脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。
TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
今回の配信では、「止まらない物欲を抑える方法」について脳科学的視点で解説しました。
パーソナリティの茂木健一郎
<リスナーからの相談>
茂木さんに質問です。「物欲がある人」と「物欲がない人」って何が違うのでしょうか?
私はストレスがたまると物欲が止まらなくなります。「セール」などのワードを目にすると、さらに物欲が止まらなくなります。
また、今はネットで手軽に欲しいものがすぐ手に入るので不要なものまで買ってしまい、気付いたときには後悔……ということが多々あります。
「ネットで検索しない」に越したことはありませんが、最近はSNSのタイムラインなどに“関連広告”が紛れていて、目に入ることもあるのでいろいろと大変です。この止まらぬ物欲を止める方法はあるのでしょうか?
<茂木の回答>
つい買ってしまうのは、神経伝達物質「ドーパミン」のせいなんです。(喜びや快楽、意欲をもたらす働きがある)脳のドーパミンが出る前にやっていた行動を強化する、「強化学習」というものがあります。
相談者さんの場合、物を買うとうれしくなってドーパミンが出る。そうすると「物を買う」という行動が「強化」されてしまうんです。それで、買い物依存症みたいになってしまう方もいます。
これを防ぐための方法は、ドーパミンのバイパスを作るしかありません。現在の相談者さんの脳のなかでは、「買い物をする」と「ドーパミンが出る」という回路ができています。この回路は別に悪いものではありません。実際、自分にとって必要なものを買ったらうれしいですからね。僕も新しいコンピューターなどを買うと、ものすごくうれしくなります。
うれしくなることは必要なことなので、そのドーパミンの出る原因となる行動を増やしていくことが良いのかなと思います。たとえば、僕の場合は「人と会って話す」「ランニングをする」「自分の好きな本を読む」「研究で新しいことを考える」「映画を観る」。いろんな行動をすることでドーパミンが出るので、1つのことだけを強化するのではなく、今の時代に必要な多様性、これが自然と脳のなかでできてくるのです。ですので、相談者さんが買い物をしているときのワクワク感を、他の物事でも持てるようにできたら良いのかなと思います。
ちなみに、私の周りでは最近「メルカリ」のようなフリーマーケットアプリなどで自宅の不要なものを売ることに喜びを感じて、ドーパミンを出している人も意外といます。自分の脳が喜ぶネタを増やして楽しんでいるようです。もしよろしければ相談者さんも、買ったけど使わないものなどをメルカリなどで売ってみてはいかがでしょうか?
あとおそらく購入金額より少し安く出品することになると思うので、そうすると「あら……いくらか損しちゃったわ」って思うと、「もうこんなに買うのは止めようかな」「必要なものだけ買おうかな」という思考になっていくかもしれません。
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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