大手総合商社・双日「デジタル人材の育成」に力を注ぐ理由とは？荒川朋美CDOが解説

笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」（毎週土曜 20:00～20:30）。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。10月28日（土）の放送は、双日（そうじつ）株式会社 常務執行役員CDO兼CIO兼デジタル推進担当本部長の荒川朋美（あらかわ・ともみ）さんをゲストに迎え、お届けしました。

（左から）笹川友里、荒川朋美さん

荒川さんは、日本アイ・ビー・エム株式会社に入社後、システムエンジニア、マーケティング、営業を担当。2014年に取締役に就任し、2015年には初代チーフ・デジタル・オフィサー（CDO）に就任。その後、2021年12月に双日株式会社に入社し、執行役員兼初代CDOに就任。2023年に、常務執行役員CDO兼CIO兼デジタル推進担当本部長となり、双日グループのDXを含むデジタル全般を牽引しています。

◆“デジタル・イン・オール”を合言葉に

学生時代は“パイロットになりたい”という夢を抱いていたという荒川さん。日本アイ・ビー・エム在籍時に自身のセカンドキャリアを考えた際、双日が航空事業を手がけていたことに縁を感じ、“ここでテクノロジーを使ってビジネスをやりたい”という思いが芽生え、2021年12月にジョインしました。

大手総合商社の双日にとって“DX（デジタル・トランスフォーメーション）化は必須”とあって、2021年4月に藤本昌義（ふじもと・まさよし）代表取締役社長 CEOを筆頭にDX推進委員会を立ち上げ、“デジタル・イン・オール”を合言葉に全社を挙げて進めているものの、「約400もの事業がありますと、それぞれの事業のなかで、デジタルやテクノロジー、データの活用をどのようにして進めていくか。その一つひとつが重要になっていきます」と荒川さん。

そのため、大きな戦略の1つとしてデジタル人材の育成もさることながら、「実装するテクノロジーは事業ごとに異なっているので、それらを社員主体でやれることを目指しています」と力を込めます。

また双日では、藤本社長が最高責任者としてDXを推進しているところですが、現行の体制については、「デジタルは特別なものではなく、経営戦略のなかに位置付けられる分野ですので、私の担当するデジタル推進本部がやるのではなく、全社の取り組みとしてデジタルを使っていく。よって、“（DX推進の）リーダーは、経営のリーダーである社長である”というのが私たちの考えです」と説明します。

◆“デジタル人材の育成”における2つの定義

荒川さんによると、DX推進委員会では、全役員が集まる機会を月に1回設けており、そこでデジタル人材育成の進捗状況の確認、各本部の成果報告などを共有しているといいます。

この話に、笹川が「（双日のように）母体が大きくなればなるほど、いち部署が頑張って推進するよりも（トップダウンで）社長から全社に向けて“GO”を出してくれたほうが、より浸透しそうですよね」と率直な感想を語ると、荒川さんも大きくうなずき、「（グループ）事業会社だけでも約400、事業数になるともっと多くなりますので、その一つひとつにデジタル推進部隊が携わっていくのでは、全然追いつかないので、（藤本社長からの）全社への号令のもと、それぞれの事業のなかで、テクノロジーやデータを使っていくことを会社全体でやっていくのが、総合商社のDXだと思っています」と話します。

さらには、デジタル人材の育成についても言及し、「当社が2030年に目指したい姿として“事業や人材を創造し続ける総合商社”というのがあります。“商社は人なり”“人がビジネスの原点”という伝統的な考え方がありまして、 つまり、デジタル人材を育てることが、事業のデジタル実装を進めるなかでの第一歩であり、一番重要なポイントだと思っています」と語ります。

最後に、双日が考える“デジタル人材の定義”について伺うと、荒川さんは、“データサイエンティスト（データを分析し、データから価値を創出する専門家）の育成”と“ビジネスデザイン”を挙げ、「テクノロジーを活用して、例えば、簡単なコーディングやAI（人工知能）、昨今ですと生成AIも入りますが、これらを活用した新しいビジネスを創造するスキル、そして、既存のビジネスに付加価値をつけ、向上するスキル。これをテクノロジーでおこなえる人材の育成を進めています」と語っていました。

次回11月4日（土）の放送も、荒川さんをゲストに迎えてお届けします。双日が目指している“企業の形”についてなど貴重な話が聴けるかも!?

＜番組概要＞
番組名：DIGITAL VORN Future Pix
放送日時：毎週土曜 20:00～20:30
パーソナリティ：笹川友里