笹川友里がパーソナリティを務めるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。6月20日(土)の放送は、大和ハウス工業株式会社 執行役員 デジタル戦略担当の川口正起(かわぐち・まさき)さんが登場。デジタルコンストラクションプロジェクトの概要、企業における生成AIの活用について話を伺いました。
(左から)川口正起さん、笹川友里
川口正起さんは1986年に大和ハウス工業へ入社。以来、一貫して情報システム部門に携わり、ユーザー企業の立場で約40年にわたりデジタル領域を歩み続けています。2006年からプライベートクラウドへの移行を主導し、2014年にはフルクラウド化を実現。2021年からは本社情報システム部長として、DX推進を支える基盤整備を牽引してきました。2025年には執行役員 デジタル戦略担当に就任。あわせて株式会社メディアテック代表取締役社長、公益社団法人企業情報化協会(IT協会)理事も務めています。
◆危機が変えたデジタルへの意識
大和ハウス工業は「人・街・暮らしの価値共創グループ」として、住まいづくりから街づくりまで幅広い領域で事業を展開しています。戸建住宅やマンション、賃貸住宅といった住まいに加え、商業施設や物流施設、医療・介護施設など社会インフラの整備や環境エネルギー事業にも取り組んでいます。さらに近年はデータセンター開発にも力を入れ、人が心豊かに生きる社会の実現を目指しています。
川口さんは、同社のビジネスモデルの特徴について、「建築物の設計・施工を担う『創る』、建物や施設の点検・修繕や運営管理を行う『育む』、リフォームや買い取り・再販を通じた『再生する』というバリューチェーンを、お客さまや建物、土地を軸に循環させている」と説明します。
ここで、笹川が「長年にわたって情報システム部門を率いてこられたということですが、これまでのなかで、特に印象に残っているプロジェクトはありますか?」と質問します。これに対して川口さんは、忘れられない経験として、新型コロナウイルス感染症の拡大時に推進したプロジェクトを挙げます。
当時、感染拡大により出社が難しくなるなか、業務を止めないための環境整備が急務となりました。そこで、短期間でテレワーク環境を立ち上げ、サービス提供までつなげました。川口さんによると、その取り組みには前提がありました。
元々2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に伴い、東京都心部を中心にスーパーテレワークの推進が呼びかけられており、同社でも準備を進めていました。しかし、コロナによって状況は一変し、「緊急事態宣言によってスケジュールが前倒しになり、当初は東京23区内中心の人員で対応する予定でしたが、全国で一斉に外出自粛という状況になりましたので、規模も大幅に拡大しました」と話します。それでも、導入初期に多少の混乱はあったものの、多くのパートナー企業と連携しながら、数週間で安定稼働を実現させました。
川口さんは、当時を振り返り、「『ピンチはチャンス』を実現できた意味でも好事例だったと思います。あと、我々は基本的に建設業界、不動産業界の人間なので、『デジタル技術が人の命に関わる』という意識が薄かったと思います。ただ、この取り組みを通じて、デジタル技術が命を守ることにつながることを気付かせてくれました。そういう意味でもすごく印象に残っています」と語ります。
◆人手不足時代を見据えた現場改革
大和ハウス工業では、デジタル技術を単なる効率化の手段ではなく、将来の事業継続や現場の働き方を支える基盤として捉えています。その代表的な取り組みの1つが、2019年に発足した「デジタルコンストラクションプロジェクト」です。
その背景にあるのは「労働人口減少」という大きな課題です。特に建設現場では、専門資格や経験を持つ技術人材の育成に時間がかかるため、短期間で人員を増やすことは容易ではありません。だからこそ、人を増やすだけでなく、現場で働く人の負担を減らし、生産性を高める仕組みづくりに力を入れています。その軸にあるのが「省人化」です。デジタル技術の活用によって、これまで複数人で担っていた業務を少ない人数でも運営できる体制へ転換する取り組みです。
例えば、現場で働く職人や協力会社の担当者と本社のスタッフをリアルタイムにつなぎ、遠隔からでも効率的な支援ができる環境づくりを整えています。経験豊富なベテランの知見を場所に縛られず活用できる仕組みは、人手不足を解消するだけではなく、働き方そのものを変革する取り組みでもあります。
◆生成AI活用を支える攻守の姿勢
さらに、同社が積極的に取り組んでいるのが「生成AIの活用」です。その基本方針について川口さんは、「攻めと守りをバランスよく進めないといけない」と考えを示します。生成AIの導入によって、業務の効率化など新たな働き方を生み出す可能性がある一方で、生成AIに社内の機密情報を読み込ませた結果、それが社外に漏れてしまうことは絶対に避けなければなりません。
そこで、川口さんは「単純にインターネット上で提供されているツールをそのまま使うのではなく、同レベルの機能を安全なクローズド環境で利用できる(社内専用の)生成AIを構築しました。いわゆる、(情報漏洩を防ぐ)『守り』を確保しながら同時に(技術を使いこなす)『攻め』も推し進めました」と解説します。国内で安全に活用できる環境が整ったタイミングを逃さず、導入に踏み切った同社のスピード感を象徴しています。
一方で、「『AIだったら何でもできる』という発想には注意が必要です」と慎重な姿勢も示します。AIの活用は意思決定の元となる「データ」があって初めて力を発揮します。しかし、「従来のデータは『これをしました』という結果の記録しかなく、『なぜそれをしたのか?』という理由データは多分ないと思います」と川口さん。だからこそ、これからは行動履歴だけではなく、判断の背景にある根拠や知見までを含めてデータとして残していくことが重要だと指摘します。システムを導入すること自体が目的ではなく、人の経験や判断をどう未来の価値につなげていくのか。その視点こそが、同社のデジタル活用を支える根底にある考え方なのかもしれません。
次回6月27日(土)の放送は、引き続き川口正起さんをゲストに迎えてお届けします。大和ハウス工業のサービス「AIプランコンシェルジュ」についてなど、貴重な話が聴けるかも!?
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/