笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「DIGITAL VORN Future Pix」。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。5月7日（土）の放送は、前回に引き続き、ヤマト運輸株式会社 執行役員 DX推進担当の中林紀彦（なかばやし・のりひこ）さんをゲストに迎え、お届けしました。

（左から）中林紀彦さん、笹川友里

◆ヤマト運輸にとってのDXとは？

物流業界をけん引する同社におけるDX（デジタルトランスフォーメーション）について、中林さんは「ヤマト運輸では物理的な拠点や多くのタッチポイントを持っています。車両や人、物の動きをデジタル上にコピー（デジタルツイン）して、そのなかでシミュレーションや、AI（人工知能）で業務量予測などおこなっています。こうした最新技術の活用を通じてみなさんの荷物の受け取り体験を良くすることが、ヤマト運輸のDXです。」と力を込めます。

現在はAIをはじめ、ドローンの活用も進んでおり、お年寄りが住む山間地のお宅に薬を届けるなどの実証実験をおこなっています。「特に地方（の過疎化した地域など）の公共交通機関がどんどんなくなっています。ドローンを活用したサステナブル（持続可能）な医薬品輸送ネットワークの構築にチャレンジしています。」と語ります。

さらには、自動運転技術の向上・普及を見据えて「自動配送ロボットや自動運転を活用したラストマイル（最寄りの配送拠点からお届け先までを結ぶ最後の区間）配送の実証実験もおこなっています。」と話します。

さまざまな最新技術の進歩に伴い「機械ができるところはどんどん機械に任せて、人間はもっと付加価値の高いサービスに取り組んでいくことで、人と機械がいかにシームレスに（継ぎ目がなく）連携してより良い世界を作っていけるか、という目標段階でデジタルがすごく効いてきます。」と力説します。

◆“デジタル人材”の育成にも注力

そのためにもDX推進のカギとなる“デジタル人材”ですが、「まだまだ足りていません。」と指摘。「デジタル人材を育成していくことも、日本社会がこれから取り組まなければならない課題の1つです。」と強調します。

また、筑波大学の客員教授としてビッグデータ分析の教鞭を執っている中林さんは、デジタル人材を育成するためにも「基礎教育はすごく重要です。」と声を大にします。その教え子たちは、データサイエンティストとしてさまざまな企業で活躍しているだけでなく「ヤマト運輸で私のチームでもデータサイエンスとして活躍している卒業生もいます。」と笑顔をのぞかせます。

さらには教えるにあたって、基礎に加えて「企業がどういうビジネスをおこなっているのか、という理解力もとても重要です。」と言います。とはいえ、そうした面は大学教育では学べない領域のため「会社のなかで、自社のビジネスの理解を深めるための育成プログラムを作ることも大切です。」と補足。実際にヤマト運輸では「Yamato Digital Academy（ヤマトデジタルアカデミー／YDA）」を2021年にスタートさせ、役員を含む全社員のデジタルリテラシーの底上げやデジタル人材の育成を図るための教育プログラムにも力を入れています。

最後に笹川が“少し先の物流の未来”について尋ねると、「物を買う・受け取るという体験はガラッと変わっていると思います。例えば、夕方に仕事先のお客さまのところに伺うために、急に“手土産がほしい”と思ったら、近くのコンビニなどで受け取ってすぐにお客さまのところに持って行けるなど、生活動線上で自分のほしいものがすでに用意されていて、それを受け取ることで、人々の生活をさらに豊かにすることができるのではないかと考えています。」と中林さん。

また、そのためにもデジタルの仕組みやデジタルツインが重要だと言い、「物理的な世界をデジタルの世界に写し取って（デジタルツイン）、さまざまなシミュレーションをおこないながら、お客さまの生活動線をあらかじめ把握して、その動線上に必要そうなものをどんどん用意していくような“先読み”の世界が広がっていくのではないでしょうか。」と予見していました。

次回5月14日（土）の放送は、VRアーティストのせきぐちあいみさんさんをゲストに迎え、お届けします。VRアートの世界、さらには、せきぐちさんがVRアーティストになったきっかけなど、貴重な話が聴けるかも!? どうぞお楽しみに！

＜番組概要＞
番組名：DIGITAL VORN Future Pix
放送日時：毎週土曜 20:00～20:30
パーソナリティ：笹川友里
番組Webサイト：https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/