モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。9月13日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『令和版デジタル行財政改革』で司令塔を設置 その狙いは?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
岸田文雄首相は、行政の効率化を目指す「令和版デジタル行財政改革」の推進に向け、司令塔となる新たな会議体を設置する方針を固めました。9月13日(水)におこなわれた内閣改造で「デジタル行財政改革」の担当大臣を新たに設け、河野太郎デジタル大臣が兼務することも発表されました。
◆「令和版デジタル行財政改革」とは?
吉田:塚越さん、「令和版デジタル行財政改革」とは何なのか、改めて教えてください。
塚越:簡単に言えば、「国と地方の行政の効率化を、デジタル技術を使っておこなおう」というものです。政府・与党の関係者によれば、新たな組織を内閣官房に設置する予定で、50人規模で人選も進んでいるとのことです。
内閣官房は内閣、特に総理大臣を補佐する機関でもあるので、この新たな組織を総理直轄の司令塔とアピールすることで、支持率をアップさせるのが狙いと見られています。
吉田:「デジタル行財政改革」、どのような狙いがあるのでしょうか?
塚越:コロナ禍における国の対応において、特にデジタル領域に多くの問題があったということが背景にあります。給付金の支給に遅れが出たり、保健所業務もFAXを利用していたことなどが問題になっていました。こうした一連の問題について、岸田首相自身が「デジタル敗戦」という言葉を口にしたことも印象的です。
すでに今年6月の記者会見で岸田首相は、国がトップダウンで地方に命令するのではなく、国がデジタルによって地方を支える仕組みを目指すといった考えを示していました。「デジタル行財政改革」を内閣改造の旗印にすることも1つの狙いだと言われています。
◆デジタル基盤の共通化を狙う
ユージ:「デジタル行財政改革」とは、どのようなことが想定されているのでしょうか?
塚越:報道されているところでは、国と地方自治体のデジタル基盤を共通化させるとのことです。介護や教育、子育てなどの分野で人工知能を活用して、個々のニーズにあったサービスの迅速化を目指します。
具体的には、コロナの給付金やマイナンバーといった、国が実施する政策の問い合わせに地方自治体が忙殺されたので、全国一律の制度の対応は、国が人工知能を利用したチャットボット(=自動対話システム)などを導入するとのことです。自治体の負担を軽減して、自治体は本来の業務に集中してもらうという狙いです。担当閣僚を中心に、具体的な施策の検討を進める予定とのことです。
こうしたことは重要ですが、「デジタル基盤の共通化」という構想に対して、検討されているのが「チャットボットの導入」とは、影響があまりにも限定的かなと個人的には思います。地方に負担をかけないようにするということですが、それくらいなら既存の組織でもできるのではないか、ということが気になります。
◆すでに存在する「デジタル庁」…新たに組織を作る意義は?
ユージ:「令和版デジタル行財政改革」、塚越さんはどのようにご覧になっていますか?
塚越:聞いているリスナーさんも感じたと思いますが、日本にはすでにデジタル社会の実現に向けた「デジタル庁」があるわけです。他にも「デジタル田園都市国家構想」という、デジタル技術で地方と都市との格差を縮め、少子高齢化や過疎化を乗り越えようとする方針を政府が2021年に出しており、このための会議が内閣官房に設置されています。新しく組織をつくる必要が本当にあるのか? ということは問題です。
今回の組織は50人規模の人材で構成されるということですが、新たに人を雇うのであれ、今の省庁から併任するのであれ、結局はお金と時間、書類が増えるだけではないか、という疑念があります。同時に、本気でシステムを変えるならその程度の人数では話にならないかなと思います。
現時点で報道されているのは「チャットボットを作る」といった程度です。もし今回の組織が本当に必要なら、それ相応の理由と内容を岸田首相自身が説明する必要がありますが、現状ではふわっとしています。岸田政権の目玉政策という割には内容が不透明過ぎるので、内容はみんなでチェックしていかないといけません。
そして、担当は河野大臣ですが、彼はデジタル庁でマイナンバーの普及対応を急ぎ過ぎて問題になりました。この組織ではどう振る舞うのかを見ていく必要があるのではないでしょうか。
ユージ:デジタル庁と、今回の組織は別のものなんですよね?
塚越:はい。今回は内閣官房にできるということです。デジタル庁とはどのくらい連携するのか、この組織が本当に必要なのか、ということはこれからなので、我々はきっちり見ていく必要があると思います。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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9月13日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年9月21日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世