放送作家・脚本家の小山薫堂とフリーアナウンサーの宇賀なつみがパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「日本郵便 SUNDAY’S POST」(毎週日曜15:00~15:50)。4月23日(日)の放送は、ノンフィクション作家の小松成美(こまつ・なるみ)さんをゲストに迎えて、お届けしました。
(左から)小山薫堂、小松成美さん、宇賀なつみ
小松さんは、トップアスリートからアーティスト、クリエイターまでさまざまな人物ルポルタージュ、スポーツノンフィクション、インタビューやエッセイ、コラム、小説を執筆しています。
これまで小松さんが取材をしてきた人物といえば、イチローさん、中田英寿さん、五郎丸歩さん、元横綱の白鵬さん、さらには女優の森光子さん、アーティストのYOSHIKIさんなど、名立たる著名人が名を連ねます。
そんななか、脚光を浴びるきっかけとなったのは「中田英寿さんのノンフィクションでした」と小松さん。出会ったのは、中田選手が19歳のときで「孤高のアスリートだったんですね。当時からものすごく個性的で、周囲との衝突をいとわない青年だったので『理解をされない』と苦しんでいた時代でもあったんですけども。サッカー記者ではない私のような者に、サッカーのことや人生のことを何でも話してくださって、2人で『本を作ろう!』ということになって」と振り返ります。
当時、中田選手のプレーを観たときに「直感的なんですけど、“彼こそが、日本をワールドカップに連れて行ってくれる人だ!”と思った」と小松さん。そこで、19歳の中田選手に取材を打診し、インタビューをしたところ「彼が哲学を持っていることがわかったんですね。孤独に耐えて、けれど自分を貫くという。それで大ファンになりまして。彼のサッカーを通した人生を書くということ。それを19歳から彼が引退をする29歳までの10年間、続けることができたんですけど、その本はたくさんの方に読んでいただけました」と語ります。
自身は、ものすごく好奇心旺盛で聞きたがりのタイプという小松さん。イチローさんにインタビューしたときには、こんなエピソードが。小松さんが「なぜあなただけこんなにヒットが打てるんですか?」と質問を投げかけると、取材の様子を見ていた編集者たちは「プロ中のプロのイチローさんに、何でそんな子どものような質問をするんだ!」と紛糾。
しかし、「イチローさんだけが腕を組んで、熟考をして答えてくれたんです。『なぜ僕が打てるか、今から考えます。他のバッターと違うところがあるはずだから。僕は今まで小松さんにそれを聞かれるまで、誰にも質問をされたことがなかったから考えたことがなかったけれども、今考えてみますね』と答えてくれたんですね」と回顧。
そんなイチローさんの対応に、「思いの丈を素直に届けるということが、その方自身も知らない境地に届くことがあるのだなと思って、ストレートに話を聞いてよかったなと、そのときに思いました」としみじみと語ります。
これに小山が「そのときの答えは何だったんですか?」と興味を示すと、小松さんは「イチローさんってID野球をしないんですね。絶対に自分の目で球種を察知する。体の重心を腰で取るから、ストライクゾーンがものすごく広かったんです。イチロー・ストライクゾーンというものがあったんですね。ボールまで打ててしまっていた、ということが4割に近い打率につながっていたんだなぁと。そして誰よりも目がよかった。選球眼は本当に球界一だったと、ご自身でもその当時はおっしゃっていました」と答えます。
続いて、宇賀から「ジャンルは違えども一流の方たちにたくさん取材をされてきて、そういう方たちに共通していることって何かありましたか?」との質問には、「これでもかというくらいユニークで、エッジが立ってキャラクターは濃いんですけども、同時に共通することもあるんですね。1つは自分を貫く力。これが本当に強いです。自分がどのポジションに立って、誰に何を言うのか、伝えるのか。ご自身のなかで決めたことを絶対に曲げないです。
それが炎上しようが、チーム内から批判を浴びようが、“これが自分の信じた正しい道なのだ”と思えばそれを貫くんですよね。その先に必ずチームプレーにつながっていったり、勝利につながっていったりするので、最後は理解されてみんなが迎え入れるというシーンが何度もあったんですけども、その貫く力が圧倒的に強いです」と小松さん。
そしてもう1つは、「ゴールをゴールと思わないところ」。「普通、人は成績を収めたり、勝利を得たりすると、よくやった自分を“褒めたい”と思うはずなんですけれども、その方たちはそれをただの通過点だと思うんです。自分が目指す高みはこんなところではないと。『今晩だけは喜びますが、明日からは次のゴールに向かって次のラインに向かって走りますので、小松さんついてきてください』といつもおっしゃっていました」と共通点について語ります。
小松さんはインタビューをするにあたり、その人のことをものすごく調べて、質問を何十個も用意しておくものの、取材先に行った瞬間に、事前に考えておいた質問は頭のなかからすべて消去し、真っ白にすることを心がけていると言います。そして、「その場で思ったことを聞く」というスタイルを貫く理由として、「インタビューを受け慣れている方は“次はこういう質問だろうな”とか“こういうクエスチョンでくるんだろうな”と思っていらっしゃるので、むしろその期待を裏切るというか、(その場で思ったことを)突発的に聞いています」と明かしてくれました。
今一番話を聞いてみたい人として、小松さんは、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手の名を挙げ、「大谷さんが北海道日本ハムファイターズからメジャーに行った頃から、自分の野球をどんな言葉で表現するのかなということに興味があったので、本当にいつか機会があったらインタビューしたいなとずっと思っているんですけども、なかなか1 on 1の対面のインタビューをする機会がなくて。記者の方にはとても闊達にお話になるんですけど、なかなか難しい。いつか叶えば、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の舞台で見えたこと、感じたことを聞いてみたい」と話していました。
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<番組概要>
番組名:日本郵便 SUNDAY’S POST
放送日時:毎週日曜 15:00~15:50
パーソナリティ:小山薫堂、宇賀なつみ
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/post/