笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。10月4日(土)の放送は、コスモエネルギーホールディングス株式会社 常務執行役員 CDO のルゾンカ典子さんがゲストに登場。コスモエネルギーグループのDX戦略、DX推進において重要なポイントについて語ってくれました。
(左から)ルゾンカ典子さん、笹川友里
ルゾンカ典子さんは、アメリカの大手自動車保険会社で顧客や商品分析の開発・研究に携わり、帰国後は外資系の大手銀行や生命保険会社で、ビジネスアナリティクス部門の立ち上げや運営をリード。2021年11月からは、コスモエネルギーホールディングス株式会社のCDOとして活躍し、ブランド価値や顧客体験(CX)の向上、DX人材の育成、データを活用した経営基盤の構築に取り組んでいます。また、スピード感のあるイノベーションを推進するチェンジマネジメントを通じて、持続可能な組織づくりを目指しています。
◆次世代航空燃料の開発にも注力
コスモエネルギーホールディングス(以下:コスモ)は、2026年に創立40周年を迎える長い歴史を持つ企業です。連結従業員数は約6,500人で「安全かつ安定的なエネルギー供給の実現」を目指し、石油開発から精製、販売までを手掛けています。さらに、オイル事業に加えて、風力発電をはじめとする再生可能エネルギーや次世代航空燃料であるSAF(Sustainable Aviation Fuel)の量産にも力を入れています。そして、売上高は2024年度に約2兆7,999億円に到達し、エネルギー事業ならではの規模感を示しています。
ルゾンカさんは、「日本の社会インフラで本当に必要なエネルギーを、どこから着手すべきかということを一生懸命に見定めながら、皆さんの生活のためにエネルギーを供給できるように頑張っています」と力を込めます。
◆「Cosmo's Vision House」「Vision 2030」とは?
続いて、「コスモのDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略の礎」となる2022年に公開した「Cosmo’s Vision House」について伺います。ルゾンカさんによると、ここには「社員一人ひとりが取り組むこと」「会社全体として取り組むこと」「将来に向かって進むこと」の3つのレイヤーで構成されており、DXの方向性を全社で統一する重要な役割を果たしています。「AIやデータなどが大変なスピードで変わっていくなかで、3年以上が経ったいま見返しても『このまま今でも使える』と感じるぐらい網羅性があると思っています」と語ります。
さらには、DXを単なるプロジェクト単位で考えるのではなく、「会社全体としてどこに向かって何をするのか」という基盤を作ることが重要だと強調し、「デジタルツールの新しい試みで一番重要なのは『とにかく使い倒すこと』。楽しみながら分からないことは調べる、そのままにしない姿勢がDX成功の秘訣だと思っています」と話します。
また、コスモは2023年に中長期ビジョン「Vision 2030」を策定し、実現に向けて取り組みを進めています。こちらはDX、HRX(ヒューマン・リソース・トランスフォーメーション)、GX(グリーン・トランスフォーメーション)の3つのトランスフォーメーションを通して経営基盤の変革を図っていくものです。
DXにおいて、最初に力を入れたのは“データ活用コア人材”の育成です。「AIを使うにもデジタルのスキルを使うにも、データを使いこなすことができなければ意味がありません。まずはデータ基盤を整備すると同時に、社員の皆さんが今までExcelでやっていたことを使いやすい形にするなど、『データを使いこなす力』を身に付けていただきたいと思いました」とルゾンカさん。
当初は3年間で900人のデータ活用コア人材を育成することを目標にしていましたが、2年で1,000人を超える人材の育成に成功したとのことです。その背景には、草の根の取り組みがあります。本社に届かない現場の声をアンケートで分析し、チームメンバーが全国を飛び回ってトレーニングや相談を実施。「やりたいことを回していく力」が現場に根付いた結果、社員自身が積極的に学び、提案する文化が生まれていったといいます。
◆デジタルは“使い倒してなんぼ”
DXの取り組みの一環として、サービスステーションや製油所のデジタル化が進んでいます。「サービスステーション給油をするときに、車の外に出て作業する時間をなるべく短縮できる工夫をしています。例えば、以前は『支払いは何ですか?』『(コスモの)カードはありますか?』と質問がいっぱいあったと思いますが、今はコスモのアプリにクレジットカードを読み込ませておけば、QRコードを(端末に)かざすだけでスムーズに支払いができます。このように、皆さんが苦労しているプロセスをできる限り削って、私たちが半歩先に行って、お客さんの困っていることを解決することが重要だと考えています」と力強く語っています。
また、整油所では現場の安全確認や装置の稼働状況をデータで一括管理し、異常を遠隔監視してトラブルの未然防止にもつなげています。図面の閲覧もデジタル化され、「現場の方たちが仕事しやすく、未然に事故を防げるという面では、かなり時間も工数も削減できています」と説明します。
今回の話に、笹川が「デジタル技術をいきなりドカンと取り入れるのって難しいことかもしれないですけど、取り入れたときは(トラブルを)未然に防げたり、仕事量が全体的に減ったり、恩恵がすごいですよね!」とデジタル技術の大切さを実感。このコメントに、ルゾンカさんは「解決策が見えると、『じゃあ次はこうしよう』とか『そんなやり方もあるのか』という新しい発見があるので、規模は大きいですけれども(デジタルは)ガンガン使い倒してなんぼだと思います」と話していました。
<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/