笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。3月29日(土)の放送は、
前回
に引き続き、味の素株式会社 執行役専務CDOの香田隆之(こうだ・たかゆき)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)香田隆之さん、笹川友里
香田さんは1989年に味の素株式会社に入社し、アミノ酸などの発酵技術を用いた素材製造を中心に技術畑を経験。その後、タイ味の素社アミノ酸工場長、北米技術センター長、アメリカ味の素社上席副社長、生産統括センター長を経て、2015年に執行役員生産戦略部長に就任し、2019年に常務執行役員としてDXに参画。2021年に執行役常務CXO兼DX推進部長、2022年4月より執行役専務としてCDOを兼任しグループ全体のDXを推進しています。
◆味の素社が実践している3つのDX
はじめに味の素社におけるDXの具体的な施策について伺うと、香田さんは3つの事例を挙げます。1つ目は“生産と販売のバランス”。自社在庫に加え、市中在庫を見える化することで、作りすぎることが少なくなり、廃棄量も減少し、消費者によりフレッシュな商品を届けることが可能になったと言います。
2つ目には、新たな事業として昨年にローンチした冷凍宅配弁当「あえて、®」を挙げ、「1人の食事となると、手を抜くというか妥協しがちです。そこで“あえて、自分のためにおいしくて栄養バランスのいいものを”というコンセプトでお弁当を出しました」と解説。認知度も徐々に拡大しているそうで、今後の展開に期待を寄せます。
3つ目に挙げたのは、味の素社の“研究所”。香田さんいわく、ここにデジタルを最も活用しているとのことで、「今の研究所は生成AIなどをすごく使っていて、例えば、マテリアルズ・インフォマティクス(機械学習などの技術を活用し、膨大なデータなどから新素材の材料開発を高速化・効率化する手法)のような、いろいろなものを調合してある性質のものを作り上げるときに“どう配合したらいいのか”というところにもAIを使っています。これによって、かなり時間を短縮できているので、先端的な使い方をしていると思っています」と力を込めます。
◆“競争”ではなく“共創”の時代に
味の素社では現在、他社と盛んに共同研究をおこなっているそうで、「これからの時代、1社だけではできることが限られてくると思います。我々が得意なものとパートナーが得意なものを組み合わせることで、1+1が3になるようなシナジーを生み出し、お互いが新しいところにジャンプできるようなことを目指しています」と香田さん。
これに、笹川が「最近では、多くの経営者の方が『これからの時代は共創しないと日本は世界と戦っていけない』とおっしゃっています。今の日本は、世界と比較すると元気がないと思う節も多いですが、これからは“世界と戦っていこう!”と、日本の大企業みんなで手を取り合って進めていく、そんな時代になりますか?」と質問すると、香田さんは「私はそうなっていくと思いますし、必然だと思います」と言い切ります。
その一方で、「今までは競合(する企業と)と一緒に仕事をするなんてあり得なかったと思いますが、競うポイントについては別々にやるものの、その他の部分は“一緒にやりましょう!”と。このやり方のほうが絶対に効率がいいのに、日本はそこがちょっと遅れている気がしますし、同じようなことをやっている日本の会社が多すぎますよね」と課題を指摘。
そのうえで、日本に元気がない理由を“我慢することに慣らされているから”とし、「そういう意味ではDXは皆さんの固定概念を変えて、マインドセットをチェンジするための1つのキーワードになっていると思います」と期待を寄せます。
また、DXで求められる人材について尋ねると、香田さんは大きく分けて2つあると言い、「1つは、今マーケティングなどをおこなっている人たち全員が“専門家に聞く”手前のレベルまでデジタルをしっかり理解しなければいけないと思います。そして2つ目は、社内の仕事を理解したうえで“こんなデジタル技術があれば、こういうふうに変えることができる”といったことを提案してくれる専門家が必要だと思います」と語ります。
しかし、そのような専門家はなかなか見つからないと言い、「例えば、外でキャリアを積んだ方を呼んできても、ウチの会社の強みやビジネスが分かっていないと、何をすればいいかを理解するまでに時間がかかってしまうかもしれません。だから、むしろ自社のなかで(デジタル分野に)センスのある人を見つけてデジタルの知識をつけてもらい、改革・変革をリードしてもらいたいと思っています」と未来を見据えます。
◆地球環境が“プラス”になるような研究を
最後に、味の素社が目指す未来の姿を伺うと、「我々のパーパス(志)は“アミノサイエンス®で人・社会・地球の Well-being に貢献する企業”です。『おいしい物を食べる』『誰かと一緒に食べる』といった人の幸せに既存のプロダクトで貢献していきたいと思っています」とコメント。
さらに、地球規模での未来についても言及し、「我々の事業において地球にかかる負荷を極力ゼロにすると同時に、我々の商品で地球環境がよりプラスになるようにしていく。例えば、農業も実は肥料などで地球に負荷をかけていますが、それを抑えるような再生農業みたいなことをおこなったり、“環境負荷を上げている”と言われている牛に食べさせるサプリメントを作って、その負荷を減らしたりすることを今やっています。我々のビジネス・商品を使っている方々が、間接的に地球に貢献できるようにしていきたい」と香田さん。
現在は“空気からアミノ酸を作る”という研究にも取り組んでいると言い、「例えば、空気中の二酸化炭素やチッ素など、最終的には日光かもしれませんが、そうしたエネルギーを使ってアミノ酸が作れないかをかなり長いスパンで研究しています」と話していました。
次回4月5日(土)の放送は、ニュートン・コンサルティング株式会社 代表取締役社長 副島一也さんをゲストに迎えてお届けします。デジタル社会の到来とともに取り組みが不可欠となったサイバーセキュリティに関するさまざまなお話を伺いします。
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3月29日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2025年4月6日(日) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里