笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。2月18日(土)の放送は、
前回に引き続き、株式会社荏原製作所 執行役 情報通信統括部長兼CIOの小和瀬浩之(こわせ・ひろゆき)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)小和瀬浩之さん、笹川友里
◆小和瀬さんのこれまでのキャリアを回顧
小和瀬さんは、1986年に花王株式会社に入社。その後、2014年に株式会社LIXILに入社。CIO執行役員IT推進本部長、上席執行役員CIO兼情報システム本部長を経て、2018年に荏原製作所に入社。2020年3月に執行役 情報通信統括部長、2023年1月に執行役 情報通信統括部長 兼 CIOに就任しました。
四半世紀以上在籍した花王では、最終的には情報システム部門を統括するCIOのような役割を担うなど「私のベースは、基本的には花王(での経験)でできあがっていると思います」と話します。また、在籍していた頃の花王の印象として、「ITを使った経営がうまく、国内では時代とともにITをどんどん広域化していくような取り組みをおこなっていました」と振り返ります。
そんななかで小和瀬さんは、海外に向けて「ERPパッケージを使って世界中の業務の標準化をおこない、海外の状況が簡単に分かるようにして、一体運営を取り組んだことによって、ほとんどの国で、売上や収益が大幅に改善できました」と実績を語ります。
ERPとは、「Enterprise Resource Planning(企業資源計画)」の略で、簡単にいうと、経営資源を全体最適の観点で活用する概念のこと。「そういうことができるシステムが1990年代に出てきました」と説明します。
◆多くの日本企業が抱えている課題とは?
「日本の会社は、1990年代から20年近く、特に欧米のグローバル企業と比較するとITで差が開いてしまった」と小和瀬さん。その理由として、1990年代にインターネットやERPの仕組みの出現、コンピュータの処理能力が格段に向上したことで、欧米の企業は2000年前後から一気にグローバル一体運営に舵を切りました。その一方で、当時の日本の会社は、世界のなかでもトップランナーを走っており、「その成功体験が邪魔をしたのかもしれないが、同じ仕組みを入れても仕事を変えられなかった」と言います。
この欧米企業との20年の差について、小和瀬さんは「日本の多くの企業、特に製造業が基幹系の業務があまり進化していない」と指摘したうえで、「(その差を縮めようと)荏原は一生懸命に取り組んで改善しようとしていますが、そういう会社が非常に多いと見ており、(これ以上)ITで差をつけられてしまうと、本当に太刀打ちできなくなる。日本の製造業に残された時間は、思っているより少ないのではないか、というぐらい心配しています」と危機感を示します。
そして、「日本の製造業を何とかしなくては」という思いが、小和瀬さんが転職を決めた理由の1つだったとも。「日本の製造業、生産の強みの1つが“すり合わせ技術”ですが、アナログの世界ではとても有効なものの、デジタルの世界になってくると難しい。まだ日本のモノづくりに強みがあるうちに、DX(デジタルトランスフォーメーション)じゃないですけど、そこを何とかしていかないと大変なことになってしまう」と案じます。
また、デジタルによって「できる領域はどんどん広がっているし、今はIoT (Internet of Thingsの略、モノのインターネット)などでかなり細かくいろいろな状況が把握できるようになってきたので、そういうものをうまく使っている会社と使えていない会社で大きく差が出てしまう」と言及。
さらに、コロナ禍において「日本の会社はIT投資が二分化されていて、積極的にITに投資している会社とそうではない会社に分かれてきている」としたうえで、「大型のIT投資をしないと、できないことがたくさんあると思う」と私見を述べました。
◆デジタル社会に取り残されないために…
IT戦略について、小和瀬さんは「私から見ると、経営戦略の“One of them(そのなかのひとつ)”。経営戦略や事業戦略があって、IT戦略があるというのが非常に重要」と明言。しかしながら、「日本の会社は、経営戦略はあるがIT戦略がないなど、IT戦略と経営戦略、事業戦略が表裏一体になっていません」と指摘します。そうした自身の考えから、「荏原では、中期経営計画の経営戦略や事業戦略のなかにも、しっかりIT戦略を盛り込んでいる」と言います。
そして、経営戦略を実現するためにも、「デジタルの力を活用しなければならない。そういうことをIT戦略やデジタル戦略としてまとめることがとても重要です」と声を大にします。
最後に、小和瀬さんが思い描く少し先の未来の風景について、「デジタルは本当に恐ろしい勢いで指数関数的に進化しているので、我々の生活もどんどん便利になっていくと思います。例えば、自動運転技術もかなり確立されてきていますし、過疎地や車がないと生活できないような地域で、(高齢のため)運転できないという人にとって、その技術は重要だと考えています。そうした世界的な課題をどんどん解決するためにも、我々荏原も長期ビジョン「E-Vision2030」で目指す10年後にありたい姿をきちんと思い描いてやっていきたい」と力を込めていました。
次回2月25日(土)のゲストは、ヤンセンファーマ株式会社代表取締役社長・關口修平(せきぐち・しゅうへい)さんです。世界約150ヵ国、約4万人の社員を抱えるヤンセファーマの事業内容や医療の未来について、貴重な話が聞けるかも!?
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聴取期限 2023年2月26日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/