笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。9月16日(土)の放送は、三菱地所株式会社 DX推進部協業・変革支援ユニットのユニットリーダー 篠原靖直(しのはら・やすなお)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)篠原靖直さん、笹川友里
篠原さんは2001年に三菱地所に入社。大規模マンション開発・販売などを担当した後、経営企画部に異動し、中期経営計画策定・M&A及び買収会社とのPMI業務などを担当。2012年より、中古住宅売買仲介/賃貸住宅管理業をおこなうグループ会社に出向し、経営再建・成長戦略の策定・実行に従事。IT・デジタル活用による業務効率化・DXを推進。2020年にDX推進部に復職。現在は、全社のDX・データ利活用推進戦略策定及び、各事業領域での施策実行支援・DX人材育成などを担当しています。
◆不動産業界における「DX」について
近年、不動産業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)は進んできているものの「後発の業界だと思います」と篠原さん。その理由の1つとして、「消費財を扱われている会社さんと比べると、1件あたりの取引単価が高いので、取引件数自体がそれほど多くない」と説明します。
というのも、不動産は1件ずつ立地条件や間取り、建物の仕様などが異なるため、個別性が高く「トランザクションレコード(*)が、いわゆるビッグデータの形で溜まりにくいという特性がある。不動産は、売れれば売れるほど拡大再生産をしていくような規格の定まった商品ではないので、データの利活用がなかなか進みにくい業態だった」と振り返ります。
*企業の情報システムなどが扱うデータの種類の1つで、業務に伴って発生した出来事の詳細を記録したデータのこと
とはいえ、不動産業界でもデータの利活用がどんどん進んできており、「AI(人工知能)アルゴリズムも日進月歩で開発されているので、価格の予測や需要予測などにおいても精度が上がってきていると思います」と篠原さん。
さらには、現在もオンライン上でのお客さまとの接点を強化していくための取り組みを進めていますが、「最終的には、オフラインで何かを体験をしていただくとか、オフライン上でどうやって顧客体験をより良くしていくか、そこにどんなデジタルの要素を使っていくか。そんな取り組みを各社で進めているところです」と言及します。
◆“コロナ禍”でオンラインの重要性を認識
続いて、篠原さんが在籍しているDX推進部について伺うと、「(配属されたばかりの)2020年当時は、基本的には私と同じように不動産会社で経歴を積んできた社員、三菱地所に新卒入社した社員を中心に構成されていましたが、以降は外部のIT・デジタルの知見やスキルを持った人材を積極的に採用し、今は過半数の社員が、外部から新たにジョインしてもらったIT・デジタル領域のスペシャリストで構成されています」と話します。
しかし、20年近く携わった不動産業界の業務とはまったく異なるDX推進部に異動した当時は、「そもそも(IT・デジタル関連の専門用語などの)言葉が分からず、新入社員として入社したときの気持ちで仕事をしていました(苦笑)」と回顧。
さらに、当初は「そもそもDXって何?」「DX化したら仕事に役立つのか? 儲かるのか?」といった質問を受けることが多かったそうですが、配属してすぐにコロナ禍となった影響もあって、必然的にリモートワークをせざるを得ない状況に。
「オンラインでいろいろなサービスを使って、何とか業務を回していかなければならないことを多くの社員が経験したことによって、“デジタルは使えるものなんだ”という認識が浸透した。そういう意味では、当社の数年前と比較すると隔世の感がありますね」と振り返ります。
◆三菱地所が考える“未来のまちづくり”
家づくりのデジタル化というと、最近ではスマートハウスやスマートシティといった言葉をよく耳にします。そこで、笹川が「三菱地所さんが考えるスマートシティや未来のまちづくりについて、具体的な構想を教えていただけますか?」と質問を投げかけます。
これに篠原さんは、「デジタルを活用することの一番大きなメリットは、これまで感覚的、情緒的に何となく“いいよね”と思っていたものがデータとして可視化され、把握できるところだと思っています。そして、(収集した)データを分析し、高度に利活用して、より良いサービスをご提供していくことが、スマートハウスやスマートシティの概念だと思っていますので、そこはブレないように心がけて進めています」と声を大にします。
また最近では、3Dの建築データを活用したさまざまな取り組みも進んでおり、「例えば、住宅を建てる前にデジタル空間上でさまざまなシミュレーションができることは大きなメリット。これまでよりも、より多くの変数を考慮した建築物が今後どんどんできていくのではないか」と予見。
改めて、デジタルの進化によって「お客さまにとって、より便利で快適な住宅を作っていくことができると思います」と力を込めていました。
次回9月23日(土・祝)の放送も、篠原靖直さんをゲストに迎えてお届けします。篠原さんの仕事術についてなど、貴重な話が聴けるかも!?
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9月16日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年9月24日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里