本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
11月12日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「史上初の5万円台“日経平均株価”と株価上昇の“メリット・デメリット”」というテーマでお話を伺いました。

(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆史上初! 5万円台の日経平均株価
浜崎:今回、宗さまには「史上初の5万円台“日経平均株価”と株価上昇の“メリット・デメリット”」ついてお話しいただきます。
やしろ:先月「スカロケ資産運用部」をお届けしたのが10月8日、日経平均株価は47,000円台でした。そこからなんと恐ろしいことに52,000円台まで上昇しました。急激に上がりましたが、これはどうしてでしょうか?
宗正:10月の日経平均株価は、ひと月で8,000円弱の上昇でした。今日(11月12日)の終値が51,000円台ですから、高値圏でずっと推移していると言ってもいいでしょうね。
主な要因は、やはり高市新内閣の発足です。高市総理が就任前から掲げてきた積極財政と円安を容認するといった財政政策と金融政策の2つが、ここひと月の株価上昇のベースになりました。いわゆる「高市トレード」ですよね。一方で、アメリカの株式市場もその間は右肩上がりでしたから、これも追い風になりました。
やしろ:日経平均株価が史上初の5万円を突破したのが10月の最終週で、タイミング的にトランプ大統領来日の歓迎ムードもありました。こちらも影響したのでしょうか?
宗正:少なからず影響したと思います。日米首脳会談での高市総理とトランプ大統領の仲睦まじい二人の関係性は、明らかに株式市場にとってプラスでした。日米同盟の今後やトランプ関税の先行きに対する不安感もまだ残っていましたからね、あの二人の様子を見て先ずそこが解消されたというのはあったでしょうね。
それからレアアースの供給確保やAIのような先端科学技術分野、他には造船産業での協力の覚書も交わしましたからね。その流れを受けて17の戦略分野に重点投資することも政府が決めましたから、株式市場にとってプラスの材料が盛りだくさんの日米首脳会談でした。
ただ、10月の最終週には52,000円台まで上昇した日経平均株価の動き、特に最終週の1週間で約3,000円も上昇しましたが、これは日米首脳会談の流れを受けてというよりも、アメリカの株式市場の影響でした。アメリカのAIや半導体関連銘柄の株価が上昇した結果、日本の関連する特定の個別銘柄が上昇して、連れて日経平均株価全体が引っ張られたという形でした。
やしろ:今のお話からすれば、日経平均株価という株価指数は、特定の個別銘柄の影響を受けやすいものなのでしょうか?
宗正:実はものすごく影響を受けやすいんです。10月29日(水)は、トランプ大統領が来日して日本を離れる最終日でした。この日の日経平均株価は約1,000円の上昇でしたが、実は半導体関連の1つの銘柄の株価上昇だけで、日経平均株価全体を約1,000円も押し上げているんです。
日経平均株価のことを日経225という呼び方もしますよね。要は日本の主な上場企業225銘柄に絞った指数が日経平均株価なんですが、算出方法は株価の単純平均なんです。単純平均なので、株価が高い企業、これを値がさ株って言うんですけど、値がさ株であればあるほど日経平均株価全体の動きに影響を与えやすいということです。
やしろ:株価の高い銘柄がグンと上がれば、日経平均株価全体が上がるということでしょうか?
宗正:はい、その傾向があります。ちなみに、日経平均株価が4万円から5万円に上昇する段階、あのときもAI関連と半導体関連のわずか3銘柄だけで55%も日経平均株価を引き上げていました。
株価の高い値がさ株の動きが、日経平均株価の水準を決めると言っても過言ではありません。逆に今お話した3銘柄の株価が下がっていたら、実は日経平均株価は下がっていたということです。
やしろ:なるほど、大事なポイントですね。
宗正:日経平均株価が上昇すると、日本の株式市場全体が上がっているようなイメージがありますが、実はそうではないんです。
やしろ:225銘柄全体では、株価が下がっている銘柄のほうが多いかもしれないけれども、日経平均株価全体は上がることも実際にあるということですね?
宗正:やしろ本部長、TOPIX(東証株価指数)って聞かれたことありますか?
