作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。10月29日(日)の放送は「村上RADIO~『サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブ・バンド』完全カバー~」をオンエア。
今年2月に放送したザ・ビーチ・ボーイズのアルバム『ペット・サウンズ』に続く完全カバーシリーズ第2弾は、ビートルズの伝説的アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブ・バンド』をお送りします。エルトン・ジョンからフランキー・ヴァリまで、多種多彩なミュージシャンたちが、それぞれの工夫を凝らした名曲カバーをお届けします。
この記事では、中盤3曲について語ったパートを紹介します。
◆John Di Martino's Romantic Jazz Trio「Fixing A Hole」
次は「フィクシング・ア・ホール」、ポール・マッカートニーの作った曲です。「屋根に穴が空いたから塞(ふさ)がなくっちゃ」、ジャズ・ピアニスト、ジョン・ディ・マルティーノのトリオが演奏します。
これって比較的地味な曲なんですけど、こうしてインストゥルメンタル演奏で聴くと、曲の良さが素直に浮かび上がってきますね。
<収録中のつぶやき>
前に観た映画で、ギャングの親分が連れてきた男に「お前はビートルズを聴くか」とたずねるシーンがありました。男が「聴く」と答えると、「『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』はビートルズの最高傑作だと思うか、YesかNoで答えろ!」と脅すんです。男が「No……」と言うとギャングの親分はにっこり笑って、「よしそれで正解だ!」と言って、男を許すんです。彼にとっての最高傑作は「Let It Be(レット・イット・ビー)」なんですね。「Mr.Kite」とか「Fixing A Hole」のような、インド音楽風の曲が入ったLPが最高傑作なわけはないだろう!と言うんです。
◆The Four Freshmen「She's Leaving Home」
次は「She's Leaving Home」。彼女は家を出ていく。これもポールの曲です。このアルバム『Sgt. Pepper’s』は、もともとポールが中心になってできたようなアルバムなんです。彼が「こういうトータル・コンセプトでアルバムを作ろう」というアイデアを出して、みんなを引っ張ってこしらえたようなものです。この頃からポールがグループのイニシアチブを取る傾向が強くなってきて、4人の親密な関係にだんだん綻びが見え始めてきます。
「She's Leaving Home」、ジャズ・コーラス・グループ、フォー・フレッシュメンが歌います。
◆Eddie Izzard「Being For The Benefit Of Mr. Kite」
次はジョンの作った「Being For The Benefit Of Mr. Kite」。歌っているのはエディー・イザードという人です。映画「アクロス・ザ・ユニバース」のオリジナル・サントラ盤に入っていました。
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ビートルズの音楽にはイギリスの大衆音楽、ボードビル音楽の伝統が色濃く漂う作品が見受けられますが、これもそのひとつですね。ジョンはサーカスの古いポスターを見つけて手に入れ、そこからアイデアを得てこの音楽を作りました。でもその再現された古くささが、一種サイケデリックな効果を生み出しているみたいです。
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10月29日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年11月6日(月) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO ~「サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブ・バンド」完全カバー~
放送日時:10月29日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/