ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
今回のテーマは「AIのために人間はどんどんバカになる? アメリカZ世代のAI懐疑論その②」。ラボのメンバーたちが、生成AIの発展や日常での活用法、それに抱く不安などについて話し合いました。
※写真はイメージです
◆AIを使うと「スキルが下がる気がする」「自分がバカになっていく」
前回はSNSで「ジブリフィケーション(ジブリ風生成AI画像)」が流行したことをテーマにディスカッションを実施。アメリカ政府までがプロパガンダにジブリ風生成AI画像を利用するようになった現状について、ラボのメンバーからは強い批判が噴き出しました。
AIテクノロジーは加速度的に進んでいますが、成人したZ世代の過半数が、AIに不安を抱いているというデータもあります。デジタルネイティブのZ世代が、なぜAIにネガティブな感情を持つのでしょうか。まずは彼らが普段、どのように生成AIを使用しているのか聞いてみました。
シャンシャン:(生成AIは)日常生活ではすごく役立っているとは思うよ。ChatGPTに辞表を書いてもらった人もいるんだって。AIが文面を全部考えてくれるからね。でも、AIが私自身にも影響を与えているんだって気づいたんだ。大学に入って以来、AIは勉強の助けになってくれたし、難しい概念をわかりやすく説明してもらうためにAIをたくさん使ってきた。AIが私の代わりに考えてくれるから、すごく楽になったんだ。
でもおかげで、自分で何も考えられなくなったような気がする。AIが全部考えてくれるからね。どんどん自分がバカになるような気もするんだ。これっていいことではないよね。
私ほど勉強に苦労していなくても、便利さを求めてどれだけの人がAIに頼っているか想像できる? 小論文なんてもう誰もまともに書いていないよ。かつてはみんな他人にお金を払って、論文でもなんでも書いてもらっていた。では今はAIに月額利用料を払うだけ。「AIチェッカーがある」なんて言っているけれど、そんなの存在しない、ただのでたらめだよ。
ミクア:AIを使わないと自分ではメールが書けないと思うから、自分のスキルが下がっているような気がする。でも、本当はできるのに、ただ怠けるようになっただけなんだよね。AIは人々をもっと怠惰にすると思う。
それに、自分の写真をAIに取り込んで自分のアニメーションを作ったりしている人もいるけど、ありえないと思う。私はそこまで信用できない。なんかアニメが正確すぎて怖いんだよね。だから自分の写真や情報を入力するのは、信用できないからやらない。
「小論文はAIに書いてもらっている」「自分で考えられなくなった、頭が悪くなっていく気がする」「前よりも怠けるようになった気がする」などの意見が飛び出した、今回の話し合い。まさに彼らが言っていることは、今年発表された調査でも明らかになっています。
それによると、AIを頻繁に使用するユーザーは、問題解決や意思決定をAIに依存する傾向があるとのこと。また時間の経過とともに、情報を批判的に評価したり微妙な結論を導き出したりする能力の低下を示しました。しかも使用頻度が高い若い世代ほど、この傾向が強いようです。
(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab
◆日常で使ってはいるけれど… Z世代が抱くAIへの不安
それではAIが賢くなればなるほど、私たち人間は頭が悪くなってしまうのでしょうか。ラボのメンバーたちは次のように話します。
メアリー:まさにそう思う。私の仕事は自分でコンピュータープログラムを書かなければならないこともあるんだけど、AIにやり方を聞くほうがずっと簡単。今自分の頭のなかにあることを、そのまま形にできるのが面白いかな。例えば、「ビデオゲームのコードを書きたいんだけど、どうやったらいいのかわからない」みたいなときに、AIが教えてくれて一緒に作ってくれたり、どういうコードを書けばいいのか手順を教えてくれたりする。
でも、どうなんだろう。何かを達成した後に得られるプライドみたいなものを、もし失ってしまったら……。もし私がゲームを作ったとして、その9割はAIが作ったもので、自分が努力したり学んだり方法を発見したわけじゃなかったら、人間らしい達成感ってあるんだろうか? って思うよ。
ミクア:私もAIは使っているけど、(大量の電力を消費するため)環境に悪いと知ってからは、できるだけ使わないようにしている。正直、まったくAIを使わないのは難しいことだけど、なるべく使わないように意識したとしても、あらゆる製品にAIが組み込まれつつあるから、使わないって選択はとても難しいと思う。
でもAIを使うとすごく罪悪感があるよ。(データセンターでは)電気もたくさん使うし、コンピューターは熱を発生させるから、それを冷やすために水もたくさん消費するからね。そう考えると、もうそこまで使えなくなってしまうんだ。
AIを利用することで、人として考える力や意思決定能力、達成感までも失われていく懸念。そして、環境に対する負荷への懸念も、この世代ならではのものではないでしょうか。
さらに彼らの最大の不安は、AIが人間に取って代わる未来かもしれません。特に、大卒の仕事のほとんどはAIがやるようになるから、大学に行く意味はないという考え方もあります。AIが自ら意識を持ち、AIと人間の見分けがつかなくなる未来はもうやってきているのかも……。シェリーは「彼らが抱えるこうした不安について、次回は彼らの本音と共に検証します」とコメントし、話題を締めくくりました。
<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/