モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。3月2日(木)の放送コーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「少子化、予想以上のペース 出生数80万人を下回る」。情報社会学が専門の学習院大学 非常勤講師・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
厚生労働省が2月28日(火)に公表した、2022年の「人口動態統計」の速報値によると、去年1年間に国内で生まれた子どもの数は、統計開始以来、初めて80万人を下回りました。国が2017年に公表した予測では、出生数が80万人を下回るのは2033年となっており、想定を上回るペースで少子化が進んでいます。
◆「異次元の少子化対策」 具体的には?
ユージ:少子化問題がますます深刻になっていますね。
塚越:少子化は将来の働き手の減少を意味しますので、経済成長の低下をもたらします。そして、年金や医療といった社会保障制度の安定を揺るがすので、高齢層の方々にとっても他人事ではありません。
日本の平均寿命は、2021年のデータで男性は81歳、女性は87歳で、今後も伸びると予想されています。子どもたちは将来、税金を納めてくれますので、年金を支える働き手という意味でも社会全体の問題ですよね。
ユージ:岸田文雄首相は「『異次元の少子化対策』に取り組む」と発言しましたが、現在、どのような対策が話し合われているのでしょうか?
塚越:政府は、3月末までに少子化対策のたたき台をまとめる方針です。いろいろな柱があるのですが、やはり注目されているのは、児童手当などの「経済支援の強化」ですね。これまでも中学生までの子どもに月額5,000円~最大15,000円の支給といった支援はあったのですが、これをさらに強化しようというものです。自民党では所得に応じて第2子には月額最大3万円、第3子には月額最大6万円の支援を検討しており、公明党ですと、支給対象を高校生にまで拡大する案もあります。
特に大きな話題になったのが、所得の高い世帯には児童手当を制限する「所得制限」を撤廃するという案です。1月下旬の国会で、これまで所得制限を支持していた自民党の茂木敏充幹事長が、従来の主張を翻して“児童手当の所得制限の撤廃”を主張しました。
この発言は自民党内での調整前の発言だったこともあって、非常に驚かされました。茂木さんの政治的なアピールの側面もあるかと思いますが、現在も非常に関心を集めておりまして、若い世代では「所得制限の撤廃」を支持する人が多いんですね。
ユージ:どのあたりが「異次元」の対策と言えるのでしょうか?
塚越:「異次元、異次元……」とは言っているのですが、基本的にはこれまでの支援策の額を増やす延長線上で、あまり目新しいものはなく、“どこまで本気なのか?”と少し疑問に思うところがあります。
例えば、2月15日(水)の衆院予算委員会で岸田首相は「家族関係社会支出は、令和2年度でGDP比2%を実現。それを倍増しよう」と発言しました。普通に考えると2%から4%への倍増というのは、約11兆円の財源が必要になるのですが、その後、野党から国会で追求されると「何をベースに倍増とするかは検討中」と述べました。
何をおっしゃっているのかわからなかったのですが、要するに“数字ありきではない”と言ったわけです。しかし、防衛費に関しては、わりと“数字ありき”で「増額する」と言っていたんですよね。こういうところを比較してみると、どこまで政府が少子化対策に本腰を入れているのかは不透明だと現段階では言えますし、当然、財源問題も大きな課題ですよね。
◆「簡単な支援」だけでなく、労働環境改善に踏み込んだ対策を
ユージ:現状の案でどこまで効果があるのか、塚越さんはどうお考えですか?
塚越:国会の議論は子どもを産んだ後の支援の話が多いのですが、子どもを産む前、例えば、結婚することも難しくなっていますよね。昨年末に「三菱総合研究所」がまとめた資料によると、雇用形態が「正規」なのか「非正規」なのかで婚姻数に大きな差があり、特に30代の男性では、雇用形態が正規・非正規で未婚率におよそ2倍の開きがあります。つまり、非正規雇用だと婚姻数が低くなるというデータがあって、そこには経済的な要因があるのかなと思います。
また「国立社会保障・人口問題研究所」の統計データや、さまざまなデータを見てみると、20代~30代の人では「いずれは結婚しよう」という意思がある人は減ってきているものの、(調査に回答した未婚者の)7割~8割の人は「いずれ結婚したい」と考えているんです。「結婚=子どもを産む」というわけではないので、その点には注意が必要ですが、やはり「結婚することによって子どもを産もう」という選択肢を考える人は増えると考えられます。
そうしてみると経済の問題が非常に大きく、例えば「育児休業」などを非正規の方や自営業の方がもっと簡単に取れるようにしたり、正規と非正規の労働の格差を是正したりするなど、労働環境全体を変えていく必要があると思います。つまり(児童手当のような)簡単な支援、わかりやすい支援だけではなく、社会全体の労働環境改善にまで踏み込まない限り、多少の支援額を増やすだけでは大きな変化はありません。
意味がないとまでは申し上げませんが、「本当にヤバいんでしょ!」と、少子化対策に本気になっている感じがあまりしないんですよね。少子化はこれまでずっと課題でしたし、日本経済もバブル後からずっと課題でしたので、我々も抜本的な改革を望んでいますし、政府もそれに本気で考えて応えないといけないのではないかなと思います。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/one/