やしろ:あまり分かっていないです。
宗正:日本の株式市場の動きを見るときには、日経平均株価かTOPIX(東証株価指数)のどちらかを見るのが普通なんですが、TOPIXの方は時価総額加重平均という算出方法なんです。
TOPIXは幅広く企業の規模も考慮した算出方法なので、日本の株式市場全体の動きを反映しやすいといった特徴があります。日経平均株価は上がっているのにTOPIXは下がっているっていうケースも最近では珍しくありません。主要銘柄の動きを見るときは日経平均株価、市場全体の動きを見るときはTOPIX、この2つの使い分けが大事ですね。
◆株式市場の上昇は生活上のメリットに繋がっている?
やしろ:日本の株式市場は上がりましたが、我々の生活に実際に反映されているのか、乖離があるんじゃないかと思ってしまうときがあります。株式市場の上昇って、我々の生活にどのようなメリットがあるのでしょうか?
宗正:株を保有していない人にはメリットが無いのではと思われがちですが、日本の年金制度、その投資対象に日本の株式って結構な割合が含まれているんですね。日本は国民皆年金が原則ですから、株価が上がれば将来受け取る年金の手取り額も増える可能性があります。
それから、企業は株式を保有しているケースが多くて、株価が上がれば含み益も増えて財務の健全性が高まるので、その企業は新規の設備投資もできるようになります。ひいては従業員の給与も増えるかもしれない。
やしろ:はい、なるほど。
宗正:現在、「貯蓄から投資へ」といった形で、資産運用立国日本を目指した各種施策が国内では進められています。NISAの普及を背景に個人投資家も急増していますが、株価が上がれば上がるほど個人の資産も増えて、個人消費も活性化します。
これを「資産効果」と言います。アメリカのような投資大国ではこの効果が顕著で、株価が上がれば、個人消費も活性化して景気も良くなる。日本もアメリカも景気の半分以上を占めるのが個人消費ですからね。ここが活性化すれば、景気が上向いて豊かになります。
やしろ:逆に、株式市場が上昇した場合のデメリットはあるのでしょうか?
宗正:日本株がこれだけ上がってもまだ買っていない人って結構多いじゃないですか。すでに買いどきを逃していることで「あ、すぐ買わなきゃ」と高値づかみをしてしまうこともデメリットの1つですし……、いやいや、これはやしろ本部長に言っている訳じゃないですよ。確かに、2019年10月に「スカロケ資産運用部」が始まったときの日経平均株価は22,000円台で、もう6年以上もずっと言い続けているのに(笑)。
デメリットの話に戻しますね。実体経済や本来の企業価値とかけ離れた株価水準は、バブルを引き起こす可能性があります。その後のバブルの崩壊は、経済活動に大きなダメージを与えますし、景気の過熱感を抑えるために金利が引き上げられた場合には、住宅ローン金利など生活コストの増加にもつながります。
株価水準に直接関係する話としては、本来の株式投資は、応援したい企業の株を買って配当金を受け取るっていうのが大原則なんですよ。ところが、株価だけが先行して上昇してしまうと、配当利回りの低下という形でのデメリットがありますね。
◆年末に向けて日本の株式市場は上がる?下がる?
やしろ:そして、今年も残すところひと月半となりました。年末に向けて日本の株式市場、上がる? 下がる? 宗さま、ずばりどちらでしょうか?
宗正:実は今、答えるのに一番難しいタイミングなんですよ。ちょうど先週あたりから今年度3月期決算企業の中間決算の発表が本格化していますが、中間決算の発表と同時に会社計画の上方修正があるかどうか、先ずはここがポイントになります。
特に輸出関連企業の会社計画の想定為替レートですね、注目点は。会社計画の前提となる想定為替レートよりも、実際の為替市場が円安になるか円高になるか、計画よりも円安に振れれば、輸出関連企業は業績上振れで株価は上昇します。
年末までにもう一つ注目してほしいのが日銀の金融政策です。日銀の本音としては、物価高がこれだけ進めば利上げをしたい訳なんですが、トランプ関税の影響を見たり、新内閣が発足したりということで、様子見の姿勢が続いています。今の政策金利0.5%を利上げするとしても、早くて年末か年明けになるのかなと思います。
利上げは株式市場の下落要因です。水は高いところから低いところに流れますが、資金の動きはその逆で、金利の高いほうに流れます。利上げがあれば株式市場から資金が抜けてしまう訳です。いずれにしても、日経平均株価はここ最近で急上昇しましたから、揺り戻し的な値動きの荒い展開が年末にかけて続くと思います。当然、日経平均株価が5万円台を割ってしまう局面も可能性としては充分にあると思いますよ。
<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組公式X:
@Skyrocket_Co