青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。10月29日(日)の放送では、外務省 アジア大洋州局 地域政策参事官の富山未来仁(とみやま・みきと)さんを迎えて、「未来に続く! 日本ASEAN友好協力50周年」をテーマに話を伺いました。
(左から)青木源太、富山未来仁さん、足立梨花
◆日本ASEAN友好協力50周年
東南アジア地域の平和と経済成長を目的として1967年8月に設立されたASEAN(Association of Southeast Asian Nations/東南アジア諸国連合)。当初の加盟国は、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、シンガポールの5ヵ国でしたが、その後、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアが加盟して、現在は10ヵ国となっています。
東南アジア各国の料理は日本の食文化に溶け込んできており、料理だけでなく多くの食材も東南アジア各国から輸入しています。例えば、バナナやパイナップルの約8~9割はフィリピンから、エビの約4割は、ベトナム、インドネシア、タイから輸入されています。
食以外でも、タイヤや日用品などに使われる天然ゴムや、近年はドライヤー、冷蔵庫、エアコン、電子レンジなど家電製品の輸入も増えているそうです。
逆に、ASEAN各国の人たちにとって、日本の漫画やアニメなどのポップカルチャーは人気があり“日本語を学びたい”という人も非常に多く、2022年にASEAN諸国でおこなわれた世論調査では、9割以上が「日本と友好関係にある」「日本は信頼できる」という回答だったそうです。
日本とASEAN諸国が現在のような友好関係にあるのは、50年という長い歴史のなかで、お互いに協力し合い、関係を深めてきたからです。そして今年は“日本ASEAN友好協力50周年”という節目の年でもあります。
◆日本とASEAN諸国の歴史
日本とASEANの関係は、ASEAN設立からまだ間もない1973年に、合成ゴムの輸出問題をめぐって対話を始めたのがきっかけで「実は、日本が世界で初めてASEANと対話を開始した国なんです」と富山さん。
歴史を振り返ると、西欧諸国を中心とした国々による植民地支配の波は、19世紀にアジアにも押し寄せ、ASEAN諸国もタイを除いて例外ではありませんでした。そして、ASEAN諸国は第2次世界大戦後に独立を果たします。その後、東西冷戦を背景に地域で協力する動きが活発になり、ASEANが設立されました。
また、ASEANとの対話が開始された当時、ASEAN側は戦後日本の経済的影響力の急速な拡大を脅威と感じていたそうです。しかし、1977年に当時の福田赳夫(ふくだ・たけお)首相が東南アジア諸国を歴訪し、他国に先駆けて日本ASEAN首脳会議を開催。
最後の訪問地のフィリピン・マニラで、福田首相は「日本は軍事大国にならない」「ASEANと心と心の触れ合う関係を構築する」「日本とASEANは対等なパートナーである」という3つのASEAN外交原則を明確に示しました。
これをきっかけに、「日本はASEANにとって最も重要な対話国の1つとなり、過去50年にわたって、アジア太平洋地域の平和と安定、発展と繁栄のために緊密な協力関係を築いてきました」と富山さん。さらには、「この良好な日本ASEAN関係は、日本の平和・繁栄のために不可欠ですし、今お互いが共通して抱える気候変動やデジタル化、AI(人工知能)をめぐる課題などに取り組むうえでも、とても重要なものです」と強調します。
◆日本が実際におこなっている取り組み
今から10年前の日本ASEAN友好協力40周年のときに、日本とASEAN諸国は改めて協力関係を深めていくことを表明し、さまざまな取り組みを進めてきました。その1つが、国際交流基金による「HANDs! -Hope and Dreams- Project」です。このプロジェクトについて、富山さんは「防災・環境教育に関心を持つ各国の若者を『未来の防災』を背負って立つ人材に育てる研修事業です」と説明します。
アジアはその気候や地形の特性上、世界の約3分の1の自然災害が発生する地域です。災害件数はこの10年で1,350件を超え、約16億人を超える人が被災しています。ところが、地域によっては避難訓練さえなく、災害に立ち向かう術を知りません。こうした状況を踏まえ、自然災害対策をアジア全体の課題として捉え、お互いの知識を共有し、さらに、人々が興味を持つような手法で伝えていこうとスタートしたのが同プロジェクトです。
2014~17年の4年間にかけて毎年約25人の若者を選抜し、フィリピン、インドネシア、タイ、日本で研修プログラムを実施。富山さんは(研修を受けた)彼らが帰国後に企画・実施した13件の事業などを支援してきたそうで、「この研修事業で育成した若者・約100名が、国や言葉、バックグランドに捉われず、防災・減災のユニークなアイデアをいくつも生み出し、着実にアジア各国に防災教育を根付かせています」と声を大にします。
そのほか、同じく国際交流基金による「日本語パートナーズ派遣事業」という取り組みも。これは、日本語教育がおこなわれているアジアの国々に日本人を派遣し、現地校の授業をサポートする取り組みで「2014年から現在まで、東南アジアの国々を中心に、台湾、中国なども含む12の国と地域に約2,800名の日本語パートナーズを派遣しています」と富山さん。
なお“日常英会話ができること”などの条件はあるものの、日本語教育の知識や経験は求められません。そのため、大学生などの若者からの応募も多く、書類や面接による選考を通過すると、4週間ほどの派遣前研修を経て、1年未満に派遣されます。
なぜ日本語教育の知識や経験を必要としないのかというと、「言葉や文化は、人から人、口から口へと伝えることが大切です。今は、インターネットを活用すれば、日本から日本語を教えることは容易にできます。しかし、やはり生身の日本の方が現地の学校で言葉や文化を教えれば、その人の人柄を含め、日本らしさをリアルに伝えることができます」と解説します。
そして、日本ASEAN友好協力50周年という節目の年を迎えるにあたり、12月16日(土)~18日(月)の3日間にわたり、東京で日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議を実施します。富山さんは「この会議では新たな協力のビジョンを共同で打ち出し、関係をさらに強化していきます」と力を込めます。
最後に「ASEANとのつながりを高めるため、政府だけでなく、一人ひとりがASEANの人々と触れ合いながら、ともに課題に取り組み、新しいものを作っていくことが最も大切だと思っています。ぜひこの機会に、ASEAN諸国について理解を深めていただければと思います」と呼びかけました。
今回のテーマを通して、足立が一番驚いたこととして、ASEANにとって日本が対等に話し合える初めてのパートナーだったことを挙げ、「だからこそ、こうして50年間も友好関係が続いてきて、今でも(お互いに)良い関係が続いているんだということを知れて、うれしい気持ちになりました」と話します。
一方、青木は12月に開催予定の日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議に着目。「これからも60周年、80周年、100周年……と友好的な関係がずっと続いてほしい」と望んでいました。
(左から)青木源太、足立梨花
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10月29日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2023年11月6日(月) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花