サカナクションの山口一郎が、3月31日(木)放送のTOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!」に生出演。パーソナリティのこもり校長とぺえ教頭が、30日にリリースされたコンセプト・アルバム『アダプト』について、込められた思いを聞きました。その前編。
サカナクションは、第1章【アダプト】“適応”と第2章【アプライ】“応用”という、アルバム2作にわたる新しいプロジェクトを展開。その第1章を総括するコンセプト・アルバムが、今回リリースされた『アダプト』です。
◇
こもり校長:『アダプト』“適応”という意味ですが、もう一郎先生のもとにリアクションは届いていますか?
山口:5分に1回エゴサしてる。「サカナクション」「アダプト」「山口一郎」「一郎」で(笑)。
ぺえ教頭:すごい気になるんですね(笑)。
山口:そりゃね、自分が生み出した作品ですからね。「みんなどう思っているのかな?」みたいな。ガチガチですよ。
――「コロナ禍に適応していこう」という活動自体をコンセプトに
こもり校長:アルバムのコンセプトをお聞きしてもいいですか?
山口:僕らは、2020年の2月……コロナが発生したころにツアーをやっていたんです。最初は延期、延期……ってしてたんですけどそれが中止になっちゃって。このままコロナの影響下でライブができなくなって、コロナが明けるのを待つのは嫌だなっていう話をしていたんです。
ぺえ教頭:はい。
山口:コロナがいつか明けるとして、コロナ中に新しいコンテンツを1つ発明して、明けてからそれが活かせるようなことをやろう、ということでオンラインライブを始めたんです。
こもり校長:はい。
山口:そこで感じたのが、コロナに適応していくこと。アルバムのコンセプトではなく活動自体……コロナ禍に適応していこうという活動自体をコンセプトにしたんです。そこで、ライブ、アルバム……いろいろな作品を作っていくことにしたのが、今回のアダプトのコンセプトなんです。だから、アルバムのコンセプトじゃないんです。活動のコンセプト。
――現代に音楽の新しい感動の仕方を提案するには
こもり校長:今回のコンセプトでは、従来の流れと逆のことをされているじゃないですか。いままではシングルがあって、アルバムがあって、リアルライブがあって、そこからDVDやオンラインライブになる、という流れだったのを、なぜ逆にしようと思ったのですか?
山口:まず、経済的にみんな困窮するだろうなと思ったんです。僕ら自身もライブできなくなってきたし……今、YouTubeって無料コンテンツじゃないですか。音楽ってある種お金をいただいて音楽を作って聴いてもらうというシステムだったけど、そういう無料コンテンツの他のエンターテインメントに、このままだと負けていっちゃうなって思ったんです。
ぺえ教頭:はい。
山口:コロナ以前は音楽バブルだったから……ライブだって、ちょっと人気があれば武道館でできちゃったりしていたわけですよ。それが一気にできなくなって、みんなが八方ふさがりになっているなかで、いままでみたいな殿様商売をしていちゃダメだし、逆にこういう時期だからこそ好きなものを作って好きなように発信するべきじゃないかな、って思ったときに、まず「シングルいらないな」って思ったんです。
ぺえ教頭:あ~……。
山口:矛盾していると思うんです。アルバムを出す前に、シングルを何枚か出しているじゃない。そうすると、アルバムを出したときに「新曲は何曲入っているんですか?」って聞かれるんですよ。こっちからすると、シングルで先に出しているけど、アルバム全部新曲だから! だったら、シングル出しませんよ! と(笑)。
ぺえ教頭:はい(笑)。
山口:しかも、今CDを聴いている人って一部だと思うんですよ。どちらかというとコレクションアイテムで、マーチャンダイジング……つまり、グッズ化していると思うんです。それだったらシングル出すのやめて……CMでは僕たちのタイアップ曲が流れていましたけど、それはセールスプロモーションではなくてアーティストプロモーション。自分たちが“活動しているよ”、というプロモーションだと捉えてやっていこうと。
こもり校長:うんうん。
山口:新曲も、リリースされたらすぐにサブスクで聴けるじゃない。YouTubeでも、すぐに映像が見られるじゃない。そうなると、すぐに繰り返し聴けるものという認識だけど、僕ら昭和の時代の人たちからすると、新曲ってリリースされたらお店に買いに行かないと聴けなかったし、ラジオでも一部しか聴けないみたいな……。なかなか、繰り返しで聴けることがなかったんですよ。
ぺえ教頭:うんうん……。
山口:現代に音楽の新しい感動の仕方を提案するには、懐古主義で僕らが音楽を受け取っていた方法を現代に持ってこようと。そう思ったときにいちばんいいなと思ったのは、コロナ禍でライブに行けない……たとえば医療従事者の方とか、子育てで観に行けなくなった人とか、そういう人たちも分け隔てなく体験できるオンラインライブを最初にやると。それもライブハウスでやるようなものじゃなくて、ミュージックビデオのように凝った……コロナ禍でしかできないオンラインライブを発明して披露しようと。そこで、初めて新曲を初披露しようと。
こもり校長:うんうん。
山口:そうしたら、繰り返し聴けないじゃない。オンラインライブでしか新曲を聴けないから「また聴きたい」っていう……ちょっと違う感動を得られるんじゃないかなと思って、オンラインライブを先にやって。
こもり校長:なるほど~。
山口:オンラインライブを観たあとにリアルで体験したいな、と思う人だけリアルライブに来てもらうと。そこまできて、サカナクションの活動をもっと知りたいな……どんな物語があったのか詳しく知りたい人だけにCDを買ってもらって。ブックレットに詳しく書いてあるから、それを見てもらえばいいと。音楽だけでいいって人はサブスクだけ聴いてもらえばいいよね、という考え方がまず一個ある……これが、コロナ禍のアダプトだったんです。
ぺえ教頭:すごい!
山口:めちゃめちゃ上手に話せているでしょ?
こもり校長:すごいっすね!
山口:プロモーション期間中だから、この話めちゃめちゃしてるから(笑)。
ぺえ教頭:素晴らしい~。音楽界のエジソンみたいね。次から次へと発想が冷静に生まれていってね。
こもり校長:本当だね。
----------------------------------------------------
▶▶この日の放送内容を「radikoタイムフリー」でチェック!
聴取期限 2022年4月8日(金)AM 4:59 まで
スマートフォンは「radiko」アプリ(無料)が必要です。⇒
詳しくはコチラ
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
----------------------------------------------------
<番組概要>
番組名:SCHOOL OF LOCK!
パーソナリティ:こもり校長、ぺえ教頭
放送日時:月~木曜 22:00~23:55/金曜 22:00~22:55
番組Webサイト ⇒
https://www.tfm.co.jp/lock/