笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。7月1日(土)の放送は、
前回に引き続き、アステリア株式会社 代表取締役社長/CEOの平野洋一郎(ひらの・よういちろう)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)平野洋一郎さん、笹川友里
熊本県出身の平野さんは、熊本大学を中退し、ソフトウェア開発ベンチャー設立に参画。1987年からロータス株式会社(現:日本IBM)でのプロダクトマーケティングおよび戦略企画の要職を歴任し、1998年にインフォテリア(現:アステリア)株式会社を創業。2007年に東証マザーズに上場。
また、2008年~2011年には、本業の傍ら青山学院大学大学院にて客員教授として教壇に立ち、2023年4月、京都大学経営管理大学院の特命教授に就任しました。
◆アステリアとChatGPT
企業データ連携ツールの国内ソフトウェア市場で16年連続シェアナンバーワン(出荷数量ベース)を獲得している「ASTERIA Warp(アステリア ワープ)」をはじめ、モバイルアプリ作成ツール「Platio(プラティオ)」、ノード統合プラットフォーム「Gravio(グラビオ)」など、さまざまなサービスを生み出しているアステリア。
そこで、平野さんにAI(人工知能)チャットサービス「ChatGPT(チャットジーピーティー)」について尋ねると「社内でフル活用しています」との回答が。全社でおこなったリモート会議で“業務においてChatGPTを使用しているか”をスタッフに問いかけたところ、ほぼ全員が挙手するほど、同社では身近な存在になっている様子。
また、平野さん自身も、文章作成やプレゼン作り、そのチェックなどに活用しているそうで、「人がレビューするよりも早いし、情報収集も非常に早い。自分で検索すると、自分の思いついた情報しか出てこないが、ChatGPTだと網羅的に(関連情報が)出てくるので、とても効率化できています」と語ります。
ChatGPTは昨年11月に世間に認知され始めましたが、12月には活用を始めていた社員も多くいたと言い、「我々は未来の価値を生み出す企業ですから、(ChatGPTなど)新しいものはできるだけ自分たちで使ってみるんです。そのうえで、自分たちだけで使うのではなく、その価値をプロダクトを通じてお客さまに提供しています」と熱弁。
その事例として、「ASTERIA Warp」とChatGPTを連携する専用アダプター「生成AIアダプター for ChatGPT」の提供を今年5月から開始しています。
◆“NDS”でやっている限り、日本は最先端にいけない
ChatGPTをはじめとする生成AIの使用法については、さまざまな分野において議論されており、なかには生成AIの使用を禁止する企業もあり、平野さんも「確かに、生成系AIは危険なところがたくさんあります」と言及。
その理由として、「新規技術に対して法律は常に後追いになるため、(生成AIに関する法律が)まだない。なかには“使ってはいけない”というポリシーを持つ団体や企業もあるので、法律が作られないと、(団体や企業によって)対応がいろいろと分かれるのは仕方がないと思います」と見解を示します。
そして、こうした新たな潮流に対し、とりわけ日本では“N=何かあったら、D=誰が、S=責任を取るんだ?”という思考に陥りがちになり、「“新技術は(まだ得体が知れず)誰も責任が取れないため使うな”とネガティブに働くことがあります。
しかし、フロンティア(未開拓の分野)を走っていくには、問題の発生はつきもので、失敗もしながら先を走っていくことになる。“NDS”(の思考)でやっている限り、日本は最先端にいけません。“危ないから(使用を)しない”のではなく、“いかに使うか”がキーになる」と力を込めます。
◆アステリア創業時からのブレない思い
ここで笹川から「日本が技術分野で活躍していくための“必要な変化”は何ですか?」との質問が。これに平野さんは、「失敗を容認するような社会風土がとても大切。ちょっとしたことを指摘しただけで全部ダメになってしまう。その結果(失敗を恐れて)何も挑戦できなくなってしまう。これでは新しいことは起こらない」と声を大にします。
また、アステリア(当時インフォテリア)創業時から「ソフトウェアを輸出業にしたい」との思いを抱く平野さん。しかし現在、海外で使われているソフトウェアはゲームのみで、「ビジネス面で活用するソフトウェアはまだ一社も提供できていません。なので、アステリアがその風穴を開けられれば、そこから先、どんどんいろいろな企業が(海外に向かって)出ていけると思います」と野望を語ります。
さらには、「ソフトウェアは、産業として日本という国土に非常にフィットしている」とも。日本は資源の多くを輸入に頼っているうえに国土も狭く、「ハードウェアはどうしても鉄鉱石やレアメタルを輸入するなど依存性がありますが、ソフトウェアは、自分の頭のなか(にあるノウハウや技術情報)を(製品やサービスに落とし込んで)開発すれば、輸送などせずに世界中で使ってもらうことができるので、日本の国土や、今の環境にとても合っている」と語ります。
ただ、現状はまだ道なかばと言う平野さん。「ここを何とか突破して、日本のソフトウェアが世界中で使われる日を夢見ています。根っこの技術力は負けていないので、(新技術が生まれたときなどに)社会がどう受け止めて、失敗も乗り越えて(積極的に)使っていけば、それがまた価値になる。こういう循環を繰り返していきたい。(ソフトウェアを軸に)世界に出ていくことを目指します!」と決意を固めていました。
次回7月8日(土)の放送は、Nature Architects株式会社代表取締役CEOの大嶋泰介(おおしま・たいすけ)さんをゲストに迎えてお届けします。Nature Architectsが開発するメタマテリアルを活用した製品設計アルゴリズムについてなど、貴重な話が聴けるかも!?
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聴取期限 2023年7月9日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/