ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
今回のテーマは「人間はもうAIに取って代わられている? アメリカZ世代のAI懐疑論その③」。AIをあたり前に活用している現状や、進化が止まらない生成AIの規制は必要かどうかなど、ラボのメンバーたちがAIについて思うことをディスカッションしていきました。
※写真はイメージです
◆AIは使っているけど、同時に「不安」?
「NY Future Lab」では数回にわたって、AIについてのトピックをお届けしています。前回の放送では、アメリカの学生の多くが、論文を書く際にAIを利用しているという話題が出ましたが、ラボのメンバーからは「AIのせいで私たちはみんなバカになっているのではないか?」という、なかなか厳しい意見も飛び出しました。
データによると、アメリカの大学生以上の9割近くがAIを使っており、半数近くは論文を書くのに利用しているとのこと。日本では同様のデータが存在しないため正確な数字を出すことは難しいですが、すでにレポート執筆や宿題などにAIを利用している学生もいるのではないでしょうか。
ということで、アメリカ人は論文や宿題以外にどのようにAIを利用しているのでしょうか。ラボのメンバーに聞いてみました。
ミクア:私の周りではたくさんの人がChatGPTと会話をしていて、アドバイスを求めたりしている。話し相手がいないときに、ただおしゃべりの相手になってもらっている人もいるみたい。
メアリー:うちの母はAIとよく話しているよ。母がAIに「元気?」ってたずねたら、AIがすごく親しげで、恋人にでも話しかけるような言い方で答えてきたんだ。なんだか異様な感じがしたけどね。
今、政府はAIを大量に導入するのと同時に、教育省を廃止しようとしているでしょう? それってなんだか、ちょっと陰謀のような気がするんだけど。今後AIの教師や、AIの役人が出てくるかもしれないって思うと、ちょっと怖いよ。
AIだけで何でもできる。もう誰も何も考えなくていい時代が来る。そうなったら、それでも私たちは人間と言えるのかな? 誰がそれをコントロールするの? それもAIがやるわけでしょう?
例えば歴史の解釈だってそうだよね。AI、またはAIをコントロールする人が、「私たちに教えたい、事実とは違う歴史」だけを教えるようになって、それを私たちが学ぶようになったらどうなる? それって怖くない?
これだけAIを活用しているアメリカZ世代の過半数が、AIに対して不安を抱いているというアンビバレントな状況が広がっており、なかでも「人間がAIに取って代わるのでは?」という恐れが大きいようです。
(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab
◆生成AIに規制は必要か?
「AIがすべてを考え実行し、人間は何も考えなくなる未来が来るのではないか」。こうした未来が現実になるかどうかは別として、報道では、「いずれは現在の職種の6割はAIに取って代わられる」「7人に1人は、AIの上司のもとで働くようになる」などのデータが溢れています。
ここまでは未来の予測ですが、アメリカの労働の14%は、すでにAIが代替しているというデータもあり、わずか5年後の2030年までに銀行窓口やスーパーのレジ係、秘書、会計士などの仕事はAIがこなすようになるという予測もあります。
逆にAIやロボットをコントロールするスキルを持つ人が圧倒的に不足する可能性が高く、そのためトランプ大統領は4月に小中高でのAI教育を拡充するための大統領令を発したほどです。
さらにラボのメンバーが警戒しているのは、止まらないAIの能力向上です。
ケンジュ:ChatGPTは危険だよ。もうシャットダウンしないといけない。もう戻れないところまで来ているんだ。(会話を聞いて、受け答えをしているものが)AIか人間かを見分けるためのチューリング・テストというものがあるんだけれど、ChatGPTはそれにパスしたんだよね。
ノエ:でもチューリング・テストって古くない?
ケンジュ:まあそうだけど、今でもチューリング・テストは相手が人かAIかどうか見分けるための判断に使われているよ。
メアリー:もう後戻りはできないと思うけれど、AIの規制は必要だと思う。今はまったく無制御状態で進んでいるからね。
ケンジュ:そこが問題なんだよ。最先端のスーパーAIやスーパーテクノロジーを支配するのは、ビリオネアと呼ばれる超億万長者だからね。彼らは規制を飛び越えて何でもできる。でも僕らのような一般人はそれに従うしかないんだ。だから僕らはこうしたテック・ビリオネアに支配されてしまうというわけだ。
シャンシャン:アメリカ以外の他の国でもAI開発が進んで、競争になったほうがいいよね。中国がDeepSeekというAIを開発したように。ChatGPTと違ってDeepSeekは100%無料だし、オープンソースで思考プロセスをすべて教えてくれる。
もしかしたら、日本からも新しいAIが出てくるかもしれないし、世界のさまざまな地域で、さまざまなタイプのAIが開発されるといいと思うな。
メアリー:そうなるといいね。少なくともアメリカだけの独占にならないほうがいい。
「人間以上の知能を持つAIは危険で、逆に人間が支配されてしまうかもしれない」という懸念は、すでに多くの人が語っていることです。AIに対する規制が進むヨーロッパに比べて、アメリカは国としてのコンセンサスがほとんどない状態で進んでいます。一方で、複数のアンケート調査によると、ほとんどのアメリカ人はAIの規制は必要と考えているようです。
いずれにせよ、AIにコントロールされる以前に、イーロン・マスクやマーク・ザッカーバーグといったテック・ビリオネアたちが強大な力を持ち、政治にも介入している今、AIを通じて彼らが世界を支配する時代はもう始まっています。
シェリーは「便利さと同時に私たちの想像をはるかに超えるリスク、それを直感的にかぎ取っているのもZ世代です。彼らがAIとどう付き合っていくのかが、私たちの未来を決めることになると言えそうです」と語り、話題を締めくくりました。
<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/