モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。4月27日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「教員免許を持たない社会人教員」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
東京都教育委員会は4月25日(火)、今月1日(土)から都内の小学校で1年生の担任をしていた男性が、教員免許を取得できていなかったことがわかったため、採用を取り消したことを発表。男性は「免許取得見込み者」として採用されたものの、12日(水)に区の教育委員会が確認したところ、大学の履修漏れにより必要単位が取れておらず、教員免許が取得できていないことが判明しました。
◆「社会人経験者」の教員採用が増えている理由とは?
吉田:このケースでは「免許取得見込み者」として採用された人物が、実は「免許を取得できていなかった」という事例です。一方で、全国の教育委員会では現在、教員免許を持たない「社会人経験者」の教員採用が増えているそうです。
ユージ:教員免許を持たない社会人を“先生に採用”する例が増えているのでしょうか?
塚越:民間企業で一定期間働く、あるいは特殊な技能を持つ社会人経験者を対象に、各都道府県が教員採用試験の受験資格を与えています。これに合格すると「特別免許状」という免許状を与えられ、教壇に立てるようになります。
普通は、大学などで単位を取ったりしないと得られない「教員免許(=普通免許状)」がありますが、これがなくても教員採用試験が受けられます。さらに、合格して「特別免許状」を取得すれば、教壇に立つことができます。
この「特別免許状」は、“定められた都道府県だけでしか教壇に立てない”というものになっています。こういった「特別免許状」を取る社会人の方が増えています。
例えば、広島県は2012年度の教員採用試験から、教員免許のない社会人の選考を「工業」と「看護」の科目で始め、今年度からは「福祉」の科目でも対象を拡大しました。
また、同じように今年度から、島根県では高校の「情報科」を、鳥取県も中学の「技術」の科目を追加して、各地で社会人を採用しようとしています。
吉田:その理由は単純に教員の数が不足している、ということでしょうか?
塚越:はい。まず、定年退職する方が増えている一方で、学校の長時間労働が社会問題化したこともあり、教員を志望する若者が減少する傾向にあり、人材不足になっています。
例えば、文部科学省が2021年に調査したところ、公立の小中高校と特別支援学校で教員が2,065人足りず、全体の4.8%に当たる1,591校で計画通りの教員配置ができていなかったことがありました。
また、文部科学省が2022年11月に公表したデータによると、2022年度から高校で共通必履修科目となった「情報科」の担当教員は、昨年5月時点で16.3%となる796人が「情報免許を持っていない」ことがわかりました。
これらのケースでは、別の教科の免許を持っている人が臨時で情報科目を教えることで対応しましたが、「それはよくない」ということで、文部科学省も「情報免許を持つ専任教員の採用を後押ししよう」としているのですが、実際は難しいということです。なので、そういうこともあって、「特別免除状」を持つ人、つまり社会人から採用しようという動きを考えている流れがあります。
◆教員不足を解消へ…どんな対応がされている?
塚越:例えば、山口県は今年「教職チャレンジサポート特別選考」という制度を新設しました。これは、大学や短大を卒業したけど教員免許を持たない人に向けて、「この選考に受かると教員免許を取得するための学費をサポートします」という取り組みです。通信などで教員免許を取るためのお金を年間26万円を上限に補助するということで、教員のなり手を増やそうとしています。
また、文部科学省は、2025年度から最短2年で小中学校の教員免許を取得できる教職課程を4年制大学に設置する方針も作っていて、学校の先生を増やしていこうと、さまざまなサポートをしています。
◆特別免許状制度の活用…現場の声は?
塚越:いろいろな声があり、なかには批判もあります。例えば「特別免許状」は学校教育の多様化を目的に、1988年に創設されています。つまり「いろいろな人たちを増やしていこう!」「社会人を経験した人たちにも学校の先生をやってもらおう!」という目的があるのですが、現状は「“教員不足の穴埋め”で採用する動きになっていないか?」「趣旨が違うのでは?」と批判されているところもあります。
また、さまざまな対応はされているのですが、やはり根本的な要因は、教職員のなり手が少ないということ。その背景には、先生(の仕事が)が非常に激務だということが挙げられます。授業以外にも部活の顧問を務めるなど、非常に忙しい。僕の友達にも高校教員がいますが、「本当に忙しい…」と言っています。
いろいろな先生を増やして、今働いている先生方の負担を減らすことも大事ですし、やはり待遇をよくするように国が動いて改善されていけば、自然と教員のなり手が増えていくのかなと。その辺も考えていただきたいなと思いますね。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/one/