笹川友里がパーソナリティを務めるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。9月26日(土)の放送は、三井倉庫ホールディングス株式会社 上級執行役員 情報システム担当の佐野直人(さの・なおと)さんが登場。“物流の効率化”に向けた課題や、デジタル技術を活用した取り組みについて伺いました。
(左から)佐野直人さん、笹川友里
佐野直人さんは、外資系ITベンダーでSE、コンサルティングを経て、マーケティングとして各種ソリューションを統括。IT大手での政府の「e-Japanプロジェクト」の支援や、事業戦略の策定、新規事業の立ち上げなどに携わります。その後、大手企業でデータ基盤の構築やDXの推進、新サービスの構築を経験し、現在は三井倉庫ホールディングス株式会社の情報システム担当役員として、グループ全体のITやDX、セキュリティ領域を統括しています。
◆“物流のデジタル化”を阻む壁
三井倉庫ホールディングスは、さまざまな企業をパートナーとして迎えながら国内、さらに海外にも事業領域を広げている総合物流企業です。現在は22ヵ国に約400ヵ所の拠点を持ち、従業員数は約7,700人、売上高は約2,800億円にのぼります。
まず笹川は、金融業界の次に親和性が高いといわれている「物流業界とデジタル技術」について触れると、佐野さんは、デジタルの使い方として世界中で動いているものをコントロールしているという意味では、金融も物流も同じであると言います。
一方、金融に比べて物流のデジタル化が進みにくい理由についても言及し、「金融は今、お札がなくてもほぼ買い物できている状況になっていますが、物流は“物”が動かないとどうしようもないですし、1社ですべてを運ぶことはできなくて、いろんな事業会社、荷主さん、みんなでパートナーを組んで、バトンリレーのように物を渡していかなければなりません。そして、それぞれが同じ標準の作業、データの形というのを持たないとつながらないのですが、これがまだうまくできてないので、なかなか1つに進んでいかない」と説明します。
◆三井倉庫が取り組む物流業界の課題と対策
続いては、物流業界が抱える課題・障壁について伺います。現場では「荷物がいつ到着するのか」を早い段階で正確に把握できれば、その後の作業を効率良く進められます。しかし、佐野さんによると、現状はそうした情報を一括して確認できる仕組みが十分に整っていないと指摘します。
さらに、“ドライバー不足”も大きな課題の1つです。ドライバーの時間外労働に上限規制が適用され、これまで以上に限られた労働時間で輸送をおこなうことが求められています。佐野さんは、「簡単に言うと、ドライバーが物を運ぶ時間が減っているということになります。そうすると、EC(電子商取引)が全盛になってきた頃から『今日頼めば明日届く』というのが当たり前になっていますが、これを維持するのもかなり難しくなっています」と語ります。
この状況を打破するため、三井倉庫ホールディングスでは、複数台に分かれている輸送を1台に集約したり、輸送の頻度やタイミングを調整したり、自動運転トラックの実装に向けた検証を続けるなど、物流システムそのものの再構築に取り組んでいます。
また、佐野さんは、「今までの配送のやり方を抜本的に見直していくという意味では、物流業界だけでなく、荷主企業や消費者とも連携しながらサプライチェーンの最適化を図っていかないと、今後タイムリーに物を届けることが難しくなってくるなと考えています」と危惧します。
◆物流DXを支える「攻め」と「守り」の取り組み
三井倉庫ホールディングスが策定した「中期経営計画2022」では、現場のDX戦略として5年間で200億円を投資し、“攻めと守り”の2つの視点から変革を目指しています。
まず“攻めの投資”として、企業間でデータを共有するプラットフォームの構築を進めています。これによって、荷主から提供された物流データからCO2排出量を算出し、削減に向けた物流の仕組みまで提案する「SustainaLink」(サステナリンク)や、SCM(サプライチェーンマネジメント)デジタルプラットフォーム「LVL(Logistics Value Link)」など、新たなサービスが生まれています。
もう1つは、倉庫内や作業場といったところでも効率化を目指し、自分たちの足元を固めていく“守りの投資”です。佐野さんは、「もっとデジタルを使っていけば、自分たちの仕事をラクにできるよね。そのぶん、お客さまに対していろんなビジネスを考える時間をつくれるよね。といったところを狙うために、従業員一人ひとりが自ら変革していく。そういった教育の部分も非常に重視しています」と解説します。
そのような取り組みが評価され、今年発表された「DX銘柄2026」に同社が選定されました。この結果に、佐野さんは、経営戦略として経営層とも協力して取り組んできた点や、自動運転の実証実験などを通じて、社会課題の解決に投資している点、さらには、AI推進室などDX推進のための組織づくりや、タイムリーな経営判断ができている点もかなり評価されたのではないかと分析します。
そして、近年はデータドリブン経営にも特に力を入れていると言い、「“経営のスピード化”という意味では、会計的なところで、今までは月次でデータを集計すれば良かったところ、デジタル化によってデータがどんどん溜まってくる形になり、週次、日次でデータが取れるようになりました。また、倉庫の在庫の量も毎日分かるようになり、売上も毎日予測できるようになってきました。そのため、これまでは月末に(集計結果を)見たところで手が打てなかったところを、週次や日次のデータを見ながら、現場や事業会社が速やかにアクションをとっていける。ここ2年くらいはそういったところを重視して進めていましたので、随分変わってきたと思います」と手応えを語っていました。
データ基盤の整備や、それを活用する人材の育成、そして、各事業会社のマネジメントの変革まで進めている三井倉庫ホールディングスの挑戦はまだまだ続きます。
次回10月3日(土)の放送も、引き続き佐野さんをゲストに迎えてお届けします。三井倉庫グループでのAIの活用についてなど、貴重な話が聴けるかも!?
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/