本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
6月12日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル 上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「上がり始めた”長期金利”と“2024年の株主総会の特徴”」というテーマでお話を伺いました。
(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆長期金利が1%超え 私たちの生活へどう影響する?
浜崎:今回、宗さまには「上がり始めた”長期金利”と“2024年の株主総会の特徴”」について、お話しいただきます。
やしろ:約11年振りに長期金利が1%を超えたというニュースも最近話題になっていますが、まずは長期金利とはどういったものか教えてください。
宗正:文字通り、期間が長めの金利が長期金利です。1年以上の金利を意味します。代表的な長期金利が10年もの国債の利回りです。そのため長期金利は10年以上の金利だと誤解している人もいますが、それは間違いです。
長期金利は国内景気や国内の物価、そして為替や海外金利などの影響を受けて、その水準が変動します。長期金利があるくらいですから、短期金利も当然あります。こちらは1年未満の金利です。代表的なのは、日銀が金融政策でコントロールする政策金利です。
やしろ:長期金利は1年以上、短期金利は1年未満なのですね。長期金利が上がり始めると、われわれの生活にどう影響してくるのでしょうか。
宗正:あらゆるもの全てに影響を与えますが、特に生活に身近なもので影響が大きいのは住宅ローンですね。借入額が大きいので、少しの金利上昇でもたちまち生活に影響が出てきます。
住宅ローンは大きく2つ、変動金利型と固定金利型があります。変動金利のほうは総額返済時までに借入金利が変わるローンですよね。そして固定金利は、借り入れ時から総額返済時まで金利は据え置きで変わらない。
この固定金利型のローンは、長期金利と連動するのが一般的です。そのためこれから金利が上がるという今の状況では当然、固定金利型が選ばれると思いきや……。
やしろ:そう思いましたが違うのでしょうか?
宗正:少々複雑な話になりますが、日本の短期金利は長い間マイナス金利政策で低く抑えられてきました。既にその政策は解除されましたが、短期金利に先行する形で長期金利が上昇しました。つまり変動金利型のローン金利と比較すると固定金利型のほうが先行して相対的に上がっているという状況です。
どちらを選ぶべきか、これは迷いますよね。最近は変動金利型と固定金利型を併せ持つ「ミックスプラン」というローンも出てきました。まさに今の金利の状態を象徴するものですね。
やしろ:ただでさえ住宅購入費も上がっている中、住宅ローンの総返済額もローン選び次第でかなり変わってきます。なるべくリスクを回避したいですよね。
◆実質賃金は25ヵ月連続マイナス…資産運用をしないのはリスク?
やしろ:円安傾向もまだまだ続く中、物価高もしばらく続きそうです。何か対策はありませんか?
宗正:今年のゴールデンウィークには、大規模な為替介入もありましたが、日本単独の介入はやはり時間稼ぎにしかすぎませんでした。一時は円高に振れた為替も、今は元の水準まで戻りました。
物価高も続きそうですよね。そして毎日の積み重ねでジワジワと効いてくるのが、食費のような生活費です。誤解してはいけないのは、金利が上がること自体は悪いことでも何でもないんですよ。
金利は経済の体温計なんて言い方もします。景気が良くなれば金利も上昇しますし、むしろ上がらなくてはいけない。必要なのは金利や物価の上昇に連れて、私たちの収入も上がること。そして手持ちの資産も同時に殖やすことなんです。
今年の4月の基本給などにあたる所定内給与は前年同月比で2.3%増加しました。この上昇率は、29年6ヵ月ぶりの伸び率でした。ただ物価上昇を加味した実質賃金は、25ヵ月連続のマイナスということで、過去最長なんですよ。
そのため手持ちの資産も運用しないままでいると、そのまま目減りするだけです。確かに投資に運用リスクはつきものですが、何もしないのは明らかに良くないですよね。
やしろ:何かしらの対策をしなければいけないというタイミングが、今なのかもしれないですね。
◆6月下旬に向けて株主総会ラッシュ
やしろ:6月下旬は、上場企業の株主総会が数多く開かれる時期だそうですが、この時期に集中している理由は何かあるのでしょうか。
宗正:日本の上場企業は、この国の会計年度と同じ3月末を決算期末としている企業が多い。会社法でも定時株主総会は決算から3ヵ月以内に開くよう定められています。そのため3月末から3ヵ月以内となると、自ずと6月下旬に株主総会も集まりやすいんです。
ただ、株主総会は株主が議決権を行使する場ですが、何も議決権行使の基準日を3月末の決算日と合わせなくてもいいんじゃないかという考え方もあります。
実際に欧米の上場企業はこの2つを敢えて合わせる慣行もありません。決算が終わって、4ヵ月から5ヵ月後に株主総会を開く企業も多いんです。日本でもできないことはないんですが、まだまだその動きは見えてきませんね。
やしろ:そして今年の株主総会の特徴ですけれども、注目すべき点は何かありますか?
