作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。
6月28日(日)の放送は「村上RADIO~アナログ・レコードで、ジャズのちょっとこのあたりを… vol.2~」をオンエア。今回の放送は「ジャズのちょっとこのあたりを…」の第2弾です。村上さんが長年愛好してきた知られざる実力派のジャズ・ピアニストの演奏をオリジナルの原盤でお届けしました。
その独特の演奏スタイルでハービー・ハンコックに多大なる影響を与えた全盲のピアニスト、クリス・アンダーソン。また、本職が精神科医という異色の経歴を持つデニー・ザイトリンなど、個性的な実力派ピアニストたちを紹介しました。
この記事では、中盤2曲について語ったパートを紹介します。
「村上RADIO」
◆Jack Wilson「Serenata」
ジャック・ウィルソンは昔から僕が贔屓にしてきた人です。黒人なんだけど、ヘヴィーなタイプのジャズ・ピアニストじゃなく、軽快にスイングするのが特徴です。しかし趣味がいいんですよね。しつこくもなく、おもねりもしない。ジャック・ウィルソン・カルテットの演奏する「セレナータ」、ヴァイブラフォンはロイ・エアーズです。
これは以前「ジャズ・ヴォーカル特集」で、ロレツ・アレクサンドリアのレコードをかけたときにも紹介したエピソードなんですが、かなり以前のことなんで、もう1回話しますね。40年以上前のことですが、ウィルソンは歌手ロレツ・アレクサンドリアの伴奏ピアニストとして来日したことがあります。銀座のジャズ・クラブに出演していまして、僕は聴きにいきました。そして休憩時間にウィルソンさんに、持参した5枚くらいのレコードにサインしてもらったんですが、それを横で見ていたロレツが見る見る不機嫌になりまして、「なんで伴奏ピアニストがあんなにサインを求められて、あたしが求められないのよ」みたいなことを言い出したものですから、「これはまずい」と僕も思い、すぐうちに電話をして、ロレツのレコードを何枚か銀座まで持ってきてもらいました。そしてサインしてもらいました。そうしたらロレツさんもにこにこと機嫌を直して、事なきを得ました。というわけで、うちにはロレツ・アレクサンドリアとジャック・ウィルソンのサイン入りレコードが結構たくさん揃っています。もうどちらも亡くなってしまいましたけどね。
◆Richard Twardzik「Round Midnight」
リチャード・ツワージクもあまり、というかほとんど名前を知られていない白人ジャズ・ピアニストです。チャーリー・パーカーやチェト・ベイカーとも共演したことのある才能溢れる有望新人だったんですが、惜しいことに、ヘロインの過剰摂取でまだ24歳の若さで世を去ってしまいました。だからレコードを吹き込むような時間の余裕もほとんどなかったんです。レニー・トリスターノやセロニアス・モンクから影響を受けたと思われる大胆な、ちょっと尖った演奏スタイルが、不思議な独特の説得力を持っていました。しかしヘロイン、怖いですね。この時代のジャズ・ミュージシャンには、ヘロインで若死にした人がほんとに多いんです。みなさんもどうかハードドラッグには手を出さないようにしてくださいね。
リチャード・ツワージクの演奏するセロニアス・モンクの名曲「ラウンド・ミッドナイト」を聴いてください。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~アナログ・レコードで、ジャズのちょっとこのあたりを… vol.2~
放送日時:6月28日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/