モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。7月24日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「参議院選挙でさらに進んだ多党制、政治はどうなる?」。情報社会学が専門の学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
◆自民・公明は参議院でも少数与党に
今回の参議院選挙で、自民・公明の連立与党は、非改選を含めた過半数を維持できず、参議院でも少数与党になりました。一方、国民民主と参政党が議席を大きく伸ばしています。多党制の加速は、私たちの生活や投票行動にどう影響するのか――
ユージ:今回の参議院選挙で、多党制が加速する流れになりそうですが、私たちの生活には、どんな影響がありそうですか?
塚越:多党制とは一般に、単独の政党では政権を担当できず、連立を組んだり、多数の政党が競い合ったりしている状態です。自民党と公明党は連立を組んでいるという話ですが、実質的には自民党が中核にいたので「一党優位体制」でした。ただ、今回の選挙で衆院も参院も少数与党の状態になったので、文字通り、多党が競争しながら、場合によって連立を組む可能性も出てきました。
その上で多党制の良いところは、複数の政党(連立政権)によって、国民のさまざまな意見や価値観が政策に反映されやすいところですね。今回の選挙前から、衆議院で少数与党になったことから、野党の主張を与党がある程度汲み取るようになったかなというところです。
一方で、多党制は政権としては不安定になるので、政策が安定しなかったり、外交では頻繁に窓口が変わったりします。トランプ大統領の対応などもそうですが、いろいろと変わっていくことで厳しくなると思います。
◆1993年との共通点・相違点は?
ユージ:そんな多党制、日本では、いつ頃から始まったのでしょうか?
塚越:戦後の政党の歴史はいろいろとありますが、ある程度単純にしてみるとまず、1955年に自民党が結成されて単独与党政権となり、野党は社会党が第一党となりました。これがいわゆる「55年体制」というものになります。そこから1993年に衆議院選挙で自民党がはじめて過半数割れとなり、自民党は野党になります。ここでは日本新党など、自民党以外の8党が連立を組んで細川内閣が発足し、多党制となります。わりと早めになくなったりして、その後は自民党と社会党、新党さきがけの連立政権(自社さ政権)である「村山内閣」が生まれて、自民党が与党に返り咲きます。
その後もいろいろとあるのですが、1999年に自民党と公明党が連立を組み、連立政権ではありますが、ある程度安定した政権運営がおこなわれます。もちろん、2009年には記憶に新しい民主党による政権交代がありますが、2012年に自公政権が返り咲き、基本的に今もその状態が続いています。自民党が強かったのは間違いないですが、今回は、本当の意味で少数与党となって、いろいろな政党の力を借りないと政権運営ができなくなったわけです。
吉田:今回の参議院選の状況、与野党が交代して多党制になった1993年と比べるとどうでしょうか?
塚越:1993年当時、自民党を離党した人たちが新しい政党をつくったことをきっかけに、「新党ブーム」というものが起きました。当時はバブル崩壊と経済の低迷が見え始めた時期であり、リクルート事件など、政治家の汚職への怒りもあって、今回の裏金問題同様、政治改革を求める声が大きくなった時期でもあります。
そう考えると、例えば参政党の神谷代表は、もともと2012年に自民党公認で選挙に出た経歴があり、その後は自民党を離れて参政党を立ち上げています。国民民主の玉木雄一郎代表も、2009年に当時の民主党から立候補して当選し、その後、紆余曲折あって今の国民民主党を立ち上げています。そういう共通点もあるかと思います。1993年のときも、無党派層というものが増えた時期もあって、この2020年代に同じく半分近く無党派といわれるところもあり似ている部分もあるかなと思います。
◆「一票の重み」を考えて投票に行こう
ユージ:多党制の加速で、投票行動は、どうなっていくでしょうか?
塚越:1993年は経済問題がやはり大きなテーマだったのですが、2025年はそれ以外にも、いろいろなテーマがあります。「保守と革新」、あるいは「若者と高齢者」といった(対立軸)以外にもSNSの影響もありますし、気候変動や海外の問題もたくさん出てきました。またお話してきたように、無党派層も増えてくるのかなと思います。そうした人に響くようなメッセージが、今回の参政党の躍進のような「風」を起こしやすいのかなと思います。
そう考えると、今回は投票率が上がりましたが、今後も上がっていく可能性があります。政策もコロコロ変わっていくので、有権者はますます「どこに投票するか」を深く考える状況に出てくるかなと思います。とにかく、多党制の状況になっていくので、不安定になってテーマごとに合意ができるかも問われます。
さまざまな政党がいろいろなことを言います。そうすると、いい意味に捉えてみれば私たちの一票の重みというのはこれまで以上に重くなるのかなと思います。そうすると、固定の支持政党がある人も、そうでない無党派の人も、その時々で考える人が増えていきます。私たちの一票は重みがあります。これからはますます「自分の一票が世の中を変える」という気持ちを持ち、その時々で、きちんと考えて投票していただきたいです。自然と政治のニュースに触れる機会も増えるだろうと思いますので、みなさんもこれからも注目してください。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ・吉田明世