藤木直人、高見侑里がパーソナリティをつとめ、アスリートやスポーツに情熱を注ぐ人たちの挑戦、勝利にかける熱いビートに肉迫するTOKYO FMの番組「SPORTS BEAT supported by TOYOTA」。7月16日(土)の放送では、柔道家の野村忠宏(のむら・ただひろ)さんをゲストに迎えて、お届けしました。
(左から)藤木直人、野村忠宏さん、高見侑里
野村さんは1974年生まれ、奈良県出身の47歳。1996年のアトランタオリンピックを皮切りに、シドニーオリンピック、アテネオリンピックと3大会連続で柔道金メダルを獲得。オリンピック3連覇は柔道史上初で、全競技を通じてアジア人初の偉業となりました。そして、2015年に40歳で現役を引退。現在は国内外にて柔道の普及活動に尽力しています。
◆「野村道場」を通して子どもたちに伝えたいこと
藤木:野村さんは「野村道場」という柔道イベントを開催されているんですよね?
野村:そうなんです。引退してからスーツを着る機会が多くなったというか、オリンピックやスポーツのキャスター、講演活動などの場が多くなって、柔道着を着る機会がめっきり減ってしまったんですよ。
やっぱり自分自身の軸は柔道にある。そのなかで、どういう形なら柔道に貢献、恩返しができるかと考えたときに、“柔道界の未来の宝である子どもたちに何かを伝えたい”という思いに至りまして、2019年から自分でスポンサーを集めて「野村道場」を開催しています。
藤木:生徒たちはどのように集めるんですか?
野村:インターネットを使って、一般応募で集めます。2019年9月に第1回目の応募をおこなったんですけど、そのときは200人の子どもたちに集まってもらって、阿部一二三(あべ・ひふみ)選手と阿部詩(あべ・うた)選手をゲストに迎えて開催しました。
藤木:毎回応募が殺到すると思いますが、誰でも参加できるんですか?
野村:今は小学3年生~6年生限定で募集しています。ありがたいのは、今はYouTubeとかで過去の映像を観られるじゃないですか。生で私の試合を見たことはないけれど「あの背負い投げのすごい人だ!」とか、そういう感じで自分を見てくれるから、すごくありがたいです。
ただやっぱり、子どもたちにとって一番うれしいのは“現役のチャンピオンと会うこと”なので、「野村道場」では現役のチャンピオンに来てもらって、子どもたちと接する時間をしっかりつくっています。
◆「誰のために柔道をしているの?」
藤木:そして、柔道界でちょっとびっくりするニュースがありました。
野村:全日本柔道連盟が主催する小学生の全国大会(「全国小学生学年別柔道大会」)が廃止になりました。これはいろいろ問題がありまして、まず2004年のアテネオリンピックから2021年までの17年間で、小学生の柔道人口、競技人口が約46%も減少しているんですよ。
藤木:リオデジャネイロや東京のオリンピックでの活躍を考えると、柔道を始める子どもが増えそうな気もしますが。
野村:そうですね。東京オリンピックのときは、選手たちの活躍で16年ぶりに登録人口は増えました。ただ、小学生、低年齢層に関しては減少し続けているんですよね。自分は、全日本柔道連盟主催の全国大会が廃止になることがポジティブ(な施策)とは思っていないです。ただ“大会のあり方”というものを考える、いい意味での提言にはなっているのかなと。
ニュースでもいろいろ報道されましたし“試合で負ける悔しさを知る”“試合で勝つ喜びを知る”“緊張する場面で子どもなりに自分の力を出し切る”ということを経験する場は、やっぱり練習じゃなくて試合なんですよね。その“試合の場を提供する”ということは本当に意味のあることだと思うんですけど、やはり“試合のあり方”ですよね。
例えば、小学5年生の場合だと「45kg以下級」「45kg以上級」の2階級しかないんです。なので、50kgの子だと5kg減量して「45kg以下級」に出るほうが有利なんですよね。
藤木:(そのために)小学生の頃から減量に取り組んでしまう子もいると。
野村:そうなんですよ。小学生でも、勝つために親や指導者が減量をさせたり、試合に負けた子に対して「なんで勝てないんだ」「あのときになんであの技を出せないんだ」とか叱ったりして、“結果”だけにフォーカスしてしまう。
高見:勝利至上主義ですよね。
野村:だから、それがどうなのかという話ですよね。中学生以上になったら7階級あるわけなんですよ。でも、体の軸ができていない小学生が、2階級という大雑把な階級で試合をおこなっていたのも1つの問題ですし、柔道には教育的な意味もある。
“強くなる”というのも1つの魅力だけど、柔道というのは相手に対して感謝を持って敬意を表する。礼に始まり礼に終わる。そういう“柔道の精神”というものを伝えることもすごく大事なんです。
対戦相手の子どもにブーイングをしたり、捌いてくれている先生への批判といったものが小学生の大会でも多く見られたので、“これはちょっと問題だな”というのは、私も以前から感じていました。
藤木:“負けず嫌い”というのは決して悪いことではないでしょうけど、小学生のときに目先の勝ち負けに(親の影響で)こだわりすぎてしまうと、マイナスの面も大きそうですよね。
野村:結局“誰のために戦っているの?”“誰のために柔道をしているの?”ということになってきますよね。子どもたちのなかには「親の顔を見ながら……」「先生に怒られるのが怖いから……」と、柔道をしている意味をちょっと見失っている部分と柔道の本当の素晴らしさ、魅力を感じられていない子どもたちが多いんじゃないかなと。
そういう部分でも、私自身が子どもたちに対して、そして子どもたちを通して後ろにいる親御さんや指導者のみなさんに伝えたいものがある……ということも「野村道場」を始めた1つの大きなきっかけではありますね。
次回7月23日(土)の放送は、日本パルクール界の絶対的エース・永井音寧(ながい・ねね)選手をゲストに迎えてお届けします。どうぞお楽しみに!
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聴取期限 2022年7月24日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:SPORTS BEAT supported by TOYOTA
放送日時:毎週土曜 10:00~10:50
パーソナリティ:藤木直人、高見侑里
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/beat/