笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。12月13日(土)の放送は、先週に引き続き株式会社ソラコム 代表取締役社長CEOの玉川憲(たまがわ・けん)さんをお迎えして、OpenAIとのパートナーシップや、IoTとAIが変えるデジタル社会の未来について伺いました。
(左から)玉川憲さん、笹川友里
玉川憲さんは1976年・大阪府生まれ。東京大学工学系大学院・機械情報工学科を修了後、アメリカ・カーネギーメロン大学でMBA(経営学修士)およびMSE(ソフトウェア工学修士)を修了。日本IBM基礎研究所を経て、2010年にアマゾンデータサービスジャパンにエバンジェリストとして入社。AWS日本市場の立ち上げを技術統括として牽引。2014年に株式会社ソラコムを設立しました。
◆グローバル展開に成功した理由は?
ソラコムは日本発のIT企業ながら、売上は海外比率が約4割を占めます。玉川さんによると、製造業では、海外進出の成功例が多い一方、IT・通信領域で世界規模の展開を実現している企業はまだ少ないと言い、その理由として、言語の壁とIT・ソフトウェア特有の構造を挙げ、「ソフトウェアは、一度作れば製造コストがかからないため、良いモノを世界に売れば売るほど効率が上がります。ただ、売れないと効率は悪いので、グローバルでやっている競合に負けていく構図となります」と説明します。
そんななか、ソラコムは創業当初からグローバル化を視野に入れ、日本・アメリカ・イギリスの3拠点をメインに事業を展開。さらに、現在では213の国と地域でSORACOM IoT SIMを利用した通信サービスができるようになるまでに成長しました。「(軌道に乗るまで)試行錯誤しながら、チームも何回も作り直しました。その結果、今では順調にグローバル戦略が立ち上がっているところです」と玉川さんは振り返ります。
また、アメリカにはIoTプラットフォーム企業が数多く存在しますが、笹川から「そのなかで、ソラコムが戦えている“一番の強み”とは何ですか?」と質問すると、玉川さんは“IoTの領域にフルコミットしてきたこと”と言及し、「他の会社さんも“IoTをやっている”とは言いますが、どちらというと他のメインビジネスがあるなかでIoTもやってますみたいな形なんです。
ですが、我々はIoTにフォーカスして、そのための通信、デバイス、クラウドをずっとやってきました。そういう意味では、ユニークな企業なのかなとも思っています」といいます。
◆新たなサービス「Wisora」とは?
ソラコムでは、ChatGPTを全社活用するなど早くから生成AIに注目しており、2年前からはカスタマーサポートの対応にも生成AIを導入。お問い合わせを分析した結果“AIで代替できる内容は多い”と確信するに至り、自社で培った生成AIボットのノウハウを外部企業にも活用してもらうために、新たなサービス「Wisora(ウィソラ)」の提供を開始しました。
こちらは“Wisdom(知恵)×SORACOM”という名前の通り、Web上にアカウントをつくり、自社サイトのURLを読み込ませるだけでAIが学習し、自社に関する問い合わせがあった際、AIが回答してくれるサービスです。「月額で簡単に使えるので、言ってしまうと“AIの民主化”ですね」と紹介します。
また、最近では営業メールの返信をAIが代替するなど、さらなる業務効率化につながる機能も追加されているとのことで、玉川さんは、このサービスを通じて、「どんどん効率化して、人間はより付加価値の高い仕事へシフトしていくべきだと考えています」と声を大にします。
◆AIの力が人類の進化を加速させる?
わずか10年のあいだにIoTやAIといったテクノロジーは大きく進化し、社会の姿を変えていきました。そこで笹川が「テクノロジーによって変化する“近未来の風景”」について伺うと、玉川さんはAI企業・Anthropic(アンソロピック)のCEO ダリオ・アモデイが提唱する“圧縮された21世紀”という概念に触れます。これは、人間だけの力では50~100年かかるような進歩が、AIによって5~10年に凝縮されるという大胆な予測です。
その背景には、巨大なデータセンターに集まったAIの知能が、やがて“ノーベル賞学者1万人分”に匹敵するほどの能力になるという見立てがあり、「そうすると、健康問題やメンタル、貧困、さらには戦争など、今まで解けなかったさまざまな課題が、どんどん解かれていくのではないか」と展望を語ります。
その進化を現実にするには、IoTによって膨大なデータを集め続けることが不可欠だと強調し、「データを見てみると、テクノロジーの進化によって飢餓率がすごく下がっていて、今後10年は、もっと下げられる可能性もあります。ソラコムも、人類が幸せな方向に進んでいくようにIoTの分野で貢献して、(人類の成長を)見届けたいと思っております」と話していました。
次回12月20日(土)の放送は、株式会社クラレ 執行役員 DX-IT本部長のスタンリー・フクヤマさんをゲストに迎えてお届けします。樹脂、化学品、繊維、活性炭などを製造・販売するスペシャリティ化学企業であるクラレが、全社をあげて取り組むDX戦略について伺います。
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/