作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。
5月25日(日)の放送は「村上RADIO~ワルツが聴きたい~」をオンエア。今回は55分まるごとワルツ特集! 村上さんが自宅のレコード棚から持参したアメリカのワルツ、ジャズ・ワルツ、日本語で歌われるワルツなど、幅広いジャンルの選りすぐりのワルツをオンエアしました。
この記事では前半2曲について語ったパートを紹介します。

こんばんは、村上春樹です。村上RADIO、今夜の番組タイトルは「ワルツが聴きたい」。そう、まるごとワルツの特集です。これというはっきりした理由はないのですが、何かのきっかけで突然ワルツのことが気になってきて、うちにあるワルツのレコードをあれこれ集めてみました。うーん、こうして探してみると、ワルツの曲って、けっこうあるものですね。これまでとくに意識したことはなかったのですが……。初夏の宵、流れるようなワルツのリズムにお付き合いください。
<オープニング曲>
Donald Fagen「Madison Time」
ワルツといえばまず頭に浮かぶのが、ヨハン・シュトラウスを代表格とするウィンナ・ワルツですね。毎年、新年にたっぷりと聴かされます。小澤征爾さんに言わせると、「あのリズム、どういうわけかウィーンの人じゃないとちゃんと出せないんだよね」ということでした。「ワルツのリズムが、あいつらの血管に生まれつき流れてるんじゃねえかなぁ」と、まあそういう口調でおっしゃっておられました。
僕はウィーンというと、まずラム入りコーヒーを真っ先に思い出します。カフェミットルム。これ、寒い季節に飲むとカフェミットルムまるんですよね。冬のウィーンでカフェに入って、こればっかり飲んでいました。ワルツとはあまり関係ない話ですけど。
◆Floyd Cramer「Tennessee Waltz」
◆Matthews Southern Comfort「Brand New Tennessee Waltz」
まずアメリカ製のワルツから行きましょう。なんといっても有名な「テネシー・ワルツ」。その昔パティ・ペイジの歌で大ヒットしました。ある夜、ダンス・パーティーでたまたま出会った親友に恋人を紹介して、その2人は「テネシー・ワルツ」にあわせて踊ります。そして恋人は、その親友とあっという間に恋に落ちてしまいます。気の毒ですね。親友と恋人を同時に失っちゃったわけですから。
今日はフロイド・クレーマーのピアノで聴いてください。ナッシュヴィルを本拠地にしていたカントリー音楽の人ですが、独特のピアノ・スタイルを持っていて、味わい深い演奏になっています。それからマシューズ・サザン・コンフォートが歌います。「ブランド・ニュー・テネシー・ワルツ(最新版テネシー・ワルツ)」。作曲したのはジェシー・ウィンチェスターです。マシューズ・サザン・コンフォート、英国のフォークロック歌手、イアン・マシューズが1969年に結成したバンドですね。「ウッドストック」を歌ってヒットさせました。
2曲続けて聴いてください。「Tennessee Waltz」そして「Brand New Tennessee Waltz」。
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5月25日(日)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 6月2日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~ワルツが聴きたい~
放送日時:5月25日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/