モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。7月27日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「全国に広がる『宿泊税』の導入」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
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2002年、全国に先駆けて東京都で「宿泊税」が導入されました。宿泊税とは、ホテルや旅館など、宿泊施設を運営する事業者に対して課される税金のこと。チェックインかチェックアウト、どちらかのタイミングで、宿泊料金に応じて宿泊客から徴収します。長年、宿泊税が課されるのは東京都のみでしたが、2017年には大阪府も導入しました。
◆全国に広がる「宿泊税」
吉田:コロナ禍を経て、宿泊税を新設する自治体が増えています。その背景には何があるのでしょうか? 塚越さんに解説いただきます。
ユージ:改めて「宿泊税」とは何でしょうか? 所得税や相続税のように国が定めた税金ではなく、なぜ地方自治体が独自に設定できるのですか?
塚越:国が定める税金は「法定税」と呼ばれ、住民税や消費税があります。一方で、各地方自治体の条例で個別に定められる地方税は「法定外税」と呼ばれます。例えば横浜市では緑豊かな街を維持するため「横浜みどり税」を徴収しており、三重県では循環型社会の構築を目的にした「産業廃棄物税」を徴収しています。こうした税を新設導入するのは、総務省の許可が必要になります。
ユージ:ホテルや旅館に宿泊するときに宿泊税を支払った覚えがありますが、どのくらい徴収されるのでしょうか? 東京都では、宿泊費が1万円以上~1万5,000円未満の場合は100円です。1万5,000円以上は200円が徴収されます。1万円未満は徴収がないほか、基本的には民泊も宿泊税の対象外です。
一方、大阪府では民泊も対象にするほか、7,000円から徴収があります。さらに京都市では宿泊料金2万円未満で200円、2万円以上で500円、5万円以上は1,000円の「宿泊税」を徴収しています。ただし、学校の修学旅行で京都市内の宿泊施設を利用した際は徴収しないことになっています。このように税金の設定や民泊が税の対象になるかどうかなど、自治体ごとにばらつきがあります。
吉田:宿泊税の導入が広がっているそうですが、具体的にどこの自治体が導入しているのですか?
塚越:宿泊税を導入している自治体はまだ多くありません。今年の4月時点では、東京都のほか、大阪府、京都市、金沢市や長崎市、ニセコのスキー場がある北海道の倶知安町(くっちゃんちょう)などがあります。特に、この倶知安町は宿泊税が定額ではなく、素泊まり料金の2パーセントを一律で徴収します。外国からの観光客が多く、1泊数十万円のコンドミニアムなども多いということで、高級施設の利用者がより多く負担する仕組みです。
また、福岡県は、県と同時に福岡市と北九州市が別々に宿泊税を設定しています。例えば、福岡市に泊まると二重に宿泊税がかかるのですが、他の自治体と比べて総額が特に高いわけではありません。
この他にも、主に観光産業を重視している静岡県熱海市や、沖縄県など、これから宿泊税の導入を考えている自治体もあります。熱海市は法定目的税という形で、温泉利用者に課税される「入湯税」を1泊150円徴収しているのですが、これに宿泊税も追加することを検討しています。
◆集めた宿泊税はどう使われる?
ユージ:この徴収した税は何に使われているのでしょうか?
塚越:東京都に関する答えになってしまいますが、都(東京都主税局)のホームページをみると、東京の魅力を高めて観光振興を図るために要する費用に充てられるとのことです。基本的には、観光施設を充実させて宿泊客増加につなげることなどが目的です。観光客が増えれば自治体の税収が増え、その資金を利用して、さらに観光力をつけるということです。
観光振興といっても、その方法はいくつかあります。例えば「その自治体ならではの歴史や伝統、文化を守ること」「観光客の受け入れ環境の充実を図ること」「観光地と市民生活を調和させ、持続可能な観光振興を図ること」などがあります。京都など、一部観光客が多すぎて市民生活との調和が難しいところなどは、対策費用の捻出として、宿泊税などが必要だということです。使い方はいろいろあります。
吉田:どうして、いま「宿泊税」を導入、または「導入を検討する」ところが増えているのですか?
塚越:やはりコロナの5類移行で経済が活性化し、訪日客が増えるなかで、観光振興を図るのが狙いです。とはいえ全国一律でないので、むしろ宿泊税のない別の地域にお客さんが流れる可能性もあります。宿泊税の導入ですぐに税収が上がるわけでもありません。
また、自治体がどう使うのかという点も気になります。不正というわけではなく、せっかく宿泊税として上がってきたお金を、どのように観光振興に使えるのか。それによって観光力がさらに上がることになりますし、使い方を間違えると魅力が半減しますので、良い意味で観光地の競争がさらに激化するとも考えられます。ここは自治体ごとに頑張っていただきたいです。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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7月27日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2023年8月4日(金) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世