ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
1月22日(水)のテーマは「ニューヨークのZ世代がトランプ新政権のアメリカを予想 “AIの影響でさらに格差が開いていく”“また革命が起こるかも?”」。トランプ新政権のアメリカについて、「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が本音を語りました。
※写真はイメージです
◆アメリカ社会は資産家が権力を握る
1月20日、第47代トランプ大統領が就任しました。Z世代の過半数が支持していない新政権の誕生に、前回の放送ではラボメンバーから「何もできることがない」「自分の生活に集中する」といった声があがりました。
これまでもお伝えしているように、第二次トランプ政権には、これまで考えられなかったほどのお金と権力が集まっています。このことについて、ニューヨークのZ世代はどう受け止めているのでしょうか?
ノエ:リベラリズムというのは、人々が協力して、国連のようなものが存在し、倫理的な考えがある、といったものだよね。だけど、リアリズムだと、そういうのは大した問題ではない。最終的には、軍事力を持って世界的な覇権を得られるか、お金や権力で他国を服従させることができるか、ということがすべてだという考え方なんだよ。誰もそれを止めることはできない。
結局のところ、道徳なんてものは存在しない。それらはすべて、人々が自分の利益を守るために作り出したものなんだ。そのあたりはみんなどう思う? 中央の権威なんてものは存在しないと思う?
ケンジュ:その考えには賛成だな。だからあまり政治に深く関わる気になれないんだよ。世界の中心となる権力イコールアメリカとも言えるけど、本当の権力を持っているのは、莫大な資産を持つ企業を所有する少数のエリートたちだよね。最終的には彼らが望むことを実現させ、国や世界を自分たちの望む形に作り変えるんだ。
メアリー:それらの億万長者や兆万長者が一番多い国はどこ? アメリカでしょう? だからアメリカが「中央権力」だよね。
モラルには何の意味もない。金と権力がすべてのリアリズムが、アメリカ、そして世界を支配するのではないかと、ラボメンバーたちは警戒しています。
バイデン前大統領は最後の演説で、少数が強い力を持って多数を支配するオリガーキー(寡頭政治)を懸念する発言をしていましたが、ラボのZ世代の意見はそれと重複するところが大きいと感じます。
◆AIが庶民の仕事を奪う時代がいよいよ到来?
こうした状況下、新トランプ政権の1年間では何が起こると考えているのでしょうか?
メアリー:間違いないのは、AIが発展していくにつれて、富の格差がさらに広がるということだよ。AIの進化で多くの人が職を失う一方で、企業は引き続き利益を上げ続けるだろうから。この不平等は尋常じゃないレベルになると思う。
ノエ:企業はAIを使ってコスト削減を目指し、不要な労働を減らそうとしているのに、なぜCEOを自動化しないのかな? CEOこそがもっとも莫大なお金をもらっているポジションなのに。
ケンジュ:それ、裏ではもうやっているかもよ。一部の企業はすでにAIで動いているかもしれない。
ノエ:そうかもしれないけど、それでもコストは削減されていないよね。誰かがそのお金を手にしているからだよね。
ケンジュ:AIの目的は労働コストを削減することだけど、それが進化すればするほど、状況は大変なことになると思うな。今年だけで技術がさらに飛躍しそうだし、テクノロジーが指数関数的に成長しているもの。
それに、もしAIが大多数の労働力の代わりになったら、人々には交渉力がまったくなくなるよね。企業のやり方に不満があってもストライキをすることはできなくなる。それが可能になったら、本当に企業はやりたい放題になるよ。労働者が必要ないわけだからね。もうすでに企業は好き勝手やっているけど、本当にとんでもない事態になると思うな。
アメリカのZ世代は、これからAIの急速な発展で庶民から仕事が奪われ、貧富の差はさらに開いていくと予想します。「AIに関しては中国との競争が激化するなか、トランプ新政権がAIに関する規制を徹底的に緩和することで、テクノロジー自体が暴走する可能性を強く懸念する声もあります」とZ世代専門家のシェリーは補足します。
(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab
◆革命を起こすことは現実的ではない
労働者が必要とされず、企業の言いなりになる未来を予測するラボメンバー。悲観的な状況のなか、何かできることはないのでしょうか?
ノエ:また“革命の時代”になるかも! ただ、今は昔みたいに大勢の人が集まって政府を打倒できる時代ではないよね。今は大規模な反乱が起きたとしても、機関銃や戦車があって、組織化された軍隊には太刀打ちできないと思うよ。
ケンジュ:でも、今の段階だとまだ可能性があると思う。たとえば、みんなが銀行口座からお金を全部引き出したらどうなると思う? あるいは、みんなが一斉に働かなくなったら? そうしたら、結局上にいる人たちも頭を下げざるを得ないでしょう。
メアリー:でも、それってちょっと怖くない? どうなるか予測もつかないし、他の人がそれに参加しない場合もあるよね。「自分の命を預けても大丈夫なのか」と疑いたくなるよね。それに、アメリカには気を紛らわせるための「いいもの」が多すぎるんだよ。
ケンジュ:そうだね。今のところ、まだ多くの人は生活が快適すぎるんだ。人々が「もうこれ以外に選択肢がない」と感じるレベルに達する必要があるよね。
メアリー:でも、その時点ではもう手遅れだと思うけど。
Z世代はほんの数年前まで、テクノロジーの力を借りてアメリカは自分たちの世代でよりよい国に変えられると、とても楽観的に考えていました。ところが今では、選択肢がないというところまで追い詰められています。
「一度の選挙と政権の交代で、ここまで変わってしまうものなのかという驚きを感じざるを得ません。この状況が再び変わることがあるのでしょうか。引き続きお伝えしていきます」とシェリーはコメントし、話題を締めくくりました。
<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/