ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
今回のテーマは「米カルチャー討論会④日本人はスプーン?アメリカ人はフォーク? 日本人より日本に詳しいアメリカ人に、日本人高校生が直撃」。日本とアメリカにおける“議論”の文化の違いについて、ラボのメンバーが話し合いました。
※写真はイメージです
◆グローバルシーンでの自己主張が苦手な日本人
ニューヨークのZ世代に、日本の高校生を交えてお届けする新企画「日米カルチャー討論会」。4週目のテーマは、先週に引き続き「日本ってどんな国?」。日本人の高校生・憲人くんをゲストに迎え、さまざまなトークを繰り広げました。
憲人くんはカナダに留学した経験がありますが、そこで「自分の意見を伝えることが難しい」と感じたそう。語学力にかかわらず、日本人はなぜグローバルシーンにおいて自分の意見を言いづらい人が多いのかについて、話し合いました。
憲人:日本人はいつもシャイなんだよね。失礼にあたるから、自分の意見を言わないようにしている。日本人はルールに従うように教育されているから、今このラボでやっているみたいに、自分の意見を言う機会がないんだ。
だからグローバルなシーンに出たときにも、自分の意見をはっきりと言えないんだよ。それに気がついたのは、カナダに1年間留学したとき。僕自身はそれまで、みんなの前で自分を表現できると思っていたけれど、カナダではそんなにうまくできなかった。
ミクア:日本人は、集団にとって何がいいことなのかを常に考えているよね。そうやって育てられているんだと思う。無言のルールというか、みんながお互いに思慮深くいようとしている感じ。でもアメリカ、特にニューヨークでは、自分のことだけを考えて、目立とうとしたり、個性を出そうとしたりする人が多いよね。一方で日本では、周りに合わせているような感じがする。どちらも一長一短あるけどね。
それを一番感じたのは、日本に行ったとき。「わぁ、ここはすごいな、アメリカよりずっといい」って思ったんだ。それなのになぜ、日本を離れたがる人がたくさんいるんだろう? って。私の母(※ミクアの母は日本人)や母の友人たちみたいにね。
彼らになぜ日本を離れたのか聞いてみると、一番多かったのは「あなたはこうあるべきだと決めつけられることが多かった」「個性的だったり、ユニークであったりすることが好まれないのが辛かった」という答えだった。アメリカのほうが、ずっと自由でいられるんだって。
日本では個人より集団を優先させるように教育されるので、周りに合わせるために自分の意見をはっきり言わなくなる。それが自分らしさを表現できないことにつながり、生きづらさにつながっているのではないか……と、ミクアは推測していました。
それでは、アメリカやカナダなどでは、なぜ自分をハッキリと表現できる人が多いのでしょうか?
ノエ:アメリカにも全く考えていないような人はたくさんいるよ。でも、それでも批判的な思考が育つのは、結局のところ、アメリカはかなり多様な国で、個人主義に重点を置いているからだと思う。
そのために、さまざまな視点や要素がごちゃまぜに存在していて、そういうのをひとくくりにすることもできない。だからお互いがうまくやっていくためには、考えたりしっかり話し合ったりするしかないんだよ。
ミクア:自分の意思を通すためには、意見をはっきり言わないとどうにもならないこともあるよね。
日本に比べ、アメリカやカナダは個人主義で、しかも人種や文化が非常に多様なため、お互いに理解するためには、自分の意見をはっきり伝えて話し合っていくしかない。こうした意見に、シェリーは「まさにその通りで、そのために争いや軋轢も生まれるけれど、前向きな議論にも発展していくんです」とコメントしました。
(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab
◆日本人は「スプーン型」の性質?
それではアメリカやカナダと比べて、多様性が少ない日本で、日本人は議論を活発化させるべきなのでしょうか。それとも、今のままを保つべきなのでしょうか。これについても、ラボのメンバーはこう話し合いました。
ノエ:日本では、みんな視点が同じだから、アメリカみたいに議論する必要すらないようにも感じるけれど、どうなんだろう?
メアリー:つまり、日本は多様である必要はないってこと? これ以上社会をよくすることはない、今のままで十分だってこと?
ノエ:それは違うよ。日本がこのままでいいとは思っていないよ。だって日本人は常に、ある特定のやり方に従わなければならないとか、決まった考え方をしなければならないことに関して、不満を持っていると思う。
ヒカル:日本で目立とうとすると、他の仲間たちから嫌われるというのもあるよね。「出る杭は打たれる」だよ。
するとここで、ミクアがおもしろいことを言いだしました。
ミクア:ネットで誰かが言っていた話なんだけど、人は「スプーン」「フォーク」「ナイフ」の3つのカテゴリーに分類することができるって言っていたんだ。スプーン型の性格は、流れに身を任せ、自分の意見をあまり言わず、人の意見を待つような人。たとえ何かが気に障ったとしても、自分の意見を言わない。
そして、フォークは、自分から問題提起をすることはしないけど、より観察力があるような人。そしてナイフは、自分の気持ちをはっきり言う人。誰にどう思われようと気にしない。
日本はスプーンが多い気がする。自分がどう感じているのかがよくわからず、なんとなく流されて、その優しさや物静かさを利用されてしまうような人だよね。アメリカ人はフォークが多いかな。バカバカしいようで、なんとなく言い当てている話だよね。
「なぜ日本人はグローバルシーンで自分の意見を言うことが苦手なのか」という質問に答える形で進んだ今回の座談会。さまざまな意見が飛び出したものの、その理由については大きく「多様性」と「個人主義」という文化の違いが挙げられそうです。
シェリーは「次回はこの“多様性”にスポットを当てて、続きを話し合っていきたいと思います」とコメントし、話題を締めくくりました。
<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/