鷲見玲奈がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ALFALINK presents BRAND NEW LINK」(毎週土曜 7:00~7:25)。ひとつの成功に満足することなく、新たな分野へと越境し挑戦を続ける人。既存の枠にとらわれず、業界に新しい潮流を持ち込み、ゲームチェンジを起こしてきた企業。そうした方々をゲストに迎え、挑戦にまつわるエピソードや発想の原点、そしてこれから目指すヴィジョンについて伺っていきます。
4月25日(土)の放送は、先週に引き続き中川政七商店 代表取締役社長の千石あやさんをゲストに迎え、ブランドコンセプトに込めた思い、今後の展望について話を伺いました。
中川政七商店 代表取締役社長 千石あやさん
◆工芸を日常へ届ける「旬の手しごと」シリーズを展開
奈良県で1716年に創業し、日本の工芸に根ざした生活雑貨を展開する中川政七商店。310年の歴史を持つ老舗企業において、初めて創業家以外から社長に就任したのが、14代目の代表取締役社長・千石あやさんです。「日本の工芸を元気にする!」というヴィジョンを掲げ、業績を大きく伸ばした前社長からバトンを受け継ぎ、2018年より新たな舵取りを担っています。
千石さんが社長就任当時に感じていたのは、「工芸らしさ」や「手仕事の温もり」がやや薄れつつあるという課題でした。同社にとっては売上の拡大以上に、「日本の工芸を元気にする」というヴィジョンが最上位にあるといいます。そのため、「産地や工芸が元気になるためには、もう一度、工芸に根ざしたものづくりにシフトする必要がある」と考え、方向転換を図りました。
具体的な取り組みとして進められたのは、自社らしさの言語化です。どのようなものづくりがブランドにふさわしいのかを明確にし、映像やビジュアルも活用しながら社内外で共通認識を育んできました。さらに、大型の旗艦店ではワークショップや企画展を開催し、通常の店舗では体験できない価値を提供。本の出版にも取り組み、自社のものづくりの思想を広く伝えてきました。
そうした流れのなかで、2021年に打ち出されたのがブランドコンセプト「100年先の日本に工芸がありますように。日本の工芸が教えてくれる暮らしかた、生きかた」です。この言葉には、単なる商品提供にとどまらず、工芸のある暮らしの豊かさを社会に伝えていきたいという思いが込められています。千石さんは、「工芸のある世界がどんな豊かさをもたらすのかを、お客さまに十分に語りかけられていなかった」と振り返り、「どんな道具を選び、どんな暮らしをつくるかは、そのまま生き方につながる」と語ります。
こうした考えを体現する取り組みのひとつが、「旬の手しごと」シリーズです。これは、日本の暮らしに根付く季節感や旬を気軽に楽しめるように設計された商品で、梅仕事や味噌づくりといった伝統的な手仕事を、誰でもはじめやすい形で提案しています。千石さん自身も、「やってみたいけれど準備が大変で踏み出せなかった」という実体験から着想を得たといいます。
商品は、奈良の農家と連携した素材に加え、必要な道具や調味料を一式揃えたセットとして、最適な季節に届けられます。「少しハードルが高そうに感じる暮らしの楽しみも、セットアップされていれば一歩踏み出せるかもしれないと思いました」と、千石さんは力を込めます。そんな発想から生まれた「旬の手しごと」シリーズは、工芸と暮らしをより身近にする入り口として、多くの共感を集めています。
パーソナリティの鷲見玲奈
◆世界中の工芸の価値を広めていきたい
千石さんの社長就任から8年。中川政七商店は着実に成長を遂げてきました。店舗数は48店舗から68店舗へ拡大し、売上も57億円規模から今期は100億円を超える見込みです。
この成果について千石さんは、「心地のよい暮らしとは何かを考え続け、工芸と暮らしの関係を広げてきたことが大きいです」と振り返ります。さらに海外にも視線を向けています。国内市場が縮小するなかで、日本の工芸の魅力を海外に発信することは重要な戦略です。同時に「工芸の衰退は世界規模で起きている」と指摘し、「工芸という選択肢が残ること自体が豊かさにつながる」と語ります。
将来的には、日本だけではなく各地の工芸も紹介できる場を海外に展開する構想も描いています。現在は中国や韓国、台湾、イギリスなどで長期間のポップアップショップを展開し、現地の反応を見ながら常設店舗の出店も視野に入れています。単なる販路拡大にとどまらず、工芸の価値を国境を越えて共有する試みです。
また、新たな挑戦として力を入れているのが住宅建材分野です。障子や襖(ふすま)、欄間(らんま)、畳といった日本家屋に根付いた工芸は、住環境の変化とともに需要が減少し、現在ではその要素を取り入れた“雑貨”として扱われることも多くなっています。千石さんは「本来は建材として使われることがもっとも自然であり、使用量も大きく異なる」と語り、和紙を用いた壁紙や、い草を加工した素材などの開発など、現代の住まいに取り入れやすい形への再構築を進めています。
中川政七商店がブランドづくりで重視しているのは、ヴィジョンです。千石さんは「同じ星を見て進んできたことが大きい」と語ります。環境に応じて手法を変えながらも、「何を信じ、どんな社会にしたいのか」という軸があることで、組織はぶれずに進むことができるといいます。
今後は海外での出店やコンサルティングを通じて、世界の工芸をともに考え、つくる動きを加速させる方針です。国内で旗艦店を中心に体験機会を充実させ、「工芸の価値や豊かさを実感できる場」を広げていくとともに、「工芸を元気にする」という目標のもと、取り組みを国内外へ展開していくとのことでした。
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<番組概要>
番組名:ALFALINK presents BRAND NEW LINK
放送日時:毎週土曜 7:00~7:25(TOKYO FM / FM大阪)
パーソナリティ:鷲見玲奈
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/brand_new_link/
番組公式Instagram:
@alfalink.tfm