モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。今回の放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「学校の教室に防犯カメラの設置を求める声…そのメリット・デメリットは?」。情報社会学が専門の学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんに解説していただきました。
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◆教室内の防犯カメラ、設置の是非は…
教員による児童生徒へのわいせつ事案などが全国で相次いで発覚。教室に防犯カメラの設置を求める意見が、一部で出ています。
吉田:塚越さん、まずは「教室に防犯カメラの設置を求める意見」について詳しく教えてください。
塚越:まず全国の学校の6割以上で防犯カメラが設置されているのですが、これは基本的に入口などの敷地内に設置されているものを指します。不審者の侵入防止の観点から設置されているものですね。今回はそれに加えて、現状ではほとんど事例のない“教室内に”カメラを設置するかどうかという話題です。
この問題は、来年から施行される「こども性暴力防止法」の運用に向けた、こども家庭庁の会議のなかで議論になりました。この会議では、カメラ設置は有効な部分もあるとする意見の一方、プライバシー保護などの観点から、一律にすべての場所での設置がいいわけではないといった意見もありました。
7月1日の記者会見で阿部俊子文部科学大臣は、子どもの日常生活がすべて録画されることの是非を踏まえると、教室への設置を推奨するにはさまざまな議論があると、慎重な姿勢を見せています。阿部文部科学大臣は、複数の人の目が届く場所では性被害等の発生は想定し難く、一方でそうではない児童と1対1になるような環境でのカメラ活用は考えられるとしています。
◆メリットも多い一方、プライバシーの懸念も
吉田:「教室に防犯カメラを設置すること」には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
塚越:いろいろな事件があったので、設置したほうがいいと思う方もいらっしゃると思いますが、けっこう複雑な問題かと思います。
まずメリット1つ目は、生徒によるいじめやいたずらなどの防止。2つ目は、教師側の問題行動の抑止。3つ目は、生徒や教師の間でトラブルが起きたときに証拠になるということ。4つ目が、教室への不審者の侵入を防止する観点です。大枠だとこうした点が挙げられます。
一方で、デメリット1つ目が、生徒のプライバシー侵害の恐れがある点です。カメラにストレスを感じる生徒もいるでしょう。2つ目が、カメラのデータ管理の必要性です。流出などがあると、大きなプライバシー問題になります。3つ目が、公立学校の場合、自治体と話し合うことが必要です。また、どの学校でも(設置をするには)保護者との合意も必要となります。4つ目が、学校側の事務的な負担が増えます。
ユージ:教室に防犯カメラを設置する話がありますが、今年の3月には、熊本市の教育委員会が、教室内にカメラを設置することを検討していると報道されていましたね。これは、どういう議論になったのでしょうか?
塚越:熊本市では、小中学校のいじめや体罰防止のためにカメラ設置を検討することになりました。検討段階ですが、こうしたケースはかなり珍しいということです。有識者で審議会が設置されましたが、そこでは、いじめられている子どもは(いじめがあった証拠として)カメラの記録が欲しいだろうという意見も出ましたし、先ほど話したトラブル防止といったメリット、またプライバシー問題などの懸念も議論されました。カメラを設置するにしても、場所や時間は丁寧に検討する必要があるという話も出ています。文科省によると、教室内のカメラ設置に統一のルールや規制はないので、基本的に学校の判断になります。
◆試験的に導入しつつ様子見を
ユージ:教室に防犯カメラを設置することに対して、塚越さんは、どうご覧になりましたか?
塚越:お話ししたように、やはりメリット・デメリットがあると思います。設置する場合は保護者との合意形成や、データ管理・録画時間はどうするかなど、いろいろな調整が必要になります。この1、2年でも、東京の学校で教室などにカメラを設置したところ、保護者からの反対の声を受けて撤去した例もあります。着替えも録画できてしまうので、そうした問題を危惧する声があったということです。
ユージ:そうですね。そこが心配です。
塚越:そうなると、「着替えの時間はカメラを停止しましょう」など、時間の管理が大変です。やはり設置するにしても、少しずつ実績を積みながら、「どこまでOKで、どこからはダメ」といった試行錯誤が必要になると思います。
一方でアメリカでは、カメラ導入が日本以上に進んでいます。監視されているという意識が生徒のストレスになるということや、カメラがなく監視されていないところでいじめが起こって、かえって巧妙になるという側面も報告されています。そこの点も考えないといけないのかなと思います。メリット・デメリットがあるので、慎重にいろいろと試しながら、カメラ導入を検討してもいいのかなと思います。ユージさん、どうでしょう?
ユージ:まさに、メリット・デメリットの、どちらも感じています。先ほど言ったように、「子どもたちの着替えの時間はどうするのか?」ということも気になります。カメラを管理している先生が、万が一わいせつな目的を持っていた場合はどうするの? と思います。
塚越:映像が流出しないよう、管理の問題もありますよね。
ユージ:流出も含めてですね。それ以外の部分で言うと、現代社会においてカメラは街中にありますし、すでに私たちはカメラに囲まれて生活しているとも言えますよね。(犯罪に巻き込まれた際などに)防犯カメラがあったほうが有利に働くこともあります。僕は、防犯カメラを設置してほしいです。
塚越:どの道、こうした事例は進んでいくので、導入するにしてもデメリットが少ないようにしていくことが大事かなと思います。人間やカメラをどこまで信用するか、という問題もありますよね。学校の先生たちは、基本的にみなさん頑張っていらっしゃいます。カメラや映像の管理など、新しい仕事が増えるのであれば給料を上げるなど、その辺りのことも進めていくのが大事かなと思います。
ユージ:いじめ問題の解決にもつながってほしいなと思いました。
吉田明世、ユージ
<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世