杉浦太陽と松井玲奈がパーソナリティを務めるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・松井玲奈 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。
9月27日(日)の放送テーマは、「えっ、この建物も文化財!? 地域の遺産・登録有形文化財」。文化庁 建造物課の結城啓司(ゆうき・けいじ)さんから、登録有形文化財の特徴や地域に残る建造物を未来へつなぐ取り組みについて伺いました。
(左から)松井玲奈、結城さん、杉浦太陽
◆地域の歴史を守る登録有形文化財
「文化財」と聞くと、国宝や重要文化財のような歴史的価値の高い建物や美術品を思い浮かべるかもしれません。今回取り上げる「登録有形文化財」は、そうした文化財とは少し異なり、地域に残る身近な建物などを対象とした制度です。
まず、有形文化財とは建造物や絵画、彫刻、工芸品、古文書など、文字どおり「形のある文化財」を指します。歴史や芸術、学術の面で価値が高いものを総称し、文化財保護法によって定められています。そのうち、特に価値が高いものは国が国宝や重要文化財に指定します。これらは手厚く保護される代わりに厳しい規制があります。
一方、登録有形文化財は、より幅広く地域にたくさん残る大切なものを国が登録し、緩やかに守っていく制度です。そのなかでも、今回は“建造物”にスポットライトを当てて紹介していきます。
◆登録の基準と柔軟な保存・活用
1996年に創設された登録有形文化財制度は、主に近代以降の歴史的価値を持つ建造物を未来へ残していくことを目的としています。その創設の背景の1つとなったのは、1995年に発生した阪神・淡路大震災です。「歴史的な価値を認識されていても、当時の制度では保護の対象になっていなかったため、取り壊されてしまった建物がありました。そこで、これまでの制度を補う新たな仕組みとして、震災の翌年に登録有形文化財制度がつくられました」と結城さんは説明します。
登録有形文化財には、東京タワーや大阪城天守閣など、よく知られた建造物も含まれます。それだけでなく、橋やトンネル、ダムなどの土木構造物も登録の対象となります。また、2026年は制度創設から30周年にあたり、登録件数は1万5,000件を超える見込みです。
その登録対象となるのは、原則として建設から50年以上が経過した建造物です。そのうえで、次の3つの基準のうち、いずれか1つを満たす必要があります。
・国土の歴史的景観に寄与しているもの
・造形の規範となっているもの
・再現することが容易でないもの
さらに、結城さんは、この制度の大きな特徴として“所有者による自主的な保存と活用”を前提としていることを挙げ、「登録されると、固定資産税や相続税が一部減免されたり、修理の際も少し補助金が出たりと、比較的緩やかな保護措置の下で建物を使いながら保存していくことができます。例えば、建物内部をリノベーションして、使いやすい形で建物を活用することもできます」と紹介します。
実際に、かつて官舎だった洋館をカフェとして活用したり、古い和風住宅を飲食店として生まれ変わらせたりするなど、歴史的価値を残しながら新たな役割を担わせる事例もあります。規制が緩やかな登録有形文化財ならではの魅力といえます。
◆歴史と記憶を今に伝える建造物を紹介
ここからは、実際に登録有形文化財となっている建造物をピックアップします。
【その① JR肥薩線大隅横川駅駅舎】
鹿児島県霧島市にあるJR肥薩線の大隅横川駅は、1903年(明治36年)肥薩線の開通に合わせて建てられた木造駅舎で、同じ肥薩線沿いにある嘉例川駅と並び、鹿児島県内で最も古い駅舎です。120年以上が経った今も地域の玄関口として使われており、まちの景観を形づくる存在になっています。
また、結城さんは、「大隅横川駅と嘉例川駅はよく似た造りになっていて、一度に多くの駅を整備していた当時の鉄道建設の特徴がよく表れています。そのため、日本が近代化していった時代を伝える建物としても貴重です。さらに、この駅舎の柱には、第二次世界大戦中に戦闘機の攻撃でできた弾の跡が今も残っていて、建物そのものが歴史を物語っています」と解説します。
【その② 旧藤ノ森湯】
1930年(昭和5年)に京都府京都市に建てられた銭湯で、2003年に登録有形文化財となりました。結城さんは「銭湯の正面入り口には、独特の曲線が美しい唐破風(からはふ)の屋根があり、伝統的な趣を感じさせます」と語ります。
なお、この建物は2000年にリノベーションされ、現在はカフェとして活用されています。内部は銭湯時代の色鮮やかな装飾タイルを効果的に残しながら改装されており、伝統的な建物の魅力を活かして新しい用途につなげている事例として評価されています。
【その③ 凱旋紀念門】
静岡県浜松市にある凱旋紀念門は、1906年(明治39年)に神社の参道の途中に築かれた煉瓦造りの門です。日露戦争に勝利した記念として、当時はこのような建築的な門が全国に多数設置されていたそうですが、現存しているのは凱旋紀念門と鹿児島県姶良市にある「山田の凱旋門」の2棟のみです。
「先ほど紹介した大隅横川駅駅舎もそうなのですが、登録有形文化財には戦争に関連する遺構がいくつかあります。こうした戦争遺構を残すことは、戦争の悲惨さや平和の尊さを伝え、過去の出来事について考えるきっかけになります。建物単体だけでなく、こういった側面でも価値がある建造物だといえます」と、結城さんは強調します。
このほかにも、登録有形文化財には観覧車や木馬、アニメ映画の舞台のモデルになった住宅など、さまざまなジャンルの建造物があります。また、10月24日(土)には、国立京都国際会館で
「登録文化財制度30周年・建造物登録15,000件 記念シンポジウム ― 地域の宝を次世代へ 登録文化財のこれからを考える ―」
が開催されます。このイベントでは、彬子女王殿下と文化庁長官の対談なども予定されています。
最後に、結城さんは「皆さんの身近なところにも登録有形文化財があるかもしれません。地域の時代を伝えるシンボルに関心をもってもらえるとうれしいです」と話していました。
番組のエンディングでは、杉浦と松井が今回学んだ「登録有形文化財」について復習。2人が特に注目した点をピックアップして発表します。まず松井は“地域の時代を伝えるシンボル 登録有形文化財”とスケッチブックに書きました。続いて、杉浦は“意外と身近にあるんです 登録有形文化財”と注目ポイントを挙げ、「登録有形文化財についてもっと知りたい方は、
文化庁のWebサイト
をご覧ください。また、10月24日(土)のシンポジウムについては「登録文化財制度30周年・建造物登録15,000件 記念シンポジウムについて」のページに詳細が載っています」とコメントしました。
(左から)松井玲奈、杉浦太陽
----------------------------------------------------
この日の放送をradikoタイムフリーで聴く
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
----------------------------------------------------
<番組概要>
番組名:杉浦太陽・松井玲奈 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、松井玲奈
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/
番組公式X:@manabiyori_tfm