青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMの番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。7月17日(日)の放送では、厚生労働省 子ども家庭局家庭福祉課室長の羽野嘉朗(はの・よしろう)さんと一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会(以下、CAN協会) 代表理事の持田恭子(もちだ・きょうこ)さんに、「ヤングケアラー」をテーマに話を伺いました。
(左から)青木源太、持田恭子さん、羽野嘉朗さん、足立梨花
◆大体クラスに1~2人はヤングケアラーの実態
ヤングケアラーとは、本来、大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的におこなっている子どものことです。子どもが家の手伝いをするのは普通のことと思われがちですが、ヤングケアラーは年齢などに見合わない重い“責任や負担”を負うことで、本来なら享受できたはずの勉強に励む時間、部活に打ち込む時間、将来に思いを巡らせる時間、友人との他愛ない時間などの“子どもとしての時間”を家事や家族の世話に費やされていることもあり、社会全体による支援が求められています。
2020年度から2021年度にかけて、小学6 年生、中学2年生、高校2年生、大学3年生を対象に実施した調査によると、世話をしている家族が「いる」と回答したのは概ね4~6%。大体クラスに1~2人は家族をケアする子どもがいると想定されます。
「『いる』と回答した子どもたちすべてがヤングケアラーというわけではないですが、なかには支援が必要なヤングケアラーが一定数いると思う」と羽野さん。しかし、家庭内のデリケートな問題であることなどから表面化しにくく、“ヤングケアラー”という概念の社会的認知度が低いため、「支援が必要な子どもがいても、子ども自身や周りの大人が気づきにくい状況」と現状を説明します。
◆誰かに相談しても…と諦めている子どもが多い
ここで、自身もヤングケアラーだったという持田さんに話を伺うことに。子どものころの環境について、「私は両親と兄との4人家族ですが、兄はダウン症と知的障がいがあって、私が小学生の頃から主に母の感情面のサポートをしていました。その後、母が入院しときには家事のすべてを私が担っていました。また、自ら率先して兄のお迎えをしたり、洋服の着脱の手助けをしたり、トイレにも行かせていました」と振り返ります。
そんな環境で小学生時代を過ごした持田さんですが、「当時は“世話をしている”という感覚はまったくなくて、“誰かに相談しよう”という発想すら浮かばなかった。ただ、友人に家族が不安定なときの話をすると、暗い印象を与えるので話を逸らされてしまい、逆に兄との楽しいときの話をしても、何が楽しいのかを分かってもらえなくて……結局、誰にも本音を打ち明けることはできなかった」と当時の胸中を吐露します。
そんな状況下で、これからどうなるのかという見通しも立たず、「将来のことを考えると“自分が家族を支え続けるのか”“家族から離れるのか”の究極の選択しか思い浮かばなくて、悲しい気持ちになっていました。それに、似たような体験をしている同世代の人が周りにいなかったので、気軽に打ち明けられる人が欲しかったし、“自分の気持ちを分かってもらえる人に会いたい”と、小学生の頃からずっと思っていました」と悲痛な思いを明かします。
現在は日ごろからヤングケアラーと接する機会が多い持田さんに、“子どもたちは自分の状況をどのように感じているのか"を尋ねてみると、「『自分が家族を支えるんだ』と責任感の強い子どももいれば、『家族を支えるのは当たり前のことだ』と家族や親戚から頼りにされすぎて苦しくなっている子どももいる。そして、“誰かに相談しても家庭の状況は変わらない”と諦めている子どもが多い」と言います。
その一方で、CAN協会が提供しているヤングケアラー向けのプログラムに参加した中高生について、「当初は“自分がケアをしている”と認識していなかった子が多いんですけど、家庭で日々やっていることを誰かに聞いてもらい、自分の状況を客観的に受け入れることで“自分も頑張ってケアをしてきたんだ”と徐々に認識することができるようになってきた」と話します。そして、「昔も今も変わらないということは、ヤングケアラーの支援がずっと見過ごされてきたということ」と指摘します。
◆ヤングケアラーと接するときに心がけておくべきことは?
持田さんも指摘していた“ヤングケアラーの支援”については、さまざまな課題を抱えているのが現状です。羽野さんによると、厚生労働省と文部科学省によって昨年立ち上げたプロジェクトチームでは、次のような課題が表面化したそうです。
・表面化しにくいヤングケアラーについて、実態把握や学校等関係機関での研修が十分ではなく、発見・把握も十分でないこと。
・支援策や支援につなぐための窓口が明確ではないこと。
・ヤングケアラーの社会的認知度が低く、支援が必要な子どもがいても、子ども自身や周囲の大人が気づくことができないこと。
こうした課題から、「政府では、関係機関が連携してヤングケアラーを早期に発見し、適切な支援につなげるための取り組みを進めているところ」と言います。
また、昔から祖父母や兄弟など家族の面倒を見る子どもはいたものの、近年は核家族化や共働き世帯の増加と同時に、高齢化や精神疾患を持つ人など、ケアを必要とする人が増えているとして、「こうしたさまざまな要因が絡み合い、子どもがケアを担う割合やその内容の程度が重くなってきているので、社会でサポートすることが必要になってきている」と声を大にします。
このような現状を受けて、CAN協会ではLINEや電話による個別相談をおこなっています。そこでは「アドバイスをするというよりは、子どもたちの話を最後まで丁寧に聞くようにしている。たとえ子どもたちが否定的なことを言ったとしても、諭すのではなく、いったんはそれをすべて受け止めて、“どうしてそう思ったの?”と深く掘り下げていくようにしている」と持田さん。
また、周りの大人たちができること、ヤングケアラーと接する際に心がけておくべきことについては、「子どもたちは、自分の話を自分事として捉えて最後まで聞いてほしいと願っています。『こうしたほうがいいよ』というアドバイスはあまり必要としていません。それよりも“最後まで話を聞いてほしい”“受け止めてほしい”と思っています。なので“子どもだからまだ分からないだろう”とは思わず、必要な情報や知識はしっかり教えてあげてほしい」と話しました。
最後に、羽野さんは「ヤングケアラーについて、一人ひとりが少しだけアンテナを高くしてもらいたい。また、もし身近にヤングケアラーがいたら少し気にかけていただいて、話に耳を傾けてもらうだけでも、きっと大きな助けになると思います」と呼びかけました。
足立は、自分がヤングケアラーだと気づいていない子どもたちが多い現状に驚いたようで、「“何とかしてあげたい”という気持ちになった。もし自分が気づけたのなら“最後まで話を聞いて受け止める”ということが、私たちにできることなんだと感じました」とコメント。
青木は、クラスに大体1~2人の割合で家族をケアする子どもがいるという現状に着目。「ヤングケアラーは家庭内のことなので、なかなか気づけない部分があると思うが“確実に悩んでいる子どもがいる”ということをまずは頭に入れておきたい」と話しました。
(左から)青木源太、足立梨花
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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/collection/