笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。5月16日(土)の放送は、三井不動産株式会社 執行役員 DX本部長の宇都宮幹子(うつのみや・みきこ)さんが登場。社内でのAI活用、デジタル・AIが変える不動産と都市の未来について話を伺いました。
左から:宇都宮幹子さん、笹川友里
宇都宮幹子さんは、早稲田大学卒業後、1991年に三井不動産へ入社。総合職として住宅開発や法人・個人向けの提案営業など、デベロッパー業務の経験を重ねるとともに、IT部門でのシステム開発プロジェクトマネジメントやホテル運営会社への出向などを経て、2021年 執行役員に就任。2023年にDX本部副本部長、2025年からDX本部長を務めています。
◆三井不動産が進めるAI活用
三井不動産では、2025年10月に全社員約2,000人を対象に「ChatGPT Enterprise」を導入しました。ChatGPT Enterpriseは、企業向けの生成AIサービスです。一般的な要約や翻訳にとどまらず、情報漏えいを防ぐセキュリティ環境が整えられているため、安心して社内データやドキュメントをインプットし、ユーザーの業務内容に合わせて、独自のAI環境を構築できるのが特徴です。宇都宮さんは、導入後の利用率が順調に伸びていったことにも触れ、「『こういう具体的なユースケースがあります』と周知させながら運用したことで、わりと展開をスムーズに進めることができました」と振り返ります。
使い方の一例として、住宅販売の営業現場において、顧客の了承を得たうえで録音した会話をChatGPT Enterprise に入力します。すると、内容の要約や営業記録の作成だけでなく、「営業のこのトークが良かった」「これが足りていません」といった分析をしてくれます。顧客の反応や評価も整理されるため、チーム内でも共有しやすくなります。宇都宮さんは「営業効率も上がりますし、何より(営業記録があることで)お客さまが何回も(同じことを)言わなくても、営業担当者が理解できるといったメリットもあります」と話します。
さらに、OutlookカレンダーとChatGPTを連携した活用法も紹介。AIが今後(商談などで)会う相手を一覧化し、初対面の人物については公開プロフィールなども整理してくれるそうで、こうした複数のサービスを組み合わせたAI活用は「これからどんどん増えてくると思います」と期待を寄せます。
◆現場に根付かせる「AI推進リーダー」制度
三井不動産では、全社85部門に「AI推進リーダー」を約150人配置し、現場でのAI活用を広げる体制づくりを進めました。宇都宮さんは、ChatGPT Enterprise導入当初は、社内に十分な知識やノウハウがなかったため、先進企業へのヒアリングをおこなったり、さまざまな講演に参加してみたりしたそうで、そのなかで「ボトムアップでやらないと現場に根付かない」という考えに辿り着いたと言います。
そこで、AIを理解し、実際に使いながら、その活用方法を社内へ広げていくAI推進リーダーを、各部門から若手を中心に選出しました。「まず自分自身が『こうしたAI活用が便利だった』『こうしたカスタムを使っている』といったことを体験し、それを現場に共有することで、みんなにも使ってもらう」と意図を説明します。加えて、部門ごとの利用率を見ながら、低い部門には「もっと使ってほしい」と声をかけるなど、利用促進の役割も担っています。
ここで笹川が、AI活用を全社規模で進める背景について質問すると、宇都宮さんは「不動産業界のデベロッパーとして、以前からデジタル化に積極的に取り組みたいという経営方針を掲げていました」と語ります。一方で、生成AIをはじめとする技術の進化は非常に速く、「半年や1年単位でどんどん切り替えていかないと、世の中に追いつけないのは、すごく実感しています」と話します。
◆変わりゆく人間とAIの役割
番組では「人間とAIの役割」についても話が及びました。笹川が「少し前までは『“問いを立てること”が人間の仕事』と言っていた気がするんですけど、また時代が変わりましたか?」と疑問を投げかけます。
これに対し、宇都宮さんは、AIの進化によって、人とAIの関係性そのものが変わり始めていると言いつつも、「まだまだ全部のことをAIがやってくれるわけではありません。AIにサポートされた仕事のプロセスのなかで意思決定したり、複数の選択肢から選ぶといったことは、人間の機能としてまだまだ残ると思います」と言及。AIを単なるツールではなく“組織のメンバーの1人”として、ワンチームで仕事をしていく感覚が必要だと強調します。
最後に、番組恒例の質問「デジタル・AIが変える未来」を伺うと、宇都宮さんは、まず三井不動産の未来について、「不動産のリアルの価値をいかに最大化できるかが私たちのミッションで、それをより多くのお客さまに届けたい」と力を込めます。
一方、今や当たり前になっているようなデジタル体験でも、高齢者や身体的な事情があったり、遠隔地に住んでいたりして、体験しづらい環境にいる人もいることを指摘し、「デジタルの力によって、誰もが同じように体験できる社会になればいいと思っています。そして、不動産もそのための1つのアイテムとして提供できれば、世の中はさらに良くなると思います」と語りました。
次回5月23日(土)の放送は、栗田工業株式会社 アドバンスドイノベーション本部長の水野誠さんをゲストに迎えてお届けします。半導体や液晶など、最先端産業の製造に欠かせない「超純水」を手がける、水処理の国内最大手・栗田工業。水×デジタルが拓く未来の情景とは?
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/