宗正:「もの言う株主」(=アクティビスト)って、最近よく聞きますよね。その動きが年々活発になっています。株主総会シーズンに向けてアクティビストを含む株主提案を受けた企業の数は、現時点で少なくとも約90社と過去最高レベルなんです。主な提案内容は、経営陣の交代や、低収益の事業からの撤退などが多いですね。
一方で、そんなアクティビストの提案内容に強く反発する企業の動きも近年目立ちます。企業側も黙って聞いてばかりはいられないといった強い姿勢です。
また、東京証券取引所も上場企業に対して、資本効率や株価を意識した経営に取り組むよう求める動きが強まっています。こうした動きは海外投資家のウケも良く、こうした動きが近年、日本に投資資金が集まる要因の1つにもなっています。
◆「優待狙いの投資」でもOK ただし注意点は?
やしろ:そして最近の個人株主は、企業からの魅力的な優待券狙いの人も多いようですが、これについてはどのように感じていますか?
宗正:「優待狙いの投資は本末転倒だ」なんて言う人もいるのですが、私は非常に良いことだと思います。投資の世界はハードルが高く見えがちですが、入口は親しみやすいところからで良いと思うんです。
株の売買で得られるリターンをキャピタル・ゲインと言います。そして配当金はインカム・ゲイン。優待制度は株式が持つ第3の魅力と言ってもいいと私は思いますね。
ただ注意すべき点もいくつかあります。例えば株主優待の権利確定日直前は、当然みんな優待の権利を取りたいので、株価が高くなっていることが多いんですよ。そこを過ぎると、株価が急落するリスクもあります。
やしろ:そういうものなんですね。あまりにも優待をよくしすぎちゃうと、そういう波風を大きく作ってしまうような現象も起きると。
宗正:業績の悪化で、企業が優待制度の内容を変えたりすることもあります。時には取り止めることもあるくらいです。本来は配当金と同じように、株主優待も長期保有前提の方が良いことは確かです。
やしろ:話は少しずれてしまうかもしれませんが、自分が本当に好きで応援したい企業の株を買っておく。そこで優待券を毎年もらうというような、そういう動きでもいいのでしょうか?
宗正:それが本来あるべき株主像の一つですよね。
やしろ:「あの鉄道が好きだから」「あのテーマパークが好きだから」とか、そういうことでもいいんですよね。
宗正:いいですよ。株主総会と同じタイミングで株主限定のコンサートを開く企業もあります。テーマパークの運営企業の中には、テーマパーク内で株主総会を開く企業もありますからね。株主総会と株主優待を足し合わせたような企業の試みです。いずれにしても、ここから先、資産運用は大事です。
やしろ:投資の入口としては、そういうところから入ってきてもいいんですね。
宗正:全然いいと思います。先ずは一歩踏み出すことが重要です。
やしろ:ありがとうございます。「宗正彰の愛と経済と宗さまと」はAuDeeにて毎月10日20日30日に配信中です。ということで、宗さま、今月もありがとうございました。
宗正:ありがとうございました。
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保