脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。
TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
3月30日(土)の配信では「第一印象」に関する質問に答えました。
パーソナリティの茂木健一郎
<リスナーからの相談>
茂木さんは初めて会う人と会話するとき、どんなところを見ていますか? 私は、その人の服装や髪型、手振り、しゃべり方など、いろいろなところを見て「きっとこういう人なんだろうな」と、勝手に印象を決めてしまいます。これって 脳科学的には普通なのでしょうか?
<茂木の回答>
(脳の)情報処理の“回路”は2つあります。まず1つが速い回路。これは脳の扁桃体という感情の中枢などを経過する回路です。ここが第一印象を2~5秒ぐらいで決めてしまいます。
それから、大脳新皮質。これは我々の言葉や記憶を司っているところです。この回路は、ゆっくりとその人の第一印象を分析していきます。
わかりやすく言うと、脳はまずパッと見た印象で「この人はこういう人だ」と、その人のことをつかみます。そのあとで、具体的にこの人はどういう人なのか、どういう特徴があるのかということを、大脳新皮質が分析していきます。
なぜ、第一印象でまず相手の印象をつかむようになっているのかというと、相手が「ちょっと危ない人」の場合は警戒しなくてはいけないからです。
そして、相手に「ちょっと素敵だな」とか「興味があるな」と思うには、よく観察する必要がありますよね。第一印象で、そういったことを仕分けしています。
もちろん、第一印象のあとに、お話しをしたりするなかで、大脳新皮質の言葉や記憶の回路が、より詳細な分析をして、第一印象を覆す場合もあります。いずれにせよ、この速い回路と遅い回路、この2つの回路の働きで脳はできています。
第一印象に関しては(初対面で最初に抱く印象なので)仕方がないのですが、第二の印象も重要です。たとえ第一印象が悪くても、実際に話すことで第二の印象が決まってくることもあります。
ですから、ポジティブな第二印象を生み出すことができれば、良い人間関係を築くことができます。大事なのは、第一印象のイメージだけで人を判断しないで、第二の印象も大切にしながら人間関係を築いていくことだと思います。
また、メディアや評判など、人から伝えられているもので、あらかじめ印象ができている場合もあります。そういう印象と、実際に会ったときのその方のさまざまな情報を判断して、常に第一印象や事前の思い込みを覆す。これが人間関係の醍醐味だと思います。
相談者さんも、第一印象でいろいろ考えられる、その能力を持っているのはすばらしいことだと思うのですが、それだけに頼らないで、その方をさらに深掘りするということも心がけていただけたらと思います。
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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