かけてほしいなと思っています。(地域を)探検したくなるような面白い調査道具もたくさん展示しているので楽しんでほしいです」とアピールしました。
◆「農福連携」の研究で期待できること
町田教授は、障がいのある方が農業分野で活躍することを通じて、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組み「農福連携(農業と福祉の連携)」について研究されています。そのきっかけは、視覚障がいを持つ女子学生との出会いでした。
彼女と出会ったのは5年前で、「私たちが周りから見ていると、“ノコギリとか(を扱うのは)難しいかな”と思っていても、“ガリガリ”という音と感覚だけで(ノコギリをひいて)上手に切ったり、彼女と一緒にできることがいっぱい見つかったのがすごくうれしくて。それが大きなきっかけですね」と振り返ります。
また、女子学生の持つ潜在能力は目を見張る物があり、「水やりも、水の音や感覚、レーキ(整地や集草作業に使われる農具)を上手に使って判断したり、雑草取りでも、育ったばかりの小さなニンジンの芽と雑草の芽の違いも指の感覚だけで仕分けることができて、しかも作業が早いんです」と町田教授。そうした姿を目の当たりにして、農業に参画できる可能性を大いに感じたと言います。
そして、今後の研究の展望について伺うと、「農業にはたくさんの作業工程があるぶん、(障がいのある方にとっても)いろいろな可能性があると思っています。なので“私たちでも安心して一緒に作業ができるんだ”ということを理解してもらうためのガイドラインなども研究しています。共有できる機会がたくさんあって、不安や心配をも取り除ける研究データを開示していきたい」と力を込めます。
農業の課題の1つに“担い手不足”があるため、農福連携は「新しいサポーターとしての期待もあります」と町田教授。例えば、草取りや収穫物の包装をきれいに作業するのが上手な人もいたりして、「一緒にやってみると、その人の得意な作業も分かったりするので、まずは、個性に応じた作業を一緒に見つけて、それぞれが得意な作業を担えるようにする。これは、農業だからこそできるところかなと思っています」と期待を寄せていました。
<番組概要>
番組名:あぐりずむ
放送日時:毎週月~木曜 15:50~16:00
パーソナリティ:川瀬良子
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/agrizm/