モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。今回の放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「長嶋茂雄さんが歩んだ栄光の歴史にフォーカス」。スポーツライターの小林信也さんに解説していただきました。
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◆“ミスタープロ野球”長嶋茂雄さんの功績
“ミスタープロ野球”の愛称で親しまれ、6月3日に亡くなった野球界のスーパースター、長嶋茂雄さん。あらためて、選手、監督、そして晩年にいたるまで、人生をすべて野球に捧げてきた長嶋さんの功績を振り返ります。今回のテーマは、「国民的ヒーローとして、人々に愛された理由」。
ユージ:スポーツライターの小林信也さんにお話を伺います。
小林:長嶋さんが、なぜこんなにもみんなから愛されているかというと、やっぱり1つは、昭和34年(1959年)の「天覧試合(てんらんじあい)」です。
天覧試合というのは、天皇陛下が初めてプロ野球を観戦することです。プロ野球というのは、今のように社会的認知がなくて「職業野球」と言って、少し蔑まれていた時代でした。そこに6大学野球から長嶋茂雄というヒーローが入ってきて活躍をし始めました。
そこに天覧試合があったのですが、もう1つは戦争が終わって10年ちょっとで、まだまだ日本がどこかこう、ぽっかり穴が空いたようなところがあった時代に起こった天覧試合で、最後に長嶋さんがサヨナラホームランを打ちました。そして、天皇陛下がこの野球を観てすごく興奮して喜ぶ姿をみんなが見て、「長嶋よくやってくれた」「長嶋ありがとう」というこの気持ちが、長嶋さんに対する多くの人の気持ち全てなんじゃないかなと思います。
それをきっかけに野球が日本人の行楽になりましたし、長嶋茂雄さんは“みんなの長嶋”になりました。巨人や野球という枠すら超えて、本当にみんなの長嶋になりました。「日本人がみんなで心を1つにできる象徴って何なんだろう」と、ぽっかり穴が空いたような、そこに登場したのが長嶋茂雄さんでした。
いくら長嶋さんが明るくて素晴らしい選手でも、あの天覧試合がなければ、この国民的な気持ちというのは恐らくありませんでした。このことはいくら言ってもピンとこないと思いますが、それを抜きに長嶋を語っても、やっぱり長嶋さんのことは分からないかなと、そんな気がします。
ユージ:戦後から高度経済成長期へと向かう国民の心の拠り所として、重要な存在となっていた長嶋さん。巨人の選手としては、王貞治さんとの「ON時代」に9年連続日本一に輝いたり、監督としても5回のリーグ優勝、日本一を2回と、常にヒーローであり続けました。「でもそれは、普通に語られるような天才とは違う」と小林さんは思っているそうですね。
小林:長嶋さんというのは、“ガッカリさせる天才”でもあります。プロ野球に入ったときもすごく期待されていたのに、最初、金田正一さんという国鉄スワローズのエースに4打席4三振。こんな最悪な結果はないですよね。
そして、監督になって1年目に最下位というとんでもない成績になります。いろいろな場面で、実は長嶋さんは、最初に最悪な結果を残しているんです。みんなをがっかりさせる。それなのに、そこからものすごい活躍をして今度は2倍、3倍も喜ばせてくれる。これは長嶋さんの持って生まれた天性と言うんですかね。
例えば、オリンピックでいきなり登場して、金メダルを取るところから始まるみたいな、そういうヒーローが割と多いと思います。長嶋さんは常に、戦争に負けたというがっかりも含めて、登場するときには最初にみんなの挫折感があって、そのうえでものすごく明るい表情でみんなを笑顔にするという、それが長嶋という人だと思います。
◆令和のスター・大谷翔平との違いは?
ユージ:戦後を生きる国民に愛され、プロ野球の黎明期を支えたヒーローが長嶋さん。現在、日本の国民のみならず世界中から愛される野球界のヒーローといえば、大谷翔平選手です。時代を超えた2人の野球ヒーロー。その違いは?
小林:大谷翔平選手は、二刀流も含めて非の打ちどころがないプロ野球選手ですよね。そのパフォーマンス・活躍でみんなを驚かせ、尊敬のまなざしで見られる、そういう存在だと思います。長嶋さんとちょっと違っているのは、(長嶋さんは)もっと規格外。新人のときも実はトリプルスリーを達成していたはずなのに、ホームラン1本損しちゃって29本で終わったために記録になりませんでした。それは、途中でランナーを追い越しちゃったんですね。そういうことを平気でおこなう。
例えば、(長嶋さんが)打ちすぎるから相手が敬遠策を取った際、それに抗議するために、バットを捨ててバットを持たずに打席に立っちゃうとか、あれもウケを狙ってじゃなく感情のままに気持ちのほとばしるままに、みんなが考えないことをやってしまう。そういう存在だったんじゃないかなと思いますね。
<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ・吉田明世