モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。7月26日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「人手不足がさらに深刻に、建設業界の2024年問題」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
2024年4月より、建設業界では時間外労働の規制が強化されます。時間外労働時間が規制されれば1人あたりがこなせる仕事量が減少するため、人手不足に拍車がかかることが懸念されており、規制強化に伴う一連の問題は「2024年問題」と呼ばれています。
◆建設業界の「2024年問題」とは?
吉田:「2024年問題」といえば、物流業界のイメージがありますが、建設業界でも同じような問題が起きると言われているんですね?
塚越:こちらは2024年4月から時間外労働の上限規制が厳格化されることに伴って予想される、人材不足の問題です。物流業界も建設業界も「2024年問題」が問題になっています。なぜ、2024年に問題が起こるのかというと、そもそも政府は2019年に働き方改革関連法を施行し、残業規制等を強化しているためです。今回の問題もこれに起因します。
残業規制は重要ですが、働き手の高齢化と若い世代の就業者の減少が進み、結果的に長時間労働が常態化していた建設業界では、対応に時間がかかるとして、運送業などと並んで5年の猶予が与えられていました。その期限が来年の2024年に来ます。
運用が適用されると、従業員の時間外労働の上限は月45時間、年360時間が原則になります。1人あたりの労働時間が削減されるので、どうしても人数が必要になるのですが、人材不足の業界でその傾向に拍車がかかるのが問題です。
建設業界の人手不足は深刻化していて、昨年の建設業界の就業者数は479万人です。ピークは1997年の685万人なので、25年で200万人ほど減少しています。働き手も高齢化が進んでおり、就業者のうち55歳以上の割合は約36パーセントで、全ての産業と比較すると、平均よりも5ポイント高いです。
逆に29歳以下の就業者は12パーセント程度で、こちらすべての産業と比較すると、平均より5ポイントほど低いです。つまり高齢化が進む一方で若手が減っている状況です。
◆賃金の引き上げ、福利厚生の充実で若手職人を確保
ユージ:僕も建設業界にいたので、大変なのはわかります。「建設業界の2024年問題」について、何か対策は進められているのでしょうか?
塚越:まずは賃金を引き上げて、若手の人材を確保することです。例えば、積水ハウスグループの「積水ハウス建設」では、今年4月は高卒など39人の大工が入社したのですが、これを再来年の2025年4月には133人と3倍以上にすることを目指しています。
そのため、今年4月入社の社員の年収(初任給)を、前年比で最大11パーセント増の約17万9,000円としました。さらに工事責任者(職長クラス)は、これまで30代で500~600万円程度だった年収を、来年4月から最大1.8倍の約900万円にするとのことで大幅に給料を引き上げます。
また、社内では大工という言葉を「クラフター」と変更して、若者に受け入れやすいようにイメージを変え、制服も若者に人気のブランドのデザインを採用しました。
さらに、完全週休2日制、男性育休取得率100パーセントなどを徹底するとのことです。こうしたことができるならば、相当の変化になります。近年は新たに新設する住宅の着工件数が横ばいですが、需要は多く、基本的に業界は好調です。
一方で、現状でも小学校建設に人を集められず、予定までに建物が完成しないといった事例もあります。そうしたなかで来年、残業規制が生じるとなると、待遇を改善することで若手人材を確保したいとのことです。
ユージ:その他にも、進められている対策はありますか?
塚越:大和ハウスは自社では職人を雇用していないのですが、下請け企業の人材確保を支援するために、独自の補助金制度を導入するとのことです。特定の技能者には1年間に渡って毎月7万5,000円を拠出するほか、オンラインの技能研修など、下請け企業の若手育成をおこないます。他にも現場の省エネ化も課題になっているのですが、大和ハウスのグループ企業である大和ハウス工業だと、建設現場で木くずやねじなどを自ら掃除する自走型のロボットを共同開発企業とともに開発し、今年度から30台を現場に順次導入していきます。
◆“一人勝ち”ではなく、業界全体で問題の共有と対策を
吉田:「建設業界の2024年問題」について、塚越さんはどのようにご覧になっていますか?
塚越:基本的には時代の流れということなので、さまざまなロボットを使ったり賃金を上げたりすることで、若手を増やしつつ省エネ化することが大事だと思います。
ただ、問題は、大企業以外の中小や零細企業です。中小企業だと賃金を上げるのも難しく、また親会社に単価の値上げを交渉するのも難しいです。業界全体で連携されないと、体力のない企業が倒産し、結局は業界全体が苦しむことになるのかな、と思います。
先ほどの大和ハウスのように、大手が下請けの企業を支援したり、業界全体で手を組んだりすることが重要なのかなと思います。“一人勝ち”や“一人負け”ということではなく、競争力を保ちつつWin-Winの関係を作っていけるような体制をつくれるかどうかにかかっています。
<今日のユジコメ>
僕も10代の頃に、さまざまな建設関係のお仕事をさせていただいて、土木、鳶(とび職人)、塗装、トラックの運転、大工見習いなど、建設業界に幅広く関わりました。
僕が働いていた頃との違いは、外国人の労働者が増えたこと。人手不足と言われている今、すごく良いことだと思いますが、お給料の面で、しっかりと労働者に適正な金額が支払われているのか気になります。
建設業は肉体労働のため、他のお仕事と比べると非常に過酷な労働環境です。暑い夏でもヘルメットを被り、ケガをしないために長袖長ズボンの着用はマスト。重たい荷物を運んだり、1日中外にいたりするのは過酷なため、職業として選ぶ方は、急激に増えることはないと思います。
建設業界にも物価高の影響があると聞いています。資材の高騰で大変なのは分かりますが、一緒に働いてくれる方が重要だと思っているので、会社側は十分なお給料を支払えるようになったら良いなというのが僕の願いです。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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7月26日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2023年8月3日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世