笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。12月21日(土)の放送は、
前回の放送
に引き続き、北里大学未来工学部の学部長・岡浩太郎(おか・こうたろう)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)岡浩太郎さん、笹川友里
岡さんは、株式会社富士通研究所、NIH(アメリカ国立衛生研究所)およびウッズホール海洋生物学研究所研究員を経て、1995年に慶應義塾大学理工学部機械工学科専任講師に。その後、1998年にシステムデザイン工学科助教授、2005年には生命情報学科教授に就任し、2023年4月に北里大学未来工学部の学部長に就任しました。
◆バイオイメージ・インフォマティクスとは?
前回の放送
では、未来工学部での学び、データサイエンス教育などについて聞きましたが、今回はじめに伺ったのは、岡さんが研究している“バイオイメージ・インフォマティクス”について。
「人間は、情報を取り入れる入口として目が発達しているため、得た情報はビジュアルとして捉えるものが多いんですね。例えば、細胞の写真は白黒ですが、細胞の小さな器官に1つずつ色をつけてカラフルにすると、どれとどれが近くにあるか、遠くにあるかが分かります。そうやって、まずは(今まで見えづらかったものを)見えるようにして、我々や研究者がその意味を理解できるように加工することをおこなうのが、バイオイメージ・インフォマティクスという学問分野です」と岡さんは解説します。
また、この研究によって、「お医者さんは、MRIや(体の細胞)組織をとったりして正常か異常かを診断しますが、検査に手間暇がかかりますし、間違えてはいけないことなので負担がかかります。例えば(患者さんから得た)情報を加工して、機械が“ここがあやしい”と印をつけてくれれば、改めて専門のお医者さんが診て判断できる。そうなると診療時間が短くなるかもしれないし、いろいろな解決策が見つけられると思います」と未来を見据えます。
そうした研究のための道具作りもおこなっているそうで、「我々の細胞を顕微鏡で見ると、ほとんど水なので透明ですが、そこに色やコントラストがついていれば“何かがいる”とわかります。そのお手伝いをするために積極的に色をつける。一方で、カメラや顕微鏡を作ったりすることもそうです。今、我々はRGB(レッド・グリーン・ブルー)の組み合わせで画像を作っていますが、121色のパレットがあったらどう見えるのか。今、一番いいカメラだと可能なんですが、これは(見え方が)全然違います」と熱弁します。
なお、現在バイオイメージ・インフォマティクスは世界中で研究が進んでいますが、岡さんいわく「日本の技術は最先端を走っている。“お家芸”だと思います」と胸を張ります。
◆大事なのは“ファン”であるかどうか
続いて、仕事におけるモットーを伺うと「学生には(研究について)『それってファン(fun)なの?』、『君にとって面白いこと?』って必ず聞くようにしています」と岡さん。というのも「しがらみを感じながら研究してもつまらない。特に大学の研究はしくじってもいいところなんだから、“好きなことをやらないと心も踊らないんじゃない?”って思います」と語ります。
すると、笹川が「それは仕事においても言えると思いますか?」と質問を投げかけると、岡さんは「仕事となると、ファンではないこともやらないといけない局面は出てきますが、“仕事を楽しめる、ファンになれるように工夫できないか?”という考え方ができると、ちょっと変わってくるかなと。僕自身、2割ほどファンなことができれば、残りの8割がファンじゃないことでも、それはそれでハッピーだと思っています」と持論を述べます。
◆改善すべきデータサイエンス教育の課題
2023年4月に創設したばかりの北里大学未来工学部では“データサイエンス教育”を推進していますが、現在どんな課題点があるのかを聞いてみると、「実は、データサイエンティストたちが扱っているデータってとてつもなく雑で、ボコボコに穴が開いているデータだったりするんですよ。その一方で、学生には整ったデータを渡して『調べてごらん』と言って調べさせています。ですので、我々がこれからやるべきなのは、ボコボコなデータを渡して調べさせること。そして、場合によっては自分で(新しいデータを)とってきてみる。そうすると、その大変さもわかるので」と言及します。
また、企業などによっては、いまだにデータが紙で保存されていることもあり、それをデジタル化することも大事な仕事の1つと言い、「これからどんどんデジタル化されて、データはコンピューターで扱いやすいものばかりになると思いますが、過去のデジタル化されていないものを捨ててしまうのはもったいない。だから、それをどうしていくかを考えて、場合によっては新しい道具を作ればいいと思っています」と話します。
最後に、岡さんが想像する近未来の風景を尋ねると、「例えば、手術室には執刀医や看護師、麻酔医、呼吸の管理をする技術者などがいますが、そこにデータサイエンティストも必要な時代になり、“データサイエンティストが手術室にいなければ大変!”となれば、メディカル分野の新しい未来としてはすごいと思います」と語っていました。
次回12月28日(土)の放送は、ゲストにIoTNEWS代表の小泉耕ニ(こいずみ・こうじ)さんをお迎えして、2024年に起こったデジタルシーンを振り返ります。
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12月21日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年12月29日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里