作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。8月27日(日)の放送は「村上RADIO~お色気女性ヴォーカル特集~」をオンエア。
1950年代後半~1960年代前半にかけて、セクシー・ヴォイスで名を馳せ、10代の八代亜紀が憧れて歌い方をコピーしていたというジュリー・ロンドン、1960年代の“セックス・シンボル”の1人だったアン=マーグレット、さらに“ニューヨークのため息”と呼ばれたヘレン・メリルなど、その歌声で優しい罠を仕掛ける女性ヴォーカリストの楽曲が続々登場しました。松尾和子「グッド・ナイト東京」など日本の歌手も。
この記事では、前半2曲についてお話した内容を紹介します。
こんばんは。村上春樹です。今日は声が少ししゃがれています。夏風邪をこじらせて、喉をやられてしまいました。次の回までには治しておきますので、今日はすみませんが、この声にお付き合いください。
村上RADIO、今夜は「お色気女性ヴォーカル」特集です。色っぽい声や仕草で男心を惑(まど)わせる、いけないおねえさんたちの歌声をたっぷりお届けします。男性のみなさん、日曜日の夜ですから、彼女たちの仕掛ける優しい罠(わな)を心置きなく楽しんでください。女性リスナーはどうすればいいか? うーん、どうすればいいのかなあ。まあ、罠の仕掛け方とか、そのへんの手練手管(てれんてくだ)をちらっと学んでみられてはいかがでしょう。
<オープニング曲>
Donald Fagen「Madison Time」
「今回はお色気ヴォーカル特集でいきます」と言ったら、番組の女性スタッフから「今はもう『お色気』なんて言葉、ほとんど使いませんよ」と言われました。たしかにこの言葉、昭和っぽい匂いがするかもしれない。でも「お色気」に代わる言葉ってなかなかないんですよね。「セクシー」だとちょっと直接的すぎるし、「悩殺」というほど激しくありませんし。まあ、お色気でいいですよね。例によって、うちから音源をひと抱え持ってきました。選曲するのはけっこう楽しかったです。色っぽいおねえさんたちに囲まれているみたいで。
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◆Julie London「Come On-A My House」
ジュリー・ロンドンは1950年代後半から、1960年代前半にかけて、セクシー・ヴォイスで名を馳せた人です。ちょっと低い目の声でハスキーに歌うところがいいです。きれいな人で、もともとは女優だったんですが、途中から歌手に転向して有名になりました。10代の八代亜紀さんがジュリー・ロンドンに憧れて、歌い方をコピーしていたというのは、一部では有名な話です。
今日はローズマリー・クルーニーの唄で1951年にヒットした「Come On-A My House」“家(うち)へおいでよ”を聴いてください。この曲、作詞したのは作家のウィリアム・サローヤンです。
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「うちにいらっしゃいよ。キャンディーでも、果物でも、なんでも食べていいのよ。もう、何もかもそっくりあげちゃうんだから」という内容の歌詞です。そんなこと言われたら緊張しちゃいますよね。あまり言われたことありませんけど。
◆Claudine Longet「I Love How You Love Me」
次はクロディーヌ・ロンジェをかけます。ロンジェさんはフランス人で、夫はやはり歌手のアンディ・ウィリアムスさんです。この人も美しい方です。もともとはダンサーだったんですが、素人っぽい独特の歌い方が受けて1960年代後半、歌手としても成功しました。
「I Love How You Love Me」を聴いてください。バリー・マンが作曲して、パリス・シスターズが1961年にヒットさせた曲です。クロディーヌがあなたの耳元で、フランス語訛りのある英語でそっと囁(ささや)いてくれます。「あなたが私を愛してくれる、そのやり方が何より好きなの」
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8月27日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年9月4日(月) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~お色気女性ヴォーカル特集~
放送日時:8月27日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/